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【恒例新年企画#3】Boonzzyの第63回グラミー賞大予想#3〜R&B部門

フィル・スペクターが亡くなりましたね。いろんな思いをいろんな人が感じているとは思いますが、これもまた一つの時代の終わりを象徴しているような気がします。R.I.P....さて、続いてグラミー賞予想、R&B部門いってみます。

13.最優秀R&Bパフォーマンス部門

✗ Lightning & Thunder - Jhené Aiko Featuring John Legend
◎ Black Parade - Beyoncé(受賞)
○ All I Need - Jacob Collier Featuring Mahalia & Ty Dolla $ign

  Goat Head - Brittany Howard
  See Me - Emily King

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最後の主要4部門のところでも触れると思いますが、今年のビヨンセの「Black Parade」のノミネーションをどう読むか、というのは今年のグラミー予想のキーポイントの一つでしょうね。折からのBLM運動の全米的な盛り上がりにシンクロするように、出身地のテキサス州での奴隷制廃止記念日の6/19(「Juneteenth」と呼ばれてます)に突然リリースされたこの曲は、そのミニマルながらどす黒いビートに乗って、ビヨンセの舞い踊るようなボーカルがブラックであることの誇りとブラックの歴史に対する敬意、BLMとその抗議活動についてなど「ブラック・プライド」をこのタイミングに宣言するようなメッセージ的にはこれ以上今年を象徴する曲はないと言っていいそんな作品。そしてこの作品はここR&Bパフォーマンス部門だけでなく、R&Bソング部門、そして主要部門のROY、SOYでもノミネートされてるというのもこの曲の重要性を示してるように見えます。

この部門では、主要部門のアルバム部門ノミネートの、ジェネ・アイコジェイコブ・コリエーと激突してまして、ジェネ・アイコジョン・レジェンドとのデュエットはアルバム『Chilombo』を象徴するようなドリーミーな美しいバラードで、クインシー・ジョーンズ秘蔵っ子のジェイコブの曲はジェイコブのソウルフルなボーカルとフィーチャリングされてるマハリアの張りのあるボーカルのコラボが素敵なメロー・ファンク。普通であればどちらも本命付けていい出来だし、全体の中での存在感も十分なんですが、ここはやはりビヨンセに本命◎を付けざるを得ないなあ。あとの2つのどちらを上にするかは迷いましたが、アルバムがBillboard 200にチャートインしてないのに主要部門にノミネートされたというジェイコブ・コリエーの存在感と楽曲のカッコ良さに対抗○を付けました。自分の年間アルバムランキング3位に入れたジェネ・アイコの曲は残念ながら穴✗ですね。

14.最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス部門

 Sit On Down - The Baylor Project Featuring Jean Baylor & Marcus Baylor
◎ Wonder What She Thinks Of Me - Chloe X Halle

  Let Me Go - Mykal Kilgore
○ Anything For You - Ledisi(受賞)
  Distance - Yebba

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さて今回R&B勢でビヨンセほどではないにせよ、今年のR&B部門のノミネーション勢の中で一際存在感を見せてるのが、一昨年の第61回では新人賞部門にノミネートされていたクロエハリーベイリー姉妹によるデュオ・ユニット、クロエxハリー。彼女らを見出したのが他ならぬビヨンセであり、所属もビヨンセのレーベル、パークウッドということで、完全にビヨンセ一派であり、そういう意味でもビヨンセが主要部門も含めて全体に存在感を示している今回のグラミーではかなり強いことが予想されます。そして単に政治力だけでなく(笑)最優秀プログレッシヴR&Bアルバム部門にノミネートされている彼女らのアルバム『Ungodly Hour』はシーンからの評価も高い、しっかりした歌唱と今様の音像を持った楽曲がなかなかの結果を作り出してる作品。その中からの、香り立つようなスケールの大きいバラード曲がこのトラディショナルR&B部門にノミネートされてて、うーんこれは本命◎来るだろうなあ、という感触です。しかし彼女達のボーカルパフォーマンス、今回かなり成熟しているなあ。

それ以外のノミニーも、ややオルタナ・ソウルっぽい白人女性R&Bシンガーで、一昨年のこの部門でPJモートンの「How Deep Is Your Love」にフィーチャーされて既に受賞済のイェバ以外は、いずれ劣らずガッツリとしたパフォーマンスと「そうそう、これこれ!」とR&Bファンを唸らせるような、ど真ん中のソウル・チューンを聴かせてくれる連中ばかり。しかし今回は、過去R&Bの各部門で11回ノミネートされながら未冠の、いつのまにか大ベテランになっているレディシに取ってもらいたいなあ。この「Anything For You」も、70年代のメンフィス・ソウルを彷彿させるホントに素晴らしい曲だし歌唱なんですよ、これが。だから対抗○付けちゃう。そして穴✗は3年前の第60回でもこの部門ノミネートされてた、元フュージョン・バンド、イエロージャケッツのドラマーだったマーカスと、90年代R&Bデュオのジャネイの片割れだったジーンベイラー夫婦によるデュオ・ユニット、ベイラー・プロジェクトのこれも素敵なソウル・チューンに。

15.最優秀R&Bソング部門(作者に与えられる賞)

○ Better Than I Imagine - Robert Glasper Featuring H.E.R. & Meshell Ndegeocello (Robert Glasper, Meshell Ndegeocello & Gabriella Wilson)(受賞)
◎ Black Parade - Beyoncé (Denisia Andrews, Beyoncé, Stephen Bray, Shawn Carter, Brittany Coney, Derek James Dixie, Akil King, Kim "Kaydence" Krysiuk & Rickie "Caso" Tice)
 Collide - Tiana Major9 & EARTHGANG (Sam Barsh, Stacey Barthe, Sonyae Elise, Olu Fann, Akil King, Josh Lopez, Kaveh Rastegar & Benedetto Rotondi)
  Do It - Chloe X Halle (Chloe Bailey, Halle Bailey, Anton Kuhl, Victoria Monét, Scott Storch & Vincent Van Den Ende)
  Slow Down - Skip Marley & H.E.R. (Nasri Atweh, Badriia Bourelly, Skip Marley, Ryan Williamson & Gabriella Wilson)

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そしてここにもビヨンセがノミネート。楽曲の内容から言って、主要部門のSOY受賞は微妙でも、さすがにこのR&Bソング部門は無敵でしょう。従ってビヨンセが本命◎。そしてそのビヨンセ一派のクロエxハリーも今度は別の曲でノミネートされていて、普通であれば強いところでしょうが、本命◎がビヨンセなので、ここは横に置いといて、この部門でもう一つ気になるのがロバート・グラスパーミシェル・ンデゲオチェロH.E.R.というものすごくキャラの立ってるコラボによる「Better Than I Imagined」。こちらもBLMムーヴメントの真っ最中、昨年8月に急遽リリースされたシングルで、ロバグラおなじみのクールなR&Bジャズ音像とゆったりとしたビートに乗って、微妙にシラブル(音節)の途中で区切った歌い方が印象的なH.E.R.の歌声が耳に残る楽曲。これ、ビヨンセいなかったらダントツで本命付けるところだけど、残念ながら今回は対抗○ですねえ。

そしてこちらも世が世なら十分本命を狙えるほどの楽曲クオリティの高い「Collide」。この曲は、2019年の黒人カップルが主演のクライム・ロード・ムーヴィー『Queen & Slim』のサントラに収録されてた曲で、ドスン、ドスンと下腹に響くようなグルーヴを軽々としたティアナ・メジャー9のボーカルと、アースギャングの渋い男性ボーカルで聞かせる、なかなかの楽曲なんだけどここでは穴✗。いやあ今年のR&B部門のノミニー、どれもクオリティ高いなあ。

16.最優秀プログレッシヴR&Bアルバム部門

○ Chilombo - Jhené Aiko
◎ Ungodly Hour - Chloe X Halle

  Free Nationals - Free Nationales
✗ F*** Yo Feelings - Robert Glasper
  It Is What It Is - Thundercat(受賞)

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今年から、従来の部門名「アーバン・コンテンポラリー・アルバム」がステレオタイプでよろしくない、ということで「プログレッシブR&B」に部門名変更になったこの部門、プログレッシブってのもよーわかりませんが、まあトラディショナルじゃない音使いや楽曲、ってことなんでしょう。そしてここでも光ってるのは、再三登場してます、ビヨンセ一派のクロエxハリー。本当はここは自分の年間アルバムランキング3位のジェネ・アイコChilombo』の素晴らしい世界観と、赤裸々なエロティシズムに彩られためくるめく楽曲群にグラミー取らせたいところなんですが(日本人の血も入ってるというのもあるしね)、やはりここは政治力とアルバム自体の評価の両方でクロエxハリーが本命◎、ジェネ・アイコは残念ながら対抗○かなあ。

穴✗は、アンダーソン・パークのバックバンド、フリー・ナショナルズの気持ちのいいメロー・ファンク・ワールドや、ブンブンうなるベースと微妙に揺れ動く音像が気持ちいいサンダーキャットのアルバムもいいけど、ここはグラミーで実績のあるロバグラのアルバムに進呈します。

17.最優秀R&Bアルバム部門

  Happy 2 Be Here - Ant Clemons
✗ Take Time - Giveon
  To Feel Love/d - Luke James
◎ Bigger Love - John Legend(受賞)
○ All Rise - Gregory Porter

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このR&B部門の本丸ともいえるR&Bアルバム部門には、この部門で強そうなビヨンセはシングルのみリリースだし、クロエxハリージェネ・アイコロバグラはこの前のプログレッシヴR&Bアルバム部門でノミネートされてるので、このR&B部門の他の部門ではノミネートされていない人たちだけがノミネートされる、という不思議な状況になってますね。でもその中でやはり目に付くのがジョン・レジェンドの『Bigger Love』。この前2作のオリジナル・アルバム『Love In The Future』(2013)や『Darkness And Light』(2016)の完成度と思索深い楽曲構成に比べると、結構軽い、でもポジティブなサウンドで満たされているこのアルバムは、コロナの年に陰鬱でない音楽を送り届けてくれたという意味で、個人的にもかなり聴き込んで自分の年間アルバムランキングでも8位に入れた思い入れのある作品なので、こちらに本命◎を。そして対抗○には、いつもながら心の奥底から響いてくる歌声で聴く者の気持ちを落ち着かせてくれるグレゴリー・ポーター。今回も素敵な作品を送り届けてくれてます。

残る3組はいずれも新進気鋭の正統派R&Bシンガー達ばかり。最近では久しぶりに個人的に気に入ってたカニエのアルバム『Ye』(2018)にフィーチャーされてブレイクしたアント・クレモンス。こちらはドレイクの去年のヒット「Chicago Freestyle」にフィーチャーされたのがキャリア・ブレイクになって、スケールの大きい歌が素晴らしいギヴィオン。そして2013年第55回でR&Bパフォーマンス部門にノミネート以来のノミネートとなる、BETのTVシリーズ『The New Edition Story』(2016)でのジョニー・ギル役、USAネットワーク2パックビギーの銃殺事件を扱ったドラマではショーン・パフィ・コムズ役などを演じた俳優でもあるルーク・ジェームズ。いずれも今時の浮遊感たっぷりの音像をバックにやや中性的なR&Bボーカルを聴かせる実力者たちなんだけど、ここは個人的にやや頭一つ抜き出てると思うギヴィオンに穴✗を付けておきます。

さて、Boonzzyのグラミー賞大予想、この次はラップ部門です。お楽しみに。

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