名古屋城本丸御殿 2020.11

 すっかり悪者になったGo To トラベル。第3波の始まる前の10月末に利用した。今年はコロナ禍によりGWも夏休みも城巡りを自粛したので久しぶりの外出だった。
 目的地は名古屋。東名を乗り降りしながら途中にある駿府城、掛川城(ともに静岡県)、長篠城、岡崎城(ともに愛知県)に立ち寄った。四ヵ所のうち掛川城は平成の再建だが、価値ある木造天守造りだった。もっと評価されていい。名古屋には夕方に到着した。
 夕飯はうどん専門店に行ってきしめんを頂き、つまみには手羽先と塩麻婆豆腐を堪能した。いわゆる名古屋めしである。

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 翌日は開門に合わせて名古屋城に入った。
 元あった天守は江戸初期に建てられ、地震に耐え、大火もなく、明治後の廃城令を免れて現存していたが、昭和二十年五月の空襲によって焼失した。戦後に再建されたコンクリート製の天守も耐震不足と老朽化により二〇一八年に入場禁止となっている。
 天守に替わって私を呼び寄せたのは、三年前に再建されて一般公開されている本丸御殿である。将軍が上洛する途中で立ち寄る宿泊施設であり、高い格式のある建物になる。展示物が圧巻であった。


 玄関から入ってすぐの一之間と二之間では虎などの猛獣が描かれた障壁画が客人を出迎える。金箔を背景にした何匹もの虎に威嚇され、将軍の威厳に身を竦める。
 表書院に進むと障子絵は松や桜の風景画に変わり落ち着いた気分になる。書院は三之間から順に二之間、一之間へと続き、上段之間がある。ここで将軍と対面する。背景の松は太い幹から大ぶりな枝が伸びて緑色の松が映える。将軍の威光に一役買うはずだ。
 障子絵は部屋ごとに変わり、花鳥や庶民の暮らしぶりなど飽きることがない。何よりもふんだんに使われる金箔がどの部屋も輝かせて目に眩しい。天井の模様や欄間の彫刻、その彩色は職人たちがどれほど手を掛けたかしれない。美術工芸品として価値あるものだろう。


 最後に東南隅櫓を見学。一六一二年建造の重文になる。二層三階。板張りの床はよく磨かれ塵ひとつない。白壁の内部も板張りになり、天井に架かる太い梁が建物を支える。明かりは採光のみ。粛然とした佇まいがあり、四百年の息吹を感じることができる。

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写真は西南隅櫓。

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