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今週の全米アルバムチャート事情 #145- 2022/8/20付

日本はこの週末お盆でしたが、アメリカでは17歳のアマチュア女子ゴルファー、馬場咲希さんが全米女子アマ選手権で日本人では何と37年ぶりに優勝、それもブッチギリの優勝を決めて、自分は週末から月曜日、TVに釘付けでした!実は自分のゴルフスクールのコーチが彼女と交流があるということですごく身近に感じながら応援してました。こういうことがあると、猛暑続きの毎日でも元気が出ますよね。既に立秋が過ぎましたが、まだまだ暑いのでみなさんもお体に気を付けて。

"Un Verano Sin Ti" by Bad Bunny

さて今週8月20日付Billboard 200、全米アルバムチャートの1位、先週の予想ではビーエムの一騎打ち、って言ってたんですが、蓋を開けてみたらえ〜〜!という結果で何とバッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』が先週の2位から何とポイントを伸ばして!108,800ポイントと再び10万ポイント台に復帰して3回目の返り咲き、通算8週目の1位を取っちゃったんですよ

何で今更ポイント増やしてんの?と思ったんですが実は今回の集計期間にCDがリリースされて、実売もこれまで最高の6,000枚を達成したのが今週のポイントアップの原動力のようです。え?ビヨンセはどうしたの?というあなた。ビヨンセの『Renaissance』、先週33万ポイントだったんで半分減らしても16万ポイントで十分首位あるよね、ということで先週の予想だったんですが今週何と一気に73%ポイント減で89,000ポイント、3位に落ちてしまってます。ということはストリーミングも今週一気に落ちてるということで、シングル「Break My Soul」は今週もHot 100の1位をキープしてるだけに、やや不可解ですねえ。

"The Last Slimeto" by YoungBoy Never Broke Again

そして今週2位は、先週トップ10入りを予想していたヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン何と1位のバッド・バニーとわずか400ポイント差であともう少しで1位だった4作目のアルバム『The Last Slimeto』で初登場してました!ポイント数108,400ポイント(うち実売4,600枚なんで、普通ほとんどストリーミングの彼にしてはかなり今回売ってます)という近年希に見るデッドヒートだったこの1位争い、バッド・バニーがこのタイミングでCDリリースしていなければ間違いなくYBNBAの1位でしたね。乗ってるヤツはタイミングも味方に付けるということでしょう。

しかし彼の多作さは相変わらずで、これでこの1年で5作目のリリースで、1枚を除いては全てトップ10で、『Sincerely, Kentrell』(2021)が1位、ミックステープの『Colors』(2022)と今回の『The Last Slimeto』が2位という強さです。まあ一つには一作ごとのトラック数がかなり多く、『Sincererly, Kentrell』は21トラック、『Colors』が19トラック、今回のアルバムは何と30トラックということで、ストリーミング主体のヒップホップ・アーティストに取って有利にポイントが稼げる構造になっていることも無視できない要因ですね。いつものようにエモっぽいゆるめのトラップ中心のサウンドで、ケラーニ、ロッド・ウェイヴ、クウェイヴォあたりの手堅いゲストで固めてるこの今回のアルバムでアトランティックとの契約を最後にするなんてことを言ってるYBNBA、レーベルで争奪選が起きそうですね。

"Curtain Call 2" by Eminem

先週ビーと1位を争うのでは、なーんて言ってたエミネムのベスト盤『Curtain Call 2』は意外と振るわず43,000ポイント(うち実売18,000枚)で6位初登場。実は先週予想した後にネットでの売上予想なんかを見てたら「今回は10万は無理で、4〜5万ポイントで5位がいいところでは」というコメントを見かけたのですが、正にその予想が正しかったようです。何とか実売枚数では今週アルバムセールス・チャート1位は確保したようですが。

2009年の『Relapse』以降のアルバムをカバーする全34トラック収録、うち3曲は新曲とヒップホップファンが喜んでストリーミングしてガーンとポイントを稼ぎそうなもんですが、蓋を開けるとストリーミング・ポイントが3,519万回オンデマンド・ストリーミング相当と、ヒップホップにしてはかなりショボいポイント。前回のベスト盤『Curtain Call』が出た2005年には40万ポイント以上稼いでましたが、この10年くらいの間にエミネムも「ベスト盤でも売れる」アーティストから「ベスト盤だとオリジナルアルバムを買った・聴いたファンは飛びつかない」アーティストになったということなんでしょうかね。今回収録の新曲3曲も、いずれもHot 100入りしてないようですし。今やエムも「ワン・アンド・オンリー」ではなく「ワン・オブ・ゼム」になってしまったんでしょうか。

"Funk Wav Bounces Vol. 2" by Calvin Harris

今週のトップ10内の初登場はこの2枚。圏外11位から100位までも初登場は3枚のみと今週は先週と打って変わってやや静かな週です。その中で一番人気だったのは、17位に初登場してきた、カルヴィン・ハリスの2017年のボリューム1に続くシリーズ第2弾、通算6作目のアルバム『Funk Wav Bounces Vol. 2』。

前回は2位に初登場、全英1位も取ったファレル・ウィリアムス、ケイティ・ペリー、ビッグ・ショーンをフィーチャーした「Feels」(全米20位)などのヒットを飛ばして大層勢いあったんですが、今回もジャスティン・ティンバレイクやらホールジーやらファレルやらスヌープやらバスタやらと、相変わらず豪華ゲスト陣を配するも、先行シングルのデュア・リパヤング・サグをフィーチャーした「Potion」(全米71位)をはじめ未だに目立ったヒットも出ず、順位もこのくらい。ちょっとこのDJフィーチャリング有名アーティスト、というフォーマットもやや飽きられ始めているのかもしれません。

"All 4 Nothing" by Lauv

一気にどーんと下がってその次は82位初登場、2017年に「I Like Me Better」(全米27位)のスマッシュヒットでブレイクした、サンフランシスコ出身の今時エレクトロ・ポップ・シンガーソングライターのラウヴ(本名:アリ・スタプランズ・レフ)のセカンド・アルバム『All 4 Nothing』が入って来てます。

前作のファーストでは、アレッシア・カーラとかアン・マリーとか僕の好きなLANYとか、果てはBTSとコラボした曲なんか満載で、いかにも今風エレクトロ・ポップ・シンガーという感じでしたが、今回も基本その線は大きく変わっていない模様。今回もリリース前にエリー・ゴールディングやこの間来日したコナン・グレイとかとコラボしたりしてたようですが、今回のアルバムは豪華ゲストのギミックは敢えて排して、基本ピンで頑張ってるようですね。シングルの「26」や「Kids Are Born Stars」なんかを始め、今回チャートの順位はいまいちですが、全体どの楽曲もポジティブなヴァイブ満点の楽しいポップ・チューン満載で最近なかなか気に入って聴いてます。

"Livin' My Best Life" by Dylan Scott

今週最後の初登場は、93位に入って来たカントリー・ポップ・シンガー、ディラン・スコットのセカンド・アルバム『Livin’ My Best Life』。シングルの「New Truck」がHot 100では61位ですが、カントリーのエアプレー・チャートでは先週1位獲得して、まずまずの発進状況のようです。

ファースト・アルバム『Dylan Scott』からのシングル「My Girl」(カントリー3位、Hot 100 39位)でブレイクした南部はルイジアナ州出身の今年31歳のシンガーですが、スタイル的にはちょうどネオトラディショナルカントリーの香りのするポップ・カントリーで、今大人気のルーク・コムズあたりとよく似たスタイルなんで、まあ、全米のカントリー・オーディエンスには受けるタイプだと思うのですが、今一つ地味な印象あり。何かをきっかけに大きくブレイクするかもしれません。カントリー好きにはお勧めです。

ということで今週の100位までの初登場は都合5作。あっと驚くバッド・バニーの1位復活があった今週のトップ10、おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (2) (14) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <108,800 pt/6,000枚>
*2 (-) (1) The Last Slimeto - YoungBoy Never Broke Again <108,400 pt/4,600枚>
3 (1) (2) Renaissance - Beyonce <89,000 pt/13,078枚*>
4 (4) (83) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <49,000 pt/1,134枚*>
5 (5) (12) Harry’s House ▲ - Harry Styles <43,000 pt/9,034枚*>
*6 (-) (1) Curtain Call 2 - Eminem <43,000 pt/18,000枚>
7 (9) (15) I Never Liked You ● - Future <29,000 pt/103枚*>
8 (10) (8) Honestly, Nevermind - Drake <26,000 pt/173枚*>
9 (14) (64) Sour ▲3 - Olivia Rodrigo <25,000 pt/4,330枚*>
10 (13) (22) 7220 ● - Lil Durk <24,000 pt/29枚*>

お盆明け、今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。さあここでいつも恒例の来週の1位予想ですが、今週の展開があまりにも意外だったんでちょっとここのところ予想に自信がなくなってきたところ。来週のチャートの集計対象期間は8/12~18ですが、これはかなり熾烈なヒップホップ勢同士のバトルになりそう。今週末サマソニで来日してるミーガン・ザ・スタリオンロッド・ウェイヴの一騎打ちの様相で、多分勢いからいって若干ミーガンに分があるんじゃないかと思ってます。おそらく10万ポイントは叩き出してくると思うので、バッド・バニーは超えるでしょう(笑)。あとトップ10にきそうなのが、前作コケたアリシア・キーズ、まだ頑張ってたかというザ・ゲームあたりでしょうか。ではまた来週。

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