手の中の憧れ
幼いときから「小さな物」が異常に好きでした。最初は、近くの商店街にあったガラスアート店の動物たち。小指くらいのペンギンにクギ付けになりました。そしてミクロマンと田宮の三十五分の一の歩兵。机の上、筆箱の中、植木鉢……どこにでも「世界」が拡がるわけです。
凧も大好きで小四のときにはすでに名人と言われていました。周囲の大人たちは大凧や連凧に夢中でしたが、私はミニ凧でした。名刺サイズからはじまり、切手の大きさまで縮小して火鉢の上で飛ばす。驚く家族や友達の顔がたまらなかった。
現存しているものは極端に少ないのだけれど、仏像もその昔は「懐中仏」などと呼ばれるものが存在しました。うちにも江戸時代の虚空蔵菩薩像があるのですが、それはそれは小さくてそれでいてちゃんとお厨子に入った精巧なお姿です。
今のように身軽に旅に出られなかった時代、宿について枕元に祀るサイズや持ち運べる携帯性を競ったのだと想像できます。空海さまもお釈迦さまの像を持念仏として大切になさったと伝えられています。
つくる者にとって小さなサイズは憧れです。特に私はそのサイズを極めたい。手から生まれる形はおのずと手に馴染むのです。作品を持ち歩いて欲しい……そんな気持ちを抑えきれず今日も小さな出逢いを楽しんでいます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?