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今週の全米No.1アルバム事情 #19 - 2020/3/14付

コロナで気を取られてる間に急に昨夜から起きた症状の関係で今日も明日も病院で検査を受ける羽目に(あ、コロナとは関係ないです。念の為)。皆さんも呉々もコロナだけでなくお体全般ご自愛下さい。

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さてさすがのBTSも2週目は80%ポイント減で3位にダウン、代わって1位初登場したのは、先週予想でも名前出してたリル・ベイビーの2作目のフルアルバム『My Turn』。2018年にデビュー作『Harder Than Ever』(3位)、ミックステープ『Street Gossip』(2位)、ガンナとの『Drip Harder』(4位)と立て続けのトップ10後の待望の1位ということで。先週もコメントしたけど、こういう商いの薄い週はストリーミングで稼げるヒップホップ勢が強くなる傾向があるけど、正しく今週がそれで、197,000 EAUsのうち実売は1,000枚弱でオンデマンドストリーミングポイントが184,000(2.62億回相当)という最近のヒップホップの典型的パターン。そしてこれが昨年9月のポスティの『Hollywood’s Bleeding』の3.65億回ストリーミング以来の最高ストリーミング記録(つまり今年最高)というから、リル・ベイビーの今回の人気は正直言って予想以上。
既に「Woah」と「Sum 2 Prove」の2曲の最高位16位のヒットが先行してるというのもこのストリーミング人気のバックにあったのは間違いないところ。確かに最近お決まりのトラップで新しさはないけど、今的には音はキャッチーといえるかも。

そのリル・ベイビーと僅差の179,000 EAUs(実売35,000枚)で2位に初登場したのは、何とここ数年のラテンブームの中で着実に人気を積み重ねてきた感のある、プエルトリコのレガトン・シンガー、バッド・バニーの『YHLQMDLG』。タイトルはスペイン語で「Yo hago lo que me de la gana(俺様は何だって好きなことができるんだ)」の頭文字らしいけど、いかにもラテン系っぽいドヤ顔タイトルだな(笑)。バッド・バニーのブレイクスルーは、何と言ってもカーディBの「I Like It」(2018年1位)にJバルヴィン共々フィーチャーされたこと。続いてドレイクをフィーチャーした「MIA」(同年5位)の大ヒットで完全にメインストリームに名を知られた。今回の2位初登場にはちょっと驚いたけど、昨年末にはこのアルバムからの先行シングル「Vete」(33位)もヒットして地ならしは万全ということだったのかも。

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そしてこのアルバム、全ての楽曲がスペイン語のアルバムとしてはBillboard 200チャート史上最高ランキングの記録を今回樹立。これまでの記録は2005年、シャキーラの『Fijación Oral: Vol. 1』と2006年、メキシコ出身のポップ・ロック・バンド、マナの『Amar es Combatir』の4位というから、ある意味先週のBTSと同様、ラテン・ミュージック・コミュニティにとっては歴史的なヒットになったわけです。

さて今週は盛り沢山です。続いて4位初登場は、ジェイムス・テイラーがアメリカン・スタンダード・ソングブックのカバーに取り組んだその名も『American Standard』。82,000 EAUs(実売81,000枚)と、実売では今週トップのこのアルバムも今週記録樹立。ジェイムス・テイラーは、70年代以来80年代、90年代、00年代、10年代と連続してアルバムチャートの連続デケイドトップ10入りしてきたアーティスト達の中で、20年代にトップ10アルバムを記録した最初のアーティストになったのです

これまで5デケイド連続でトップ10アルバムを記録してるアーティストは彼の他にクラプトン、ニール・ダイヤモンド、マイケル・ジャクソン、ポール・マッカートニー、ベット・ミドラー、トム・ペティ、ストーンズ、サンタナ、ボブ・シーガー、ブルース・スプリングスティーン、バーブラそしてヴァン・ヘイレンという蒼々たる面々で、彼らも早々に続くでしょうが、特筆すべきは、ストーンズ、サンタナ、バーブラは60年代から記録をスタートさせてますので、20年代にトップ10を決めると、7デケイド連続、ということになります。いや全くこの人達今何歳なんだって(笑)。

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今週もう一つのサプライズは7位に59,000 EAUs(実売4,000枚)で初登場したシカゴ出身のラッパー、Gハーボの『PTSD』。彼はこれまで過去3枚、このBillboard 200チャートのトップ50にアルバムを送りこんできてますが、他のヒップホップ・アーティストと違ってこれまでHot 100ヒットが皆無なんです。ジュースWRLDチャンス・ザ・ラッパーリル・ウジ・ヴァートとどんだけ豪華なんだよってくらい豪華にフィーチャリングのアルバム・タイトル・ナンバーがおそらく話題を呼んでるのかな、とも思うのですが。あ、音は毎度お馴染みのトラップですね。

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そして今週最後のトップ10初登場は、アーティスト名が絵に描いたようなメタル系(笑)のファイヴ・フィンガー・デス・パンチの『F8』が8位に。彼ら、最近メインストリーム・ロック・ソング・チャートの1位の常連で、このアルバムからも「Inside Out」が既に同チャートの1位を4週マーク中。スタイルとしてはメタリカをちょっとポップにして、叙情性を強くしたような感じで、いかにもメタルファンには人気を呼びそうなバンドです。日本でも人気があってもおかしくないと思うけどどうなんでしょう。彼らもこのアルバムが既に7枚目のトップ10とベテランの域に達してるし、直近5作が全てトップ5内初登場だったので今回1位も充分にあると踏んでたんですが、蓋を開けてみると55,000 EAUs(実売45,000枚)と恐らくJTに次ぐ売上なんですが、このタイプのアーティストとしてはストリーミングが伸びず、この順位に甘んじてしまいました。

さて来週の1位予想ですが、3/6〜3/12のリリース・ラインアップはヒップホップ系がてんこ盛りで、来週も1位はヒップホップ勢の争いになりそうですが、その中で頭一つ抜けてるのがやっぱりリル・ウジ・ヴァート。これに初アルバムのリリースで挑みそうなのが、ラウヴと最近レーベル相手に訴訟起こして話題満点のミーガン・ジー・スタリオンあたりか。穴としては3枚目のアルバムをドロップする日系の血が入ってるR&Bシンガー、ジェネ・アイコ。僕個人的に好きなもんで(^^)。ロックファン的にはノエル・ギャラガーとかも出るんですけどね。USだとキツいでしょうなあ。ではまた来週。

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