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【2016年3月】雨の日、ある一軒家との出会い

 雨が降ってきた。一人で散歩していた。とくにやることなくて、ただいらいらして、なかなか落ち着かない感じだった。明日は、引っ越し開始の日だ。明日から十五日まで、それは豊島区に住む最後の五日だ。その前、涙ばっかりの日々、今日はとうとう飽きて、外の新鮮な空気を吸う気分になった。豊島区と隣の区の交差点で、長い時間立ったままだ。ここは、地下鉄が通うところだ。地下鉄はたまたま目の前に、あっという間に通過している。以前何度も見たけど、今日はやけに目立つ。地下鉄を見ているたびに、時間の流れも感じている。

 雨はなかなかやめなかった。やっと歩き続けた。この交差点を通ると、その隣の区の領地だ。この区は、五日後私の新しい住む区になる。豊島区とあんまり離さないが、やはり悲しい感じが溢れている。それも、自分の癖だろう。慣れるところから離れると、距離とは関係なく、絶対悲しい気分になる。大学卒業の時もそうだった。天津から離れて、なんの感覚もなかったのに、家に着いたとたん、涙が止まらない。まったくその時と同じだ。

 そろそろ日が暮れる。帰ろう、豊島区に帰ろう。そこはまだ自分の居場所なんだ。振り向いて、ゆっくり歩き始める。またあの交差点に着いた。突然、ある一軒家が目に入った。それは綺麗な一軒家だった。だれのお部屋だろう。扉の左に、この部屋の主人の苗字がある。「豊島」と書いている。そっか、ここに住んでいる人は、豊島さんなんだ。でも、豊島区に住むではなく、隣のこの区に住んでいるんだ。不思議な事だ。でも、それも美しいことだろう。交差点に、豊島さんが住んでいる。ずっと豊島区の方向に向いている。ずっと豊島区を見ている。

 そう、それも悪くない。これから、私もこの豊島さんと一緒に、豊島区を見守るのだ。ずっとそばにいるよ、豊島区。

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