2023年の開催日割および重賞競走、ならびに負担重量について
先日、JRAから2023年(令和5年度)の開催日割および重賞競走について発表がありました。農水省の認可を経て決定するそうです。いくつか大きな変更がありますので、順に見ていきましょう。
■開催日割
開催日割の大きな変更といえば京都競馬場が再開されることですね。待ちに待った京都開催です。長かったなぁ~私の大好きな京都1200mはどうなっているでしょうか。楽しみでしょうがないです。
現在の京都競馬場は、2025年の「開設100周年記念事業」の一環として、2020年11月より大規模な改修工事が行われています。馬場の改修やスタンドの改築、パドックの変更など様々な面で大幅なリニューアルが予定されています。
特に一番大きな工事はスタンドの改築工事で、約760億円という総工費のうち、実に85%の650億円を充てています。新スタンドは高さこそ変わらないものの、階層を7階建てから6階建てに変更し、その分、各フロアの天井を高くして、さらにキャッシュレス化の推進に伴いバックヤードを縮小したことで、開放感溢れる空間を目指しているとのことです。
もともとあった旧スタンド(通称グランドスワン)は1980年に建築されていますが、多くの競馬場は40年を目処に改築されていますし、20世紀後半からの技術革新はそれまでと比べて非常に速いので、今の時代に即した良いスタンドができると嬉しいですね。なお1999年に建築されたビックスワンの方は改修工事に留まっているそうです。
また、JRA唯一の円形パドックは廃止され、他と同様に楕円形パドックになります。確かに円形だといつも曲がっているシーンしか見られませんでしたから、これでどこでも同じように馬体を見ることができます。名残惜しい気もしますが・・・まぁこれは仕方ないでしょう。
それから馬場については、芝は路盤から改修するそうです。50cmほど掘り起こして砂利や山砂、改良材などの層を造り、その上に芝を張るそうです。この作業はダートよりも早く、2022年の7/27に全行程を終了したとのことで、あとは芝の育成を待つだけですね。東京競馬場のように水捌けの良い、高速馬場ができそうな雰囲気がプンプンします。もう滅多なことでは重馬場にはならないでしょうなぁ。
あとはパトロールタワーや地下馬道、入場門、歩道のほか、約40億円を投じて厩舎地区の整備も行われるそうです。国際厩舎を除く厩舎の全取っ替えですって。馬房のクーラーや装鞍所付近のミストなど暑熱対策にも配慮されるとのことで、いやぁ~すごい。金はあるところにはあるんだ・・・
2024年3月の竣工まで細部の調整が行われるそうですが、競馬開催は一足早く2023年4月にスタートします。リニューアルした京都競馬場で素晴らしいドラマと私に少しばかりのお小遣いを頂けることを期待しています(笑)
■重賞競走
重賞について大きな変更と言えば、紫苑SのGⅡ昇格でしょうか。秋華賞の前哨戦として2000年に創設された同レースからは、なかなか本番に繋がる馬が出ませんでしたが、重賞(GⅢ)に昇格した2016年以降の勝ち馬の本番の成績は2-1-0-3と、トライアルから本番に繋がるようなレースになりました。
さらに重賞昇格以降の勝ち馬の内、4頭が古馬の重賞で馬券に絡み、2頭が海外GⅠを制覇するなどちょっとした出世レースのような扱いです。肝心のレースレーティングも過去3年の平均が107.33、過去6年の平均が106.79と牝馬GⅡの基準をクリアしており、満を持してのGⅡ昇格といったところでしょうか。来年1月の日本グレート格付管理委員会の格付審査で正式に決定する予定です。
■負担重量
開催日割、重賞競走とともに発表されたもう一つの大きな変更点が負担重賞の引き上げです。簡単に言えば斤量重くするよって話ですね。平地では
①馬齢重量(3歳9月まで)
②古馬混合の別定戦における基礎重量
③最低負担重量
がそれぞれ引き上げられるそうです。なお、①の3歳1~9月については再来年の令和6年度から実施されます。今の2歳世代は来年も例年通りって事ですね。
なお、同様に騎手の負担重量についても変更があり、平地と障害のそれぞれの勝利数に応じて減量特典を設定するとのことです。
引き上げ幅はJRAの発表では詳しく分かりませんでしたが、重賞競走の変更点の中で、古馬混合の基礎重量を現行より1キロ引き上げると書かれているので恐らく1キロでしょう。
この変更は、騎手の健康と福祉、将来にわたる優秀な人材確保の観点から負担重量の引き上げに踏み切るということですが、1キロ重くなるだけで騎手としては想像以上に楽になると思います。昨今は若手騎手でも減量に失敗して乗り替わり等の問題も散見されましたし、減量特典も一緒に改正すれば若手の騎乗機会もそれなりに確保できると思いますが・・・どうでしょうJRAさん。
また負担重量については海外競馬でも各国によって差があります。日本と同じような斤量を設定しているところもあれば、日本より3~5キロほど重いところもあります。特に欧州では60キロを背負う事も良く見られますが、日本では頑張っても59キロってとこで、60キロはほとんど見かけません。
この軽さが高速馬場と相まって、世界一の高速時計を叩き出してきたのが日本競馬です。陸上トラックのような反発力のある走りやすいコースを造り、ディープ産駒に代表されるような切れ味のあるスピードを武器にした競走馬を生産し、レコード至上主義のように次々とレコードを連発させる。それがファンが望むことで、馬主が望むことで、生産者が望むことだと、お上が作り上げた日本競馬・・・だったのですが、それを変える決定をしたわけですから、JRAの本気度と言いますか、損得勘定でこちらの方が得と判断するだけの何かがあったのだと思いたいですねぇ。
■顕彰馬の選定方法
それから定例記者会見で、顕彰馬の選定方法についてコメントがありました。東スポによると、
「記者個人の投票内容を非公表としたのは、投票者が自らの考えにしたがって安心して投票してもらうことを念頭に置いてのもの。JRAでは非公表であることが〝責任感のなさ〟に直結するものとは考えていない」
「選定対象馬が分かりづらいという声が数多く出ているならば、より分かりやすい資料にしていきたい。いずれにせよ顕彰馬制度発足から38年間、さまざまなご意見を考慮しながら改善を重ねて現在の形になった。時代の変化を踏まえながら、今後より良い選定方法は何か?の視点を持って適切に対応していきたい」(木村常務理事)
とのことでしたが、話にならないレベルの回答ですね。「投票者が自らの考えにしたがって安心して投票してもらう」と言いますが、それならJRA賞で記者ごとの投票内容を公開しているのはなぜでしょうか。片や年度表彰で投票内訳を公開し、片や顕彰表彰で投票内容を公開しない・・これで筋が通ってると思いますか?
それに選定対象馬が分からないなんて矮小な問題ではありませんし、そもそもJRAが自らの組織で顕彰する対象を全て外部の人間に決めさせている点が問題なのです。
※顕彰馬については上記を含めた過去記事で色々と書いていますので、よろしければご一読下さい。
上記の記事で書いたように、もっとJRAの責任を明確にする必要があると思います。だって自分たちの組織の話ですよ?例えば、自分の会社のヒット商品を表彰しようという時に、私たちは選びませんのであなた方外部のマスメディアが選んでください、とか言います?せめて会社の役員とかで選びません?
せめて前年リーディングに基づいた騎手、調教師に投票権を与えるくらいしたらどうですか?それぞれ25位までにしても投票者は1.25倍にしかならんのですよ?大した手間ではないでしょう。
また、現行の投票内容はGⅠ勝ち星だけで顕彰馬を選定しているように見えますので、繁殖成績も考慮した部門を作るとか、JRAが勝ち星と繫殖成績を精査した競走馬のみを対象とすればJRAは明確に責任を負えると思いませんかね。こうすれば選定対象馬が分からないなんてアホな問題は起きませんし、JRAも自組織として責任をもって名馬の功績を後世に伝えることができるでしょうに。
■まとめ
結局、一番驚いたのは負担重量でしょうかね。続いて顕彰馬制度に対する責任の無さ、紫苑Sの格上げでしょうか。久々に面白く、納得できる内容ばかりでした。顕彰馬制度の件を除いてね。
これから日本競馬はどんな風に変化していくのでしょうか。楽しみですね。