車校 その2

「今逃げなきゃ行けないって時にMT車しかなかったら彼女守れないじゃん」と強い意志を掲げて選んだMTの免許、教官からの強い進言により明日からATに切り替えることにした。なった。あんなクラッチだのギアだの旧時代的なマヤ文明の遺産ばりのオールドテクノロジーなんて投げ捨て明日からは時の宝珠ことATをまんまと享受することにした。

晩飯の時に高校上がりで吉野家の店長を務める男の子が「MT余裕っすね」と声をかけてきたが、「まあね」と返して席を立った。帰り際に靴箱から靴を取り出して履こうとしたら、鍵をかけていなかったはずの靴箱に施錠されていて鍵も刺さっていない。 透明の窓からただただ汚れたエアマックスのソールを眺めた。フロントに伝えて開けてもらうことしたら、2000円だ、と言われて2000円か、と言って払って帰った。

風呂に浸かりながら、あの靴は1500円で買ったことを思い出した。外に出ると昨日すこし見えていた星が一切見えなかったから、そういうことかと思った。

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