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【恒例新年企画#3】Boonzzyの第63回グラミー賞大予想#5〜カントリー部門

さてこのBoonzzyのグラミー賞大予想もシリーズ5本目、今回はカントリー部門の予想ですが、それぞれのカテゴリーでいろんな意味で新しい流れを感じるノミネーションになっています。見ていきましょう。

22.最優秀カントリー・ソロ・パフォーマンス部門

  Stick That In Your Country Song - Eric Church
  Who You Thought I Was - Brandy Clark
✗ When My Amy Prays - Vince Gill(受賞)
○ Black Like Me - Mickey Guyton
◎ Bluebird - Miranda Lambert

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ここ数年グラミーのカントリー部門を予想する際には、前年に開催されたCMA(カントリーミュージック協会)アウォードや、ACM(アカデミー・オブ・カントリーミュージック)アウォードの結果を参考にしてきたのですが、数年前からそれがあまり機能しなくなってきていました。そもそもACMは前年4月開催の賞で、対象作品が1年ずれるという問題がありますし、CMAは前年11月開催で、グラミー自体が一昨年から対象期間をかなり前倒しにしたこともあり対象作品はほぼ同じのはずなのですが、選ばれる作品やアーティストがかなりズレ始めてきたことは、去年までのBoonzzyのブログでグラミー賞予想を読んで頂いていた方はご存知のとおり。例えば、2019年のCMAで男性ボーカリスト賞と最優秀ソング賞を取ったルーク・コムズや最優秀アルバムを取ったマレン・モリスなんか、去年のグラミーではこの部門にノミネートすらされず、受賞したのはなぜかタニヤ・タッカーとポップ寄りのダン+シェイ。2020年のCMAで2年連続男性ボーカリスト受賞して最優秀アルバムも手にしたルーク・コムズ今年もノミネート一切なし、といった状況です。

一方、昨年のNARAS代表の交代と新任の代表、デボラ・デューガンの解任劇の影響もあってか、今年は特に各部門のノミネーションのパターンが従来から大きく多様性(人種・性別・スタイルなど)を重視した方向にシフトして(主要部門は特にその傾向大ですが、後ほど)、このカントリー部門ではそれがかなり顕著に出ているんですね。その最たるものがこの部門で史上初の黒人女性カントリー・シンガーのノミニーとなった、ミッキー・ガイトンのノミネート。彼女は2016年のACMの新人女性シンガー部門にノミネートされた以外は、こうしたアウォードものに登場どころか、商業的にもブレイクアウトしているとは言いがたい状況でした(これまでの最大ヒットが2015年カントリー・エアプレイ・チャート最高位34位の「Better Than You Left Me」、アルバムに至ってはチャートインしてません)。そのミッキーが、今回「Black Like Me」(シングルカットされるもチャートインせず)でこの部門にノミネートされているのはこの多様化推進の流れが大きく背中を押したに違いありません。でもね、この楽曲といい、ミッキーの歌唱といい、かなりいけるんですよ。ちょっとあの「See You Again」を思わせるようなスケールの大きい楽曲で。だから、多様化だけではなく、ちゃんと実力を評価して今回のノミネートに至ったと考えてあげたいですね。そういったこともあって今回彼女に対抗○を付けてみました。もし彼女が受賞、てなことになったら大騒ぎでしょうね。史上初ですから。

本命◎は、やはり貫禄のミランダ・ランバート。実力的にも、楽曲的にも順当に行けば彼女が受賞多分間違いないでしょう。穴×は、最近イーグルスで内職してるヴィンス・ギルが、奥さんのエイミー・グラントのクリスチャン・ミュージックへの思いを切々と歌った「When My Amy Prays(僕のエイミーが祈りを捧げる時)」に進呈しておきます。

23.最優秀カントリー・デュオ/グループ・パフォーマンス部門

  All Night - Brothers Osborne
◎ 10,000 Hours - Dan + Shay & Justin Bieber(受賞)
  Ocean - Lady A
○ Sugar Coat - Little Big Town
✗ Some People Do - Old Dominion

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さてこの部門、従来強かったレディ・アンティベラム改めレディA(過去ノミネート4回、受賞2回)とリトル・ビッグ・タウン(直近4年連続ノミネート、過去ノミネート9回、受賞3回)がどーんと存在感たっぷりにノミネートされてますが、ご存知の方も多いように、この部門は去年「Speechless」、一昨年「Tequila」でダン+シェイが2年連続受賞していて、ここのところ、彼らの独壇場部門になってます。そして今年はジャスティン・ビーバーとコラボしたポップにもクロスオーバーしたヒット曲「10,000 Hours」(2019年Hot 100最高位4位)で先の2組を上回る存在感でのノミネート。これはもう彼らに本命◎付けるしかないでしょうね

対抗○はレディAリトル・ビッグ・タウンに付けようと思い、両アーティストの曲を聴き比べたのですが、楽曲のクオリティについてはコード進行やメロディ展開などにもさりげない工夫が施されていて、メッセージ的にも「いろんな現状への不満や自由への渇望を内に秘めながら、表面的には砂糖菓子のように取り繕うしかない女性の葛藤」を表現している、リトル・ビッグ・タウンの「Sugar Coat」がPVもいいなあ、と思うのでこちらに。そして穴×は、レディAとも思いましたが、次の最優秀カントリー・ソング部門にもノミネートされている、ナッシュヴィル出身の5人組、オールド・ドミニオンのこちらも趣味のいいポップ・センス溢れるメロディ展開に好感が持てる「Some People Do」に付けておきます。

24.最優秀カントリー・ソング部門(作者に与えられる賞)

✗ Bluebird - Miranda Lambert (Luke Dick, Natalie Hemby & Miranda Lambert)
◎ The Bones - Maren Morris (Maren Morris, Jimmy Robbins & Laura Veltz)
  
Crowded Table - The Highwomen (Brandi Carlile, Natalie Hemby & Lori McKenna)(受賞)
○ More Hearts Than Mine - Ingrid Andress (Ingrid Andress, Sam Ellis & Derrick Southerland)
  Some People Do - Old Dominion (Jesse Frasure, Shane McAnally, Matthew Ramsey & Thomas Rhett)

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さて、ここでようやくマレン・モリスの「The Bones」登場。昨年11月のシリーズ投稿「グラミー賞ノミネーション予想」を読んで頂いた方はご存知のように、自分はこの曲とギャビー・バレットの「I Hope」の2曲は主要4部門のソング・オブ・ジ・イヤーにノミネート間違いなし、と予想してたんですが、蓋を開けて見たら何とどちらもSOYには影も形もなしマレンのこの曲はこのカントリー・ソング部門のみのノミネート、そしてギャビーに至ってはザ・ウィークンド同様ガン無視、ひどい!という結果でした。

自分の予想にはそれなりに根拠もあり、マレンのこの曲は昨年のCMAで最優秀ソングと最優秀シングルのW受賞ギャビーの曲も最優秀シングルにノミネートされてたんですよね。マレンについては、一昨年61回グラミーでは、ゼッド、グレイとコラボしてパワフルなボーカルを聴かせてくれていた「The Middle」で主要部門のレコード・オブ・ジ・イヤーにもノミネートされてたし、グラミー好みのアーティストだと思ってたんですが。曲の内容等等については、上記の11月の記事に詳しく書いてますのでそちらを見て頂きたいのですが、せっかく何とかこのソング部門にはノミネートされたんだし、ここは受賞してもらうしかない、ということで本命◎はマレンですね。

対抗○ですが、ここはミランダかな、とも思ったんですが、今回主要部門の新人賞部門にもノミネートされている、コロラド出身のシンガーソングライター、イングリッド・アンドレスのこの曲、とってもいいんでこちらに付けました。29歳とやや遅咲きのデビューを去年果たしたイングリッドのこの曲、ケイシー・マスグレイヴスケルシー・バレリーニといった新世代のカントリー・シンガーソングライター達同様、メインストリーム・ポップ感覚が一杯なのと、何と言っても歌詞がいい。彼氏を家に連れてきて両親に紹介しようとしてる女の子が主人公なのですが、「ママに引き合わせるときは先に断っておいた方がいいわね/ママはあたしよりよっぽど惚れっぽいのよ/パパはきっとあなたの車のタイヤをチェックして/ウイスキーのオンザロックを飲ましてくれるし/釣りにも連れてってくれるけどきっとあなたのことは気に入らないふりをするわ/もしあたし達が別れてもあたしは平気だけど/あたしだけじゃなくパパもママもきっとガッカリするわね」ってなかなか泣かせるじゃないですか。年頃の娘を持つ身としては結構胸に響いたこの歌、ホロリときますな。そして穴×は貫禄のミランダの「Bluebird」に。

25.最優秀カントリー・アルバム部門

✗ Lady Like - Ingrid Andress
○ Your Life Is A Record - Brandy Clark
◎ Wildcard - Miranda Lambert(受賞)

  Nightfall - Little Big Town
  Never Will - Ashley McBryde

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さてカントリー部門最後のカテゴリーは最優秀アルバム部門。ここまで、ソロ部門では史上初の黒人女性アーティストのミッキー・ガイトンがノミネートされるなど、グラミー賞アカデミー(NARAS)の多様性重視の観点が強く反映されたノミネーションになっているとお話しましたが、もう一つそういった観点が今回強く反映されているのがこのアルバム部門なんです。え?何が?って?実は今回この部門創設以来、史上初めてノミニーが全て女性アーティスト(または女性がメインボーカルのアーティスト)で占められたんです!もともとカントリー・ミュージックの世界は男の世界を歌う男性アーティストが強い一方、ロレッタ・リンジューン・カーター、ドリー・パートン、エミルー・ハリスなどの例を挙げるまでもなく、古くから女性アーティストの活躍も著しいジャンルではあったのですが(この部門も過去26回中16回は女性受賞)、この部門のノミネーションが女性で埋め尽くされたのは今回が初めてなんです。そういう目で見ると、今回カントリー部門全体がどちらかというと女性優勢になっていることにも気が付きますし、何でCMAACMであれだけ圧倒的なルーク・コムズや、今正に全米アルバムチャートのトップを占めているモーガン・ウォレンなんかがまったくノミネートかすってもいない理由も想像がつきますよね。

で、その女性優位のアルバム部門、やはり貫禄たっぷりの存在感を放っているのはミランダ・ランバートの『Wildcard』。彼女、前の旦那のブレイク・シェルトンと2015年に別れて以来、何人かの男性と浮き名を流した後に2019年にはNY市警の警官と再婚する一方、傑作の呼び声高かった『The Weight Of These Wings』(2016)、そしてこの『Wildcard』とソリッドな作品を着実に発表。本命◎はまず間違いないところでしょう。それに対抗○するのは、一昨年61回のグラミー賞を主要部門も含めて席巻したケイシー・マスグレイヴスの初期のブレイク曲「Follow Your Arrow」の作者で知られるブランディ・クラークのアルバムでしょうか。この前の部門で注目していたイングリッド・アンドレスのデビューアルバム『Lady Like』もなかなか素晴らしいアルバムなんですが、ここは穴×ということで。

ここまで快調に来ましたBoonzzyのグラミー賞大予想、次回は昨年から新たに予想を始めたジャズ部門に移ります。お楽しみに。

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