騎手の成績 2020年2月

2020年の初春競馬が終わりました。いつも思いますけど、○○競馬って範囲は難しいですね。例えば、春競馬はクラシック戦線が始まる3月の中山、阪神競馬から始まりますが、終わりがいつか明確ではありません。夏競馬は函館競馬が始まってから札幌競馬が終わるまでを指すので、宝塚記念が春競馬か夏競馬のどちらに含めるのは迷います。秋競馬も通常は10~12月の事を指しますが、12月の競馬は冬競馬とは言いませんし、9月中旬から下旬は秋競馬に入るのかと言われれば微妙なラインです。

1~2月は正月競馬とも冬競馬とも春競馬とも言えませんから、私は初春競馬って表現にしています。まぁ季節ごとの表現はどれも微妙なもので、まとめて表したい時に不便ですよね。物書きやってると定義付けしてほしいなぁと思うこともしばしばあります。できれば皆様はどのように表現するのか聞いてみたいですね。

そんな話はさておき、騎手リーディングが面白い事になっています。1月期では概ね予想通りとなりましたが、マーフィー旋風と開催数の少なさから意外な顔が上位に顔を出していたりするのですが、2ヶ月も経つと大勢が固まってきます。さっそく見ていきましょう。

リーディング上位に食い込む若手

2月のリーディング上位は先月と大きく変わりませんが、調子が取り戻したベテランと若手の食い込みが目立ちました。

まず、リーディングトップは川田が確保。先月トップのマーフィーが帰国すれば2位が繰り上がるのは当然でしょう。川田のスゴいところは勝率と3着内率の高さです。勝率0.336、3着内率0.655という数字は障害騎手でもお目にかかれない高い数字で、一流騎手の域すら超えるレベルです。ルメールですら過去最高は0.580ですし、近い数字と言えばモレイラの勝率0.337、3着内率0.613があるくらいですから、いかにこの数字がスゴいのか分かると思います。さらに特別戦の勝利数は18を数え、実に勝利数の半分を特別戦で挙げているというとんでもない記録を叩き出しています。この数字を維持できたらリーディング以上の価値がある事だと思いますね。

続いて2位は先週フェブラリーSを含む9勝を挙げて、川田を猛追するルメール。安定の勝率と3着内率ですが、彼の馬質なら当然と言えば当然でしょう。先週のように流れを引き寄せられれば一週間で7~9勝するんですから、川田からすれば目の上のたんこぶのような存在です。そういえばフェブラリーSを勝ったので、GⅠ勝利数が27に伸びました。これは蛯名、横典を抜いて単独4位となる記録で、2位の岡部(31勝)と3位のミルコ(30勝)は今年中に抜けそうな雰囲気すらあります。

3位は28勝で武さんですね。先週が始まる前まではルメールと良い勝負だったのですが、先週の9勝で大きく引き離されてしまいました。それでも勝率0.237、3着内率0.424はトップ3に入る数字で、さすがに他の騎手とは貫禄が違うところを見せています。また、先月に物足りないと言った1~3番人気は15-6-1-19で勝率0.365、3着内率0.536と改善しており、今週末はサウジ遠征を予定するなど、老いてもなお進化を見せる姿には感服いたします。ただ、未だに重賞勝利が無く、デビューの年以外で最も重賞勝利が遅かった1992年3月15日の阪神大賞典(メジロマックイーン)を超えるかどうか心配です。

5位の松山は先月と同順位。例年より成績が向上していた1月期の勢いをそのままに3着内率0.322、重賞2勝(きさらぎ賞、京都牝馬S)と好調をキープ。これは春競馬が楽しみになってきました。平成生まれ唯一のGⅠ勝利騎手として名高いですが、川田と同じく勝利数の半数が特別戦勝ちですし、いよいよ本格化でしょうか。

6位には藤岡兄が入りました。他の記事でも書きましたが「京都は頭数が少なく、有力馬に乗れる機会が少ない。大レースではリーディング上位から選ばれるのでリーディング上位につけたい。」との言葉通り、小倉で13勝を挙げて完全に戦略勝ちの6位となりました。勝率0.181は何気に全体4位ですし、3着内率の前年比の伸び率も全体4位で、勢いがある事が分かります。春競馬は注目の存在となるでしょう。

8位のミルコは重賞勝ちがあるものの前年比の3着内率の伸び率が未だにマイナス。昨年は▲0.137と大幅に下げましたが、今年も下げており、2018年の0.552から0.356と0.196も下げています。しかし、腐っても鯛とはよく言ったもので、それでも0.356は全体5位なんですよ。一時が異常過ぎただけで、現状でも立派な数字なんですよね。全13勝はいずれも関東で挙げたもので、三浦は復帰するものの戸崎は遅れますし、松岡や藤田が離脱している事を考えたら騎乗馬も集まると思うので、【関東】騎手としてもう少し頑張って欲しいですね。

10位の団野大成は私の一押しの若手騎手。関西2年目の若手騎手伝統の伸びを見せ、先月19位から10位に躍進しました。小倉戦略が当たった騎手の一人で、3着内率は若手トップの0.289を記録し、前年比の伸び率では0.097と全体トップの記録です。しかし、特別戦の勝利はないので減量効果で勝ち星を稼いでいるとも見えます。先週で終了した小倉競馬は若手が多く、そこで腕も磨くのは結構ですが、大切なのは『中央四場でどこまでやれるか』ですから、来週からの春競馬は今以上に気を引き締める必要があります。

11~20位にも躍進組がいる?

この辺りは大混戦ですね。9位から18位までは2勝差で、2着も僅差で並んでいるので、コロコロ順位が入れ替わりそうです。

11位には関西期待の若手西村が入りました。昨年の成績からするともっと伸びてもいいような気もしますし、悪くは無いけど物足りない印象を受けます。小倉ベッタリの割には重賞勝ちはおろか特別戦勝ちも一つしかなく、関西3年目の若手騎手伝統の凋落とならなければいいのですが。

12位はフェブラリーSの騎乗がネット上で非難されている田辺でした。2,3,4着が多く、取りこぼしてるなぁという印象を受けますが、それでも先週(2/22,23)に4勝を挙げて関東リーディングトップなんですよね。先月22位から12位まで上げていますし、復調しているのは確かなんでしょうが、3着内率の伸び率は下から4番目の低さで、近年では最も悪い状態なのでもう少し見守りたいです。

18位には小倉リーディング3位の菱田が入りました。過去に期待されながら素行の悪さで沈んだ騎手で、年間30勝台をウロウロしていたのですが、今年は2ヶ月で昨年の1/3にあたる10勝を挙げ、3着内率の伸び率も0.088と全体3位を記録しています。心を入れ替えればローカルで生き残れるでしょうが、どうなるか。色んな意味で今後が楽しみですね。

20位以下はどうなった?

20位台には若手がズラッと揃いました。亀田、藤田、岩田Jr、斎藤新、鮫島克と面白い若手が揃っています。

22位の津村は2月に7勝と爆発し、先月55位から一気に順位を上げました。ほとんど中穴で勝っているのも津村らしく、人気薄で3着に入るなどファンには嬉しい存在となっていますね。カレンブーケドールは残念ですが、帰国後も乗せてもらえるように精進して下さい。

23~25位の亀田、藤田、岩田Jrはいずれも3着内率の伸び率を上げていますが、藤田はチョンボで落馬負傷、岩田Jrも騎乗停止と病欠のコンボはよろしくない。努力の跡は見て取れますが満足いくレベルではないのは、おそらく本人達も理解しているのではないでしょうか。

逆に伸び率を下げた26位の斎藤新は、京都で奮闘していましたが中央四場で戦えるとは思えません。2年目のジンクスとは言いません思いませんが、調子に乗らずローカル回りで頑張るか、リーディング下げてでも中央四場で頑張るか、どちらを選択するか楽しみです。

28位の鮫島克は小倉大賞典で重賞初制覇を果たしました。小倉11日間で6-8-6-52、勝率0.083、3着内率0.277は良い方ですし、重賞勝利のインパクトはやはりでかい。春競馬でチャンスが巡ってくると思いますし、条件戦でも平場でも、そのチャンスを逃さない事が飛躍に繋がるので、期待して見ていきたいと思います。

31位の川又は昨年、関西3年目の若手騎手伝統の凋落となりましたが、今年は京都で4勝を挙げている様に、小倉ベッタリの若手とは違い中央四場で結果を残している点が評価できます。その分、騎乗回数は少ないのが難点ですが。

34位の松若はどうしちゃったんでしょうか。昨年まで毎年40~50勝を挙げて重賞もいくつか勝っている最も期待した若手騎手が、今年は非常に苦戦しています。というか彼がやりたかった事をそのまま藤岡兄にやられた感があります。このままズルズルと行く事がないように巻き返しを期待したいですね。

36位の坂井瑠星は昨年、重賞3勝したものの3着内率の伸び率を▲0.056と大きく下げ、今年もさらに▲0.037下げており、0.174まで落としました。そりゃ矢作先生怒るわ。人気馬での2,3着も多く、有力馬に騎乗できずに成績を下げているみたいですね。藤岡兄が前に『甘い、インパクトが足りない、突き抜けるくらいを期待していた』と言っていましたが、そこまでの期待に応えられずに終えた昨年を引きずっているのかな。奮起を期待します。

我らが野中君はどうなった?

それから触れたくないんですが、我らが野中君は65位に沈んでいます。冗談でしょ?ってくらい落としていて、期待したオセアグレイトの重賞挑戦も良い競馬をしたものの離された3着で目も当てられません。昨年2月の東京競馬で2-1-0-32でしたが、今年は0-0-5-54と惨敗。2着すらありません。人気薄で3着4回と見せ場あるんですが、いかんせん馬質が悪過ぎます。3着内率も一割を切っており、伸び率も▲0.048と下から数えた方が早いレベルで、海外遠征後に見せた良さが消えているように思えますし、昨年12月の惨敗に匹敵する低迷なのでお祓いをお願いしたいくらいですね。

もういっそ海外遠征した方が良いんじゃないでしょうか。ダービー後と言わず、得意の中山開催が終わったら一年くらい海外行って違う空気を吸った方が好転すると思いますよ。騎乗数も大切ですが、またバリードイルで働かせてもらい、技術だけじゃなく競馬に対する認識をアップデートしないと。このまま根本厩舎の番頭みたいな形じゃ騎手として成功は望めないかもしれません。

騎手の怪我が多い

昨年末から騎手の落馬負傷が増えています。怪我の時期と内容は以下の通りです。

12/28 蛯名正義  右踵骨粉砕骨折
1/5  三浦皇成  左関節骨折、橈骨(橈骨)遠位端骨折
1/5  大塚海渡  頭部外傷、脳挫傷
1/12  難波剛健  右鎖骨遠位骨幹部骨折
1/13  菅原明良  腰椎および右股関節挫傷
2/8  松岡正海  左大腿骨骨折
2/9  伴啓太   左鎖骨々幹部骨折
2/15  藤田菜七子 左鎖骨骨折
2/22  横山武史  右前側頭部・顎・腰部の打撲、右口唇挫裂傷
    斎藤新   右肘打撲

幸い、斎藤新は2/23に騎乗できましたし、横山武も休業情報に載っていないので来週には復帰できるでしょう。また、浜中の休業期間は2/25までとなっていますし、三浦皇成も調教に復帰したので休業は8人まで減少します。

関東騎手に負傷が集中しているのは何か理由あるのでしょうか。大塚や藤田のように自身のポカが原因ならともかく、放馬や故障、他馬に巻き込まれての落馬負傷は運がないとしか言い様がありません。だからお祓いが必要なんです。これが関西に飛び火しなきゃいいんですがね。

何はともあれ来週から春競馬の始まりです。馬も騎手も、安全に無事に走り終えてほしいですね。



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