秋晴れのウォーキング大会 2018.11

 晩秋の時期に地元のウォーキング大会に参加した。風はなく、くもり空に時折晴れ間がのぞく絶好のコンディションだった。8年続けての出場になるが、天気には毎回恵まれている。晴れ男なのだ。
 去年までは40キロコースを歩いていたが、今年は体調が思わしくなく30キロコースを選んだ。歩き始めると足取りは軽快だった。

 40キロ以上のコースは参加者が少なく、コースの途中で前にも後ろにも人影がなくなり一人きりになることがある。「コースを外れてしまったのでは」と不安になるが、30キロコースになると参加者が多くいて賑やかだ。
 コースの各所には休憩所が設けてあり、場所によっては豚汁や特産の梨が用意されている。また個人の有志で自家製のコーヒーや梅干しが庭先で振舞われることもある。これはとてもありがたい。


 5キロを過ぎる頃におにぎりを頰張る。早起きしておにぎりやおかずを用意した。全行程は6、7時間ほど掛かり、消費カロリーも二千キロカロリー以上になる。栄養を補給しながらでなければ最後まで持たない。マラソンランナーがスペシャルドリンクを手に取るようなものだ。
 刈り取りの終わった田んぼ、色づく山肌の木々、農家の縁側の前には柿の木に実がなっている。いつまでも残したい日本の原風景である。


 20キロを過ぎると疲労がたまり、腰の痛みがひどくなる。小休止してストレッチをし、腹ごしらえをする。
 5分ほどでコースに戻る。疲れてはいても長居は無用である。長く休めば腰が上がらなくなり、下半身は鉛を付けたようにずしりと重くなる。体が辛くなるほど、休みたい気持ちで意識がいっぱいになる。その意識をなんとか追い出して境地を無にする。無心で前を見つめ、ひたすら足を動かす。ゴールしたあとは疲れ果てて座り込んだ。
 ウォーキング大会には表彰も順位もない。あるのはゴールした者だけが手にできる達成感や満足感だけだ。人に聞かれたときにそう答えると、感心する人もいるが、呆れている人もいる。たぶん呆れている人の方が多い。


 ゴールのあと、花壇を囲うレンガに腰かけて動けずにいると、ボランティアの女性が温かいお茶を運んできてくれた。「ああ、おいしい」。それで十分だった。


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