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毎年恒例。今年も第63回グラミー賞主要4部門のノミネートを予想してみました。<パート1:最優秀新人&最優秀レコード>

いやあ、やっと大統領選、決まりましたね。トランプ陣営はまだ法廷闘争するようですが、今回は開票対応も各メディア報道もかなり慎重に進められてたのでこの結果情報が覆ることはまあないでしょう。いろいろガタガタしばらくは大騒ぎでしょうが。少なくとも分断を融和に変えて、人種差別を明確に撲滅すると宣言するような大統領になってくれて一安心、まだまだ問題山積なアメリカの状況ではありますが、これで心おきなく音楽を楽しめると言う人も多いのでは。

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1.はじめに、そして今年のグラミーイベントのこと

さてそうこうしているうちにあっという間に今年も2ヶ月を切り、いよいよグラミー賞の季節が見えてきました。今回の第63回グラミー賞の授賞式は来年1月31日(日本時間2月1日)の開催が決定していますが、今年のコロナの状況を考えて、今のところ毎年通りの通常観客を入れての授賞式なのか、それとも無観客でストリーミングになるのかは最終決定されていません。ただここのところ感染者数がまた急増しているアメリカの状況を考えると多分8割方の確率で無観客・ストリーミングなんでしょうけど。ただグラミーの授賞母体団体であるNARASの暫定会長(なぜ暫定なのか、については今年の1/17の僕のFacebookポストをご参照下さい)ハーヴィー・メイソンJr.が「ストリーミングになっても絶対放送はライブでやる。前撮りとかはやらん」と言ってますから、今年は例年と全く別の意味でエキサイティングなショーが期待できるのかも。でもそうなると、WOWOWグラミー賞中継番組はどうなるんだろう?ジョン・カビラ氏の仕事がなくなっちゃうんかなあ(笑)

一方、ここ数年毎年1月中旬に新宿カブキラウンジで、音楽評論家の吉岡正晴さんと一緒にやってるトーク&ミュージック・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ〜グラミー賞スペシャル〜」もこのコロナ状況でまだ未確定ですが、一応来年1/20(水)に開催が暫定決定しました!最終的にリアルイベントではなくて配信とかになるかもしれませんが、またここでも、そして自分のFacebookページでも詳細アナウンスしますので、是非楽しみにしていて下さい!

さてそのグラミーのノミネーション発表もこちらは完全オンラインで11/24(火)NY時間正午(日本時間は11/25(水)午後2時)から1時間、「特別ゲストを迎えて」賞の正式サイトであるGrammy.comでストリーミングされるようです。このイベント、一時期はショー形式でやってたんですが、最近は比較的地味な動画がポストされるくらい。去年は今はなきデボラ・デューガンハーヴィー・メイソンJr.、司会のアリシア・キーズ(そういえば今年って司会ってあるのかなあ)らが出てきてプレスの前でアナウンスするだけ、という動画でしたけど、今年は過去の受賞者や、ノミネーションの可能性のあるアーティストなどをリモートでつないだイベント、とのことなので、こういうコロナの状況がかえってこのイベントを盛り上げることになるかもしれません。いずれにしてもあと2週間でノミネーション発表、ということなので、今シーズンのグラミー賞関連一連のイベント・ブログ特集の一発目として、主要4部門のノミネーション予想などやってみましょう。なお、第63回グラミーの対象作品は、2019/9/1〜2020/8/31の期間に新たに発表されたものに限られてます。この対象期間、昨年の授賞式がアカデミーと日程を離して早めに開催したいというネットワークの意向?からか、従来の2月上旬から1月下旬になった関係で、昨年なんて2018/10/1〜2019/8/31と11ヶ月間だったもんで、こういう早めの期間になってしまってる、という事情があります。何だかこれだと2020年のグラミー、って感じじゃなくて「2019年後半と2020年前半のグラミー」って感じでピンと来ないことおびただしいわけですが。

ま、そんなことよりノミネーションの予想、行ってみましょう。

2.最優秀新人賞部門ノミネーション予想

さて去年はリゾをこの部門にノミネートしたいばっかりに、いろいろとこの部門の対象要件をかなり拡大解釈していたアカデミーですが、実は今年もこの部門の対象要件に一つ大きな変更がありました。それは、

これまであった「過去発表の最大作品数の上限」が撤廃されたんです!

これ、相当な規制緩和ですよねえ(笑)。去年までは一応「過去に30曲を超える楽曲・トラックリリース、または3枚を超えるアルバムのリリースがアル場合は対象外」というルールがあったんですが、これでほぼ唯一の選考基準は「該当期間に当該アーティストが商業的またはアーティスト的にブレイクスルーを果たしているか」だけになったことになります。しかもこの判断はアカデミーが任命する「ノミネーション・レビュー委員会」が協議の上決定する、ということなんですねえ。昨年も「某アーティスト関係者やアーティスト本人がこの委員会に出席してたらしい」などという噂が出ていたことを考えると大統領選の結果に対するトランプの反応じゃないけど「大丈夫か?」という気がしますが、ここはさすがにこの委員会メンバーに対して今年からは厳しめの「利益相反宣誓書」を出させて、虚偽の申告をした場合は以降委員会から失格になる、という規定を作ったみたいなので一応コンフリクトは予防できる、というのがアカデミーの説明みたいです。

まあこの規制緩和が意味するところは何か、というのを考えながら予想したノミネーションは次の8組です(グラミーは2回前の第61回から、主要4部門のノミネート候補数を従来の4〜5から、8に増やしています)。

Gabby Barrett

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一昨年の第16シーズンの『アメリカン・アイドル』でも3位につけていた、ペンシルヴァニア州マンホール出身の今年若干20歳のカントリー・シンガー、ギャビー・バレットに取って今年は正にブレイクアウトな年になりました。他の女の子と浮気してる彼氏に「でも彼女もあなたを裏切って浮気してるといいわね」と屈折した女心を歌うシングル「I Hope」は、史上初の女性ソロシンガーのデビューシングルでカントリー・シングル・チャート1位(通算14週)になったばかりでなく、リリース後しばらくしてチャーリー・プスをフィーチャーしたリミックス・バージョンに火が付いて、Hot 100でも現在6位に昇る(依然上昇中)大ヒットに。このカテゴリーには毎年取り敢えずカントリー・ジャンルもカバーする意味からか、1〜2人カントリー・アーティストがノミネートされるんですが、この曲、今年11月開催予定のCMA(カントリー・ミュージック・アウォード)でも最優秀シングル部門と最優秀新人部門にノミネートされており、今年の場合、彼女のこの部門でのノミネートは実力的にまあ間違いないところでしょう。

Big Thief

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グラミーのこのカテゴリーではオルタナ系のアーティストは弱めなんですが、去年はビリー・アイリッシュが圧倒的に勝利してるので、今年も女性ボーカル系のオルタナ・アーティストにはチャンスあるかな、と思って、去年何と2枚のアルバム『U.F.O.F』と『Two Hands』をリリースして、音楽メディアの絶賛を博したNYはブルックリン・ベースのビッグ・シーフは来るかもということで。ボーカルのエイドリアン・レンカーは今年ソロ・アルバムもリリースしてそれも高い評価を受けるなど、その叙情的ながらエッジの立ったフォークっぽいサウンドはとても気になるし、ここ最近ではかなり話題のアーティストなので。

Phoebe Bridgers

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そして同様に女性ボーカルのオルタナ系シンガーソングライターでは、今年リリースしたセカンドアルバム『Punisher』が、いい感じのポップ・センスとヒリヒリとしたリリックとサウンドでその才能のほどを遺憾なく聴かせてくれた、フィービ・ブリッジャーズが、個人的にはノミネートされるんじゃないかと思ってます。彼女、来年に延期になったフジロックにも今年来る予定で、個人的にも観るのを楽しみにしてた、才能あるシンガーソングライター。今回の大統領選では「トランプが負けたらネットでグーグー・ドールズの「Iris」をカバーするわよー」なんて言ってるお茶目さもかわいいです(実はとっくにYouTubeでカバーしてるw)。

BTS

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そしてやっぱBTSは今年は外せないんじゃないかと。一昨年から去年にかけてアルバム『Love Yourself: Tear』(2018年6月)、『Love Yourself: Answer』(2018年9月)そして『Map Of The Soul: PERSONA』(2019年4月)と立て続けに3枚をBillboard 200で初登場1位にしたので、昨年彼らがこの部門から漏れた時は、ネット上で大きなブーイングが上がったわけです。なので、本来従来の要件だと今年はまちがいなくアウトのはずなんですが、今回の規制緩和の目的の一つは、今回の対象期間でアルバム『Map Of The Soul: 7』(2020年3月)の初登場1位、そしてシングル「Dynamite」がHot 100初登場1位と更に一段上のレベルのブレイクアウトを見せた彼らをノミネートする、ということがあるんじゃないかと睨んでいます。彼らがノミネートされると、アジアからのこの部門のノミネートは史上初、ということになります。ダイヴァーシティを推進するアカデミー、いかにもやりそうですよね。

Doja Cat

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ドジャ・キャットことアマラ・ラトナ・ザンディル・ドラミニ(彼女の母親はユダヤ系アメリカ人の画家で、父親は南アフリカ出身の黒人映画俳優)にとっても2020年は大きなブレイクアウトの年でしたね。70年代ディスコへのオマージュ的な理屈抜きに楽しいダンスナンバー「Say So」の大ヒット(2020/5/16付全米1位)と、そのセクシーな容姿を最大限活用したPVやビジュアルで恐らくティーンエイジャーを中心にネット上で大いに人気を集めました。夏頃にコロナ感染の報が伝えられましたが、その後完治したようなので、授賞式当日のパフォーマンスも期待できるところ。その露出度合いと華やかさで、ある意味今年を代表する(来年以降は判りませんが)アーティストの一人といっていいでしょう。

Pop Smoke

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ここ数年残念なことに、毎年シーンに影響力のあるラッパーや才能ある若手のラッパー達が相次いで他界してますが、2020年最もそういう意味で衝撃だったのは、50セントがバックアップしてフロウスキルも高く評価されていて、NYはブルックリンのドリル(トラップの派生的ラップスタイル)・シーンを代表すると目されていた若干20歳のポップ・スモークが、デビューミックステープの『Meet The Woo Vol. 2』(2020年2月全米7位)でブレイク直後、デビューアルバム『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』(7月初登場1位)のリリースを目前にして今年の2月に自宅への不法侵入者に射殺されてしまったこと。ちょうど僅か3ヶ月前に、やはり若手のエモ・ラッパーの旗手として期待されていたジュースWRLDが急逝したばかりだっただけに、ヒップホップ・ファン全体への彼の死のインパクトは高かったですね。その影響も多分にあると思いますが、自分の毎週の「今週の全米No.1アルバム事情」でも以前お伝えしたように、初登場1位以来ずっとトップ4以内に13週ステイした後に3ヶ月ぶりに先月1位に返り咲くという長期間に亘るヒットに。没後にもかかわらずシーンでの存在感が増しているような状況ですから、これはきっとこの部門だけではなく他の部門でもノミネート、あるんじゃないかと思ってます。ジュースWRLDは残念ながらこの部門のノミネートから漏れてしまっていたので、ポップには是非少なくともノミネートは決めてほしいものです。

Rex Orange County

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こちらはちょっと自分の趣味も入ってますが、UK出身の宅録系ポップ・シンガーソングライター、レックス・オレンジ・カウンティことアレクサンダー・オコナ—君もかなり有力な新人賞部門ノミネート候補ではないかと思ってまして。あのタイラー・ザ・クリエイターのアルバム『Flower Boy』(2017)にフィーチャーされたのがブレイクのきっかけで、その後もランディ・ニューマンとのTVでの共演を経て、昨年10月にリリースしたアルバム『Pony』は珠玉の今風宅録ポップ・アルバムで、自分も昨年のマイ・ベスト・アルバムの13位に入れたくらい気に入ってました。日本でも、早々に2018年のサマソニに来日以来、結構草の根的に人気を得てきているようで、今年単独来日のはずだったんですが、残念ながらコロナでキャンセルになってます。日本で人気のあるベニー・シングスなんかともコラボしたりしていて、そのポップ・センスは抜群なので、是非小さめのハコで聴きたいもんです。

Roddy Ricch

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そして大トリ8組目のノミネート候補に予想したのは、今年若手ラッパーでブレイクした最右翼のロディ・リッチ。今年1月の第62回グラミー賞授賞式には早くも登場してこれも昨年凶弾に倒れたLAシーンを代表するベテラン・ラッパー、ニプシー・ハッスルのトリビュートセグメントで堂々としたパフォーマンスを見せてました。彼のデビュー・アルバム『Please Excuse Me For Being Antisocial』も去年12月に1位初登場、その後3回1位に返り咲きながら通算4週1位をマーク、シングルの「The Box」も今年前半に11週1位という、新人としては充分すぎるほどのブレイクアウトを果たしてますから、ノミネーションはもちろんのこと、この部門受賞の本命に近いと思うなあ。

ちなみに集計対象期間中にエクスポージャーが高かった、リル・ベイビー、ダベイビー、ミーガン・ザ・スタリオン、モーガン・ウォレンといった連中は去年以前の対象期間で既に「ブレイク」してたということで対象外にしました。それでも今回の規制緩和で入ってくる可能性あるけど。

2020/11/20追記:うっかりしてました。先程ビルボード誌のノミネート予想と見比べてて、「ロディ・リッチは昨年最優秀ラップ・レコーディング部門を受賞した二プシー・ハッスルの「Racks In The Middle」にフィーチャーされて受賞してるから対象外」というコメントを見て「あーそうだった!」と気が付きました。失礼しました。ビルボードの予想見たからっていって自分の予想は変えないけど、ノミネート資格ない候補を挙げてもしょうがないので、新人賞部門のノミネート予想、ロディ・リッチに差し替えて、サマー・ウォーカーにさせて下さい。アルバム『Over It』がBillboard 200で初登場2位と、今年初頭に一躍シーンに躍り出た女性R&Bシンガーソングライター、アッシャーとの絡みが素晴らしい「Come Thru」など90年代R&Bマナーの楽曲群が素敵でした。

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3. 最優秀レコード部門(Record Of The Year)ノミネート予想

さて今回のグラミーの焦点は「テイラーがどれくらいノミネートされてどれくらい取るか」「BTSはどうなる」「ポップ・スモークの扱いはどうなる」「うんざりするくらいチャート上位を独占したザ・ウィークンドはどうなる」「去年集計期間終了後に爆発的に売れたポスティはどうなる」といったあたりに集約されるんじゃないかと思ってます。そうなってくると、自ずとこのROYのカテゴリーも決まってくるんじゃないかというのが見立て。ではノミネーション予想、行ってみましょう。

Dynamite - BTS

自らのシングル(ちなみにシングルのリリース、対象期間締め切り直前の8/21でした)とアルバムを1位に送り込むだけでなく、今年後半、ジョーシュ685ジェイソン・デルーロの「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」にBTSフィーチャリングのリミックス・バージョンが追加された瞬間に8位→1位になるなど、アーティストパワー全開だったBTSアカデミーのダイバーシティ重視の方針にもピッタリだし、このカテゴリーには入ってくるでしょうなあ。

WAP - Cardi B Featuring Megan Thee Stallion

WAPが何の略なのか、ということが判るとこの曲のアッケラカーンとした健康的なお下劣さ(変な表現だな)が判ると思うけど、このコロナ禍の下でこの曲に大いに笑って、スカッとした人は多かったんだろうなあと思う。この二人のコラボもお互いが惹きつけられるように話がまとまって、あっという間にトラックができたらしく、二人とも思いっきり楽しんでるのが判るし、だからこれだけの大ヒット(4週全米1位)になったんだろうなって思う。個人的には正直どーでもいい曲なんだけど、まあROYにはノミネートされてくるだろうね。これも8月のリリース。

The Bigger Picture - Lil Baby

将来2020年を歴史的に振り返る時に、コロナの年、トランプがバイデンに負けた年、ということと同等、いやそれ以上に「Black Lives Matter」運動で全米が揺れた年、という説明がなされるだろうな。それくらいジョージ・フロイド事件から始まったこのムーヴメントは2020年をいろんな意味で象徴するものになったわけでして。トランプバイデンに負けた大きな理由の一つでもあるわけだし。そしてそれを正面から題材にしたリル・ベイビーのこの曲は、ある意味2年前のチャイルディッシュ・ガンビーノの「This Is America」を彷彿とさせるんですよね。いやもっと直接的かも。だってこの曲はジョージ・フロイド事件を目の当たりにして怒り、混乱しているリル・ベイビーの感情を抑えたようなフローがかなり印象的な曲だから。リベラルな音楽業界とグラミーを仕切るアカデミーが、この曲を今年を象徴する曲の一つに選ばれないわけがない、というのは多分的はずれな見立てではないと思うのだけどどうだろうか。

What You Know About Love - Pop Smoke

ポップが今年のグラミーで焦点の一つであることは既に新人部門のコメントで述べた通り。なのでROYでも必ずノミネートされるんじゃないか、と思うので、彼の『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』の中で、ラップというよりは歌うようにフロウを聴かせてくれるこのナンバーを予想に挙げときます。

Circles - Post Malone

去年のグラミーの対象期間が8末で締まった時から、9月に入ってすぐリリースされたアルバム『Hollywood's Bleeding』とこのシングルは絶対来年のグラミーの主要部門に来るなあ、と確信してた。この曲はそれまで「聴きやすいトラップ」楽曲をヒットさせてきたポスティが、一転、素晴らしくシンプルでストレートなポップ・ナンバーをやってみせた、というのが個人的には秀逸だなあ、と思った次第。またノミネートが発表されたら受賞予想をポストしますが、めでたくこの「Circles」がノミネートされたら、多分最低でも対抗○は付けると思う。それくらいの個人的お気に入り(先週末の金曜日の久しぶりのDJギグでもこの曲回しましたw)。

The Box - Roddy Ricch

新人賞部門ノミネート予想でも触れた通り、今年のブレイクアウト・アーティストとしては5本の指には入りそうなロディ・リッチのこの大ヒット曲も、ROYの候補としてはかなりありそうです。Hot 100で11週1位だけではなく、R&B/ヒップホップ・ソングチャートでも12週1位、ラップソング・チャートでは14週1位といずれも2020年のそれぞれのチャートで最長不倒記録を樹立。名実ともに今年を代表する1曲の一つだけに、この部門でもかなり強力なんじゃないかと思いますね。

Cardigan - Taylor Swift

さあいよいよ出てきたテイラー・スウィフト。今回のグラミーでは彼女の『folklore』かなりメインの台風の目になることはまあ間違いないでしょう。ウィズ・コロナ時代を象徴するかのような、インディ・フォークとエレクトロのそこはかとない雰囲気とドリーミーなテイラーのボーカル、そして思索的な歌詞を載せた楽曲が、コロナ籠りの音楽ファンの気持ちに寄り添ったというのも大きいと思いますね。その中でROY候補というと、『Shake It Off』(2014)以来彼女にとって2曲めのHot 100初登場1位を決めたこの曲ですかね。また詳しくはアルバム部門ノミネーション予想のところで。

Blinding Lights - The Weeknd

ザ・ウィークンドも2020年は大いに売れた1年でした。去年の11月末にこの曲と「Heartless」が同時に先行シングルとしてリリース。この曲は11位初登場の後チャート上で下降線をたどった一方、「Heartless」の方は32位初登場→1位とはなばなしいチャートアクションで、改めてザ・ウィークンドの人気のほどを見せたわけですが、3月にこの2曲を含むアルバム『After Hours』がリリースされるやBillboard 200で初登場1位の後4週連続1位をキープ(それまでの2020年の最長記録、8月にテイラーに更新されますが)。するとそれに煽られるかのようにこの曲がHot 100を再上昇、4月から5月にかけて通算4週1位をマークするという大ヒットになったのでした。80年代の打ち込みブラコン・ダンス・チューンのような趣きのこの曲、その後もチャートでの存在感を維持し続けて、ラジオ・ソング・チャート(昔のHot 100エアプレイチャート)では23週1位、ホットR&Bソング・チャートに至っては、途中ドジャ・キャットの「Say So」に間を3週抜かれたものの、今年の4月から今週に至るまで通算34週1位を独走しているというロング&メガ・ヒットになっています。自分はウィークンドの才能は認めるものの、この前のアルバムくらいから彼が出てきたばかりの頃に比べて、音作りが「狙いすぎ」に聴こえてしまうのがちょっとダメで、この曲の血みどろのPVの悪趣味さとかもあってどうもこの曲苦手なのですが、延々とR&Bソング・チャート1位ってのもこの曲がいやんなる要因なんですよねえ。そこまでいい曲かよって。でもまあ今年を代表する曲の一つであることは間違いないので、まあこれも当然ノミネーションには入ってくるでしょう。

これ以外に候補になりそうだな、と思ったのはドジャ・キャットSay So」、トーンズ&Iの「Dance Monkey」、ハリー・スタイルズAdore You」、ジュースWRLDの「Righteous」あたり。このあたりが上記のいずれかと入れ替わっても、全くおかしくないと思います。

ということで第63回主要4部門ノミネーション予想パート1,いかがでしたか?残りのSOYとアルバム部門のノミネーション予想も今週中にはポストしますのでお楽しみに。

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