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整合性が取れない?指標にならないレーティング

7/5深夜に行われたエクリプスSで、世界最強馬のエネイブルが2着に敗れる波乱がありました。6歳となったエネイブルは今季初戦という事を考慮しても衰えを感じる内容であり、次走が分水嶺になる可能性も考えられます。勝ったガイヤースは昨年のバーデン大賞を14馬身差で圧勝し、先月のコロネーションCも快勝した逃げ馬であり、自分の競馬をしてエネイブルを下す価値ある勝利だったと言えます。

ここで私が気になったがレーティングです。レースの前のレートは、エネイブルが128(アローワンス込で131、以下同じ)で、ガイヤースは126、キーファーズの半持ちで3着だったジャパンは122、4着の鉄の女マジックワンドと5着のディアドラは115(同118)でした。勝ったガイヤースと2着のエネイブルの着差は2と1/4ですが、レートにはどれくらい影響するのかなと。

同レースの着差は、上から順に2馬身1/4、アタマ、1馬身半、1馬身1/4、クビ、2馬身であり、着差によるポンド差(2000mを基準)は上から順に概ね3.5~4、0.5、3、2、0.5、3.5ぐらいでしょう。それを選定した基準馬に当てはめてみると下記のようになります。

基準馬 ガイヤース エネイブル ジャパン マジックワンド ディアドラ
1着馬   126    132    126     122      124 
2着馬   123    128    123     119      121 
3着馬   122    127    122     118      120 
4着馬   119    123    119     115      117 
5着馬   117    121    117     113      115 

レーティングの算出にはこれ以外にも色々と加味しなければいけない部分があるのですが、ざっくり出すとこんな感じですね。これを見ると基準馬はマジックワンドかディアドラになりそうです。さすがにエネイブル基準だとガイヤースが高すぎますし、ジャパンだとマジックワンドとディアドラが高すぎですからね。

レーティングの算出方法と整合性

レーティングの算出方法は、基準馬の選定し、そこから着差によるポンド差(距離によって異なる)を差引するのですが、基準馬の選定によって数字が大きく異なる場合があります。また、各レース毎のレート自体はほぼ機械的に算出できるのですが、そのレースではバランスが取れていても、他のレースと比べると整合性の取れないレートになったりするので、レーティングをそこまで信用して良いわけじゃありません。

それが顕著に表れたのが宝塚記念のレートです。先日、JRAから宝塚記念のレーティングが発表されましたが、それはこんな感じでした。

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6馬身差の圧勝だったクロノジェネシスが120(同124)で、キセキが115、モズベッロが108、サートゥルナーリアとメイショウテンゲンが105、ラッキーライラックは97ですか・・う~ん・・ちょっと低くありませんかね?

クロノジェネシスとキセキのレート差は5ポンドで、アローワンス込みなら9ポンドです。2200mで6馬身差なら通常10ポンド前後になりますからこれは妥当な数字と言えます。キセキとモズベッロも5馬身差なら通常8ポンド前後なのでここも妥当ですし、モズベッロとサートゥルナーリアも1馬身3/4なら通常3ポンド、サートゥルナーリアとラッキーライラックも2馬身半なら通常4ポンドなので妥当な数字と言えます。

しかし、それはあくまで宝塚記念のみの話であって、他のレースと整合性が取れているかと言われれば微妙ですね。長距離の天皇賞・春とスプリントの高松宮記念を除いた春の古馬GⅠ4つの1着馬を比較すると、意外と整合性が取れているように見えますが、2着馬以降を見てみるとなんだかおかしい気がします。

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牝馬限定でアローワンスなしのヴィクトリアマイルで113だったノームコアを基準にすると、1600は1馬身で通常2ポンドですから安田記念のグランアレグリアが114(118)、アーモンドアイが110(同114)、インディチャンプは109となります。

一方、昨年の持ちレート120、今年のマイラーズCで118のインディチャンプを基準にすると、安田記念のグランアレグリアが119(123)、アーモンドアイが115(同119)、ノームコアが113(117)となります。後者の方が公式の数字とほぼ同じなので、おそらくこちらを基準にしたのでしょう。

そうなると今度はヴィクトリアマイルとの整合性が取れなくなります。ヴィクトリアマイルのノームコアは安田記念と同程度の112で、クビ差のサウンドキアラも112なのでここまでは整合性が取れています。しかし、4馬身差のアーモンドアイが124なのは過大評価でしょう。1600で4馬身差なら通常8ポンド前後ですから、アーモンドアイは120が妥当な評価と言えますし、それなら宝塚記念のクロノジェネシスと整合性も取れると思います。

仮に、安田記念のノームコアは113(同117)なので、アローワンスを加えた117で見てみると、ノームコアとクビ差のサウンドキアラが112なのが怪しいし、当然ノームコアの112も怪しくなりますが、サウンドキアラと4馬身差であるアーモンドアイの124は整合性が取れます。

つまり、公式で124とされたヴィクトリアマイルのアーモンドアイだけ、レートが非常に高く付けられている可能性が高いと言えます。JRAは何に対して忖度しているのでしょうか。アーモンドアイが勝てば評価が高く、負ければ低く、出走しなければ論外という事でしょうか。これではレースがレートを決めているというより、馬がレートを決めている事になりますし、全く指標にならないですよね。

レースレーティングを見てもGⅢクラスしか出走していなかったヴィクトリアマイルが114.75であるのに対し、古馬の一線級が揃った宝塚記念は112.75であり、宝塚記念よりヴィクトリアマイルの方がレースレベルが2ポンドも高いという事になります。レース前のプレレーティングの上位4頭の平均を見ても、ヴィクトリアマイルは115.5であるのに対し、宝塚記念は119.25であるにもかかわらず、です。

もちろん、年末に修正が加わると思いますし、ファイナルレートによってレースレーティングは変わりますが、さすがに特定の馬に対する忖度は公平性の観点からご法度だと思いますよ。だって公正競馬を謳うJRAですもん。今までディープにしろ、ハープにしろ、キタサンにしろ、散々やらかしてきたでしょう。まだ学びませんか?

そういう事をしてもファンの信頼も支持も得られないのです。仮にそれでアーモンドアイが数字的に名馬の仲間入りをしても、記憶にも残らない上辺だけの馬に成り下がってしまいますし、むしろ競馬文化、競馬の歴史という面から考えればマイナスなんですよ。

今の理事長になってから何だか悪い面ばかりが目に付きますね。理事長の任期は来年の9月までなんで、それまで大人しくしていてほしいもんですね。



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