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こんなに抱き合っても背中は寒いね

近づくとおひさまみたいないい匂いがして、そこが好きだった。大きい腕で力強く引き寄せられると、もう何も逆らえない気がして、か弱い女の子のような気持ちになった。腕をまわしきれない大きい背中もよかった。
すっぽりと胸元に顔を埋めると、私もJ-Popの歌詞の女の子のような気持ちになれた。
ずっと目もろくに合わせず喋ってつんけんしてるくせに、キスするときだけ顔をじっと見ながらにやにやして近づいてくるのが可愛かった。でもそれだけだった。
干したての布団にくるまってさて寝ようか、と目を瞑ると匂いが記憶を呼び覚まして邪魔をする。
いつまでこんなこと思い出さなきゃいけないのかなあ。
そして、何かの匂いを嗅いだ時、誰かは私のこと思い出すことがあるんだろうか。それは何だろうか。
確かめようがないことばかり、いつも、ずっと、知りたくなる。

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