見出し画像

目下の恋人

友人に結婚祝いにもらったガジュマルを大事に大事に育てていたが、根腐れをおこしてダメになってしまった。愛情ってなんですかね。

夫と京都へ向かう車内で色々と話したのだが、「俺は君が自分の妻だからいい女だなって思ってなくて。俺のものじゃないし。俺に出会う前から君はずっと最高だったはずで、そこに惹かれたんだよ。」という言葉に痺れてしまった。だからといって他の男に抱かれてもいいというのはちょっと飛躍しすぎではないですか?思考が。「正直俺もよくわからないんだよ。なんていうか・・・関係性としては絶対良くないと思うけど・・・プレゼンテーションをしたい気持ちなんだよな。“こちら、大変いいものですよお〜”って。」深夜の通販番組よろしく私を売り出さないでと笑ってしまったが、なるほどそういうことなのか、とふむふむと顎に手を置いて考えてしまった。海外ドラマとか洋画なんかで“全くアイツはいいオンナだぜ。見ろよ、いいケツしてんだろ。俺のもんだ”みたいなセリフあるじゃないですか。そういうのとは違うんですよねぇ、としみじみと語り出すので、私は私で驚いて「えっ?私は遠くから眺めたり、人にあなたの話をするとき“いいだろ、私の夫だぜ?!”ってなるけど」「そりゃあ君は世界の全部が欲しいからね」と笑う。私は夫が笑うと目尻に皺がたくさん寄るのが好きだなあと横顔を見ておもう。

生体肝移植をした人(レシピエント側の人)は薬の副作用なのか、丸顔になるという特徴があるらしく、常に頬が痩せこけて眼光鋭かった夫の顔面は、輪郭が補正されたおかけでかなり柔らかい印象になった。
好きだった煙草をもう一生吸わない、頬がこけていない夫。実はほんの少し寂しい。私が好きになった男と別人みたいだから。でも内臓ごっそり入れ替えてマジで生死を行き来したんだから、変わりもするか。でもやはりちょっと寂しい。あのかさかさした頬(肝臓をやられていたため肌に脂がなくなる)をもう一生撫でられないのかと思うと。目の前に、生きて、笑って、元気にいるのに、あの眼をもう見られないのかとおもうと、寂しいのだ。でも確かに愛は実体としてそこにある。不思議ですよね。

ところで夫は毎回私に会うと動画や写真を撮りまくり、厳選して保存しているのだが、私が目の前にいるのにスマホを取り出してはにやにやしていたりする。目の前に本物がいますけど?!これを見て!となる。「俺は推しとかできたことないけど、強いて言うなら君が推しかな・・・」とか有識者ぶってキメ顔をする。
ごくたまに写真を撮り忘れることがあるのだが「ぐあぁ!今日の君は今日しかないのに!」と頭を抱えたりする。私は3歳ですか・・?こんなに人に愛されることあります?世の中のカップルってこういうかんじが正常なんですか?だとしたら私は誰とも普通にお付き合いしてなかったのでは、などと不安になる。(あったのかもしれないけど、酷いことで上書き保存されちゃってるな)

こういうの正常なんですか?というのはもう一つあって。もう、本当に簡単に言うたら男女間の友情みたいなやつです。伝説のヤリマンとかを目指してたので良い出会いも台無しにしてきてしまったけども、しっかりとおばさんになった今会えて良かったなあという男の人がいるというのはとても貴重、有り難い。んで最近気づいたんだけど、こういう新しい出会いのワクワクドキドキ高揚感を全て恋と勘違いしてきたのではないだろうか・・・・多感な時期だったのもありますけども・・・皆さん普通に若い頃から区別できていました??女子校出身なんで、って何歳まで言うねんババアと我ながら思うけど、大学も職場も7,8割女性で免疫がなさすぎたのかも知れない。発見。世紀の大発見すぎる。(そうはいっても、女の子の友達は私が男なら口説き落として彼女にしたいなって思うくらいいい子でかわいいけどな!)
愛情注ぎまくって大事に大事にしてても根腐れすることを非常に恐れているのでめちゃくちゃ確認しますけど。夫には「関係性っていうのは育んでいくものですからね」ってズバッと言われてグサッときちゃった。
もらってばかりか、与えてばかりだったかもな。

この世に永遠がないなら目下の恋人や友達の関係が死ぬまで続いたらいいなとおもいながら眠りにつくであります。んで、もしまた素敵な出会いがあったら初対面でなくても「やっと会えたね」とか言っちゃお。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?