今週の全米アルバムチャート事情 #127- 2022/4/16付
MLBは開幕したものの大谷選手のスカッとするホームランはまだ見れず(大谷選手とシンダーガードの好投はさすがでしたが)、マスターズ連覇を狙った松山選手も残念ながら3日目失速と、日本人選手の活躍を心待ちにしているオヤジとしてはなかなかフラストレーションがたまる一週間でしたが、カブスに行った鈴木誠也選手が開幕4試合でホームラン3本と既に着実に実績を重ねているのは頼もしい限り。そして日曜日のロッテ佐々木投手のパーフェクトゲーム(しかも19三振)にはぶったまげました。今年も野球は盛り上がりそうです。一方ウクライナ情勢は悲惨さを増しつつある状況に本当に胸が痛みます。早く国際社会が団結して停戦協議をプッシュしなきゃ!一日も早く停戦が実現しますように。
さて気を取り直し、今週の全米アルバムチャート、4月16日付のBillboard 200を制したのは、97,500ポイント(うち実売は82,500枚で今週ぶっちぎりのアルバムセールス1位)という立派な成績で2006年の『Stadium Arcadium』以来16年ぶりにレッチリの新作『Unlimited Love』が見事ナンバーワン初登場を決めてます。既にロック・ファンの間では話題になっていますが、ギターのジョン・フルシアンテが最後にレッチリにいたのがその『Stadium Arcadium』だったので、今回満を持してのバンド復帰がこの結果の後押しになってるのは間違いないところ。やっぱみんなジョンのギターのレッチリが好きなんだなあ、と思いました。
そしてさっそく音を聴いてみると、余計なギミック一切なしのレッチリ一流の強力なファンク・グルーヴ満点の楽曲目白押し。既にロック・エアプレイチャートで8週首位をキープしている先行シングルの「Black Summer」はレッチリ得意の哀愁ファンク・バラードとでもいうべき曲で、ここでのジョンのギターが既にヤバいです。続く2曲「Here Ever After」「Aquatic Mouth Dance」ではうなるフリーのファンキー・ベースライン、ドカスカと腹の底に響くチャドのドラムスの二人がぶちかますリズムに乗って、アンソニーのボーカルとここでもうなるジョンのぶっといギターがうなるうなる。いやあ久々にカッコいいロック・アルバム聴いてる感じがしていいですねえ。
なんでもレッチリのメンバーは3/31にハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにスター・プレートが設置されて、先週4/7に同じハリウッドにあるレコ屋のアメーバ・ミュージックでイン・ストア・ライブを敢行したらしいです。アメーバ、僕もロスに行ったら必ずレコを掘りに行くレコ屋じゃないですか!見たかったなあ。そういえば先日第1回目のラインアップ発表があった今年のフジロック、初日のヘッドライナーがまだ発表されてないですが、ひょっとしてレッチリ、ってことあるんでしょうかね。期待したいところです。もう3日通し券、買いましたから(笑)。ちなみに先週のマシンガン・ケリーの1位に続いてロックのアルバムが2週連続1位というのは4年半前、2017年10月7日付と14日の週にフーファイの『Concrete And Gold』とキラーズの『Wonderful Wonderful』が連続1位を決めて以来。最近どうしてもヒップホップが強いからなあ。これをきっかけにロック勢も頑張って欲しいもんです。
今週のトップ10内初登場はこのレッチリのみですが、先週のグラミーでのパフォーマンスで今週1位に迫るのでは、と思っていたオリヴィア・ロドリゴは思ったよりポイント伸ばしてませんね。順位は先週と変わらず5位。一方今週7位には、先月6位に初登場してその後チャート下位に落ちていた、オレゴン州ポートランドのラッパー、イートの『2 Alive』が先週69位から一気に返り咲いてます。これはヒップホップ作品のおなじみのマーケティングで、ボートラ追加したデラックス・バージョンのリリースによるもの。今回オリジナル20曲に加えて9曲追加の『2 Alive (Geek Pack)』がリリースされ、これだけ曲数が多いとストリーミングのポイントでかなり稼いじゃうんですよね。そろそろストリーミングのチャートポイントに対する比重、少し下げてもいいんじゃないかしら。
一方11位以下100位までの圏外に目を向けると、グラミーの影響でジョン・バティーストの『We Are』が25位に再登場して一気に最高位を更新している(従来は86位、確か)以外は、初登場は今週も少なくわずか2枚。ただその2枚が11位と12位でトップ10をギリで逃してるのがちょっと可哀想な感じがします。まず11位は、J.コール率いるドリームヴィル・レーベル軍団が結集するレーベル・コンピ・シリーズ第4弾『DJ Drama & Dreamville Presents: D-Day: A Gangsta Grillz Mixtape』。このシリーズが始まった2014年1月はまだレーベル大将のJ. コール自身もまだブレイクして間がなかったので、シリーズ1作目は注目を集めてませんでしたが、その後J.コールがヒップホップ・シーンを代表する地位に昇り詰めたこともあって、前作の第3弾『Revenge Of The Dreamers III』(2019)は見事に全米ナンバーワンを達成。今回はJ.コールやR&Bシンガーのアリ・レノックス、ラッパーのバスやルート、JIDといった連中に加えて軍団以外の2チェインズやASAPファーグ、シェック・ウェスといった多彩なゲストをフィーチャーし、リル・ウジ・ヴァートやジャック・ハーロウらが所属するジェネレーション・ナウ・レーベルの創設者、DJドラマが2007年からやってる「Gangsta Grillz」というシリーズと合流したコラボ・ミックステープといった体裁を取ってます。
ざっと聴いたところ、基本トラップながら御大J.コールが入ってるトラックはなかなかの出来で特に「Freedom Of Speech」なんかはなかなかカッコええな、という一方、今ウクライナがあんな状況だし、今日のブルックリンでの事件なんかも考えると、正直冒頭の「Stick」での銃撃乱射SEとストリート・リアルな演出とひたすらフックをがなり立てるシェック・ウェスにはゲッソリくるところもあり。ラストでJ.コールがドレイクの『Ceritified Lover Boy』の曲のビートでフリースタイルする「Heaven’s EP」とかはニヤリとさせてくれるんですがね。まあこのシリーズのファンには満足の内容でしょう。そうでない人は聴くトラックを選んだ方がいいかも。
そして12位はトップ10にてっきり来るだろうと思ってたんですが、惜しくもトップ10外してしまったカントリーのトーマス・レットの6作目になる『Where We Started』。過去5年間のACM(アメリカン・カントリー・ミュージック)アウォードで、最優秀男性ボーカリストまたはエンターテイナー・オブ・ジ・イヤーを4回受賞して名実ともにカントリー界を背負って立つ男性シンガーである彼が今回タイトルも示すように、デビュー10年目である今年ある意味「初心に返って」作ったという作品。
ケイティ・ペリーとのデュエットによるタイトル・ナンバーに代表されるように、よりポップ寄りの楽曲も多い彼ですが、このアルバムでは実際に死刑囚たちを前にパフォーマンスして経験を元に書いた「Death Row」などカントリーの伝統を踏まえた心に響く曲もあったりして、実力派ここにあり、という感じを与えてくれます。前作『Country Again: Side A』(2021年10位)まで続いた5作連続トップ10は途切れてしまいましたが、今年後半にリリース予定の前作の続編『Country Again: Side B』では更に伝統的カントリー・ミュージックからのインスピレーションに基づくソリッドな楽曲を聴かせてくれるでしょうね。楽しみです。
ということで今週の初登場は以上。いつものようにトップ10のおさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。
*1 (-) (1) Unlimited Love - Red Hot Chili Peppers<97,500 pt/82,500枚>
2 (2) (4) 7220 - Lil Durk <51,000 pt/119枚*>
3 (3) (19) Encanto ▲ - Soundtrack <50,000 pt/6,283枚*>
4 (4) (65) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <44,500 pt/1,260枚*>
*5 (5) (46) Sour ▲3 - Olivia Rodrigo <40,000 pt/8,381枚*>
6 (6) (60) The Highlights - The Weeknd <34,000 pt/886枚*>
*7 (69) (7) 2 Alive - Yeat <31,500 pt/116枚*>
8 (7) (31) Certified Lover Boy - Drake <31,000 pt/58枚*>
9 (1) (2) Mainstream Sellout - Machine Gun Kelly <30,500 pt/4,725枚*>
*10 (9) (41) Planet Her - Doja Cat <30,000 pt/634枚*>
ということで今週の「DJ Boonzzyの全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。では最後にいつものように来週の1位予想。来週の対象期間は4/8-14ですが、カミラ・カベロやヒップホップの42ダッグ+ESTジーあたりがトップ10に来そうな中、来週の目玉はやはりジャック・ホワイト(元ホワイト・ストライプス)でしょう!過去3作連続ナンバーワンで、前々作の『Lazaretto』(2014)では1991年以来の週間ヴァイナル売上記録(40,000枚)を樹立してますから(ちなみに今週のレッチリは38,500枚で歴代2位の記録を樹立してます)かなり間違いなく1位来ると思います。そして3週連続ロック・アルバムが1位ということになると2007年10月にブルース・スプリングスティーンの『Magic』に挟まれてキッド・ロックの『Rock N Roll Jesus』が1位になってた以来、15年ぶりの快挙、ということになります。さてどうなりますか、また来週。
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