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【毎年恒例年末洋楽企画#1】2020年ビルボード誌Hot 100年間チャート予想(のはずだった)Part 2: 15位〜11位

いやいや日曜日にはアップするつもりだったこのPart 2、急遽仕事の関係でこの数日かかりっきりになり手も付けられず失礼しました。さっそく年間予想ランキング、ビルボード誌の結果との比較しながらの15位から11位、行ってみます。

15. Savage ▲ - Megan Thee Stallion Featuring Beyonce

(Hot 100 - 28週、Top 40 - 26週、Top 10 - 14週、Top 5 - 11週/2020.5.30付 1週1位

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この間発表の第63回グラミー賞、レコード・オブ・ジ・イヤー部門にノミネートされてて、ちょっとビックリしたこの曲、ビルボード誌の年間チャート結果でもバッチリ15位と自分の予想も大当たり(今回順位も当てた7曲の最初)でした!この曲、今年の3月にBillboard 200で7位に初登場して、ミーガン2作目のトップ10アルバム/EPとなったEP『Suga』に収録されてて、まずはミーガンのソロクレジットでシングルカット。順調にチャートを上昇しながら14位を3週続けるなどそろそろ頭打ちかな、と思っていたところ、5月初頭にいきなりビヨンセをフィーチャーしたリミックス・バージョンがリリースされて5/9付チャートで14位→4位とジャンプアップ、そのまま1位まで一気に駆け上がったという、リミックスのリリースタイミングが絶妙なヒットになりました。このバージョンは、先週のBillboard 200BTSの爆発的1位初登場のおかげで2位に泣いた彼女初のフルアルバム『Good News』に収録されてます。PVはこの馬のアニメが印象的なリリック・ビデオですが、YouTubeではビヨンセの「Lemonade」のPVとマッシュアップしたバージョンも出回っているようですね。

しかし個人的に腑に落ちないのは、グラミーのROY、なぜこの曲がノミネートで同じミーガンがカーディBと組んで爆発的な大ヒット(4週1位)になった「WAP」がノミネートされなかったか、ということ。正直どちらも楽曲としてはバウンシーな今風ビヤッチ・ラップで、エロさ満載で特に深みがあるわけでもない(失礼)リリックだし、どっちをノミネートするかっていったら普通は「WAP」でしょ?ひょっとしてこれ、カーディBビヨンセの格の違いを慮ってノミネート委員会が気を遣ったのかなあ、なんて邪推もしたくなりますよね。それともこの曲、先日発表された、バラク・オバマ元大統領の2020年夏のプレイリストに収録されてたからなのかな?

14. Intentions ▲ - Justin Bieber Featuring Quavo

(Hot 100 - 31週、Top 40 - 28週、Top 10 - 19週、Top 5 - 2週/2020.6.20 & 7.4付 最高位5位

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今年のバレンタインズ・デーにリリースされた5作目のフルアルバム『Changes』(5枚とも全米No.1です)からの気の抜けるようなタイトルと歌詞の「Yummy」(笑)に次いでシングルカットされたのが、このミーゴスの片割れ、クエイヴォをフィーチャーして、コロナ禍の今、特に社会的に弱い立場にいる人達に思いを馳せて、聴く人をホロッとさせるフィール・グッド・チューン「Intentions」。PVを見るとこの曲のメッセージがはっきりと判ると思うけど、自分が受けられなかった高等教育を娘に受けさせるためにいくつもの仕事で作った資金で娘のバーリをサウジアラビアからアメリカに留学させた母親、孤児院で育って子供を産んだけど夫の暴力から逃げるために子供と共にほぼホームレスの生活を選び今は働きながら孤児院の子供達の権利のために努力しているマーシー、そして苦難の生活のオハイオからLAに出てきてホームレスの生活を続けながら詩の創作を通じてホームレスの実態を表現しているアンジェラと3人のもがきながら自分の人生を必死に生きてる女性に対して、ジャスティンクエイヴォが資金的だけでなく精神的なサポートの手を差し伸べてる様子はなかなかインスパイアリングです。PVの最後に彼女たちのサポートのために「Intension基金」を設立した、とありジャスティンの本気度も伝わって来ます。なかなかやるじゃん。

この曲、こうしたメッセージが評価されたか、今回のグラミー賞でも最優秀ポップ・デュオ/グループ部門にノミネートされてます。まあでも「おいちいおいちい」という脱力するような曲「Yummy」はかたや最優秀ポップ・ソロ部門にノミネートされちゃってますからグラミーの価値基準もちょっとよく判りませんが。ちなみにこちらはUKでも8位の大ヒットでしたが、ビルボード誌の年間チャートではこちらの予想よりちょっと低く、17位にランキングされていました。

13. Roses (Imanbek Remix) ▲ - SAINt JHN

(Hot 100 - 34週、Top 40 - 31週、Top 10 - 13週、Top 5 - 5週/2020.7.4付 最高位4位

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正直言うと、この「Roses」って曲、個人的には2020年のヒット曲の中で一番理解できなかったというか、全く魅力を感じなかったというか、そういう曲なんですよねー。まず最初にUKで今年3月にいきなり2週1位をマークしたときは「ああ、最近UKヒットでよくあるユーロビート系というか100%打込み系のダンス・トラックね。Nowとかに収録されるからCD買うけど一回聴いたら二度と聴かないタイプのヒットね」という印象だったけど、何だかこれが4月にHot 100に登場してからはあれよあれよと上昇して、あっという間にトップ10ヒットになったのには驚いた。Hot 100でこの手のハードコアな感じの打込みダンストラックがトップ10入ったのって、いつ以来だろう。思い浮かぶのってYouTubeでバズって1位になったバウワーの「Harlem Shake」(2013)ぐらいなんだけど、このセイント・ジョン(って読むんですよね、本名がカルロス・セイント・ジョン・フィリップスらしいから)ってブルックリン在住のガイアナ系アメリカ人のこの曲も同じくらい無機質なトラック。

で、理由があると思ったら、やはり最近のパターンで、もともと2016年にシングルでリリースされていたこの曲を、2019年にカザフスタンの19歳のDJ、通称イマンベックがピッチを上げてリミックスしたバージョンをTikTokに上げてこれがバズったのがきっかけらしい(なので、最初の頃はタイトル・クレジットに「イマンベック・リミックス」と入っていた)。そして更に5月頃に今度はラッパーのフューチャーがフィーチャーされた2番目のリミックスがリリース。この頃から、Hot 100上では(多分バージョン数が増えたからだと思うけど)曲の表示から「イマンベック・リミックス」が消えて、単純に「Roses」だけになりました。更に5月のジョージ・フロイド事件に抗議して逮捕されたBLM運動の支持者達の保釈金を募る内容のPVが6月にリリースされて、多分これがこの曲を一気にトップ10に押し上げた決定打だったんでしょう。しかし「Roses」の進化はこれに止まらず、7月にはイマンベックによる新リミックスが登場、2018年にカーディBとのシングル「I Like It」にフィーチャーされて一気にポピュラーになってたコロンビア出身のレガトン・シンガー、Jバルヴィンをフィーチャーしたことにより、この曲ダンス・エレクトロニック・ソング・チャートで合計22週間1位をマークするというヒットぶりになったのでした。でも個人的にはもう聴かないな、この曲(笑)。ちなみにビルボード誌の年間チャートでは、この曲19位でした。

12. Memories ▲3 - Maroon 5

(Hot 100 - 32週、Top 40 - 31週、Top 10 - 15週、Top 5 - 9週/2020.1.11付 最高位2位

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もう一つ正直に言うと、このマルーン5の「Memories」も、2020年のヒット曲の中でほとんど個人的に魅力を覚えなかった曲の一つなんですよね。楽曲自体、17世紀のバロック音楽家のヨハン・パッヘルベルの有名曲「パッヘルベルのカノン」のメロディを下敷きにしてるということで、あまりにメロディが既聴感が強すぎる、というのが自分がこの曲に惹かれない大きな理由なんだろうな、とは思うんですけど。曲の内容は「大切な人が亡くなったあとに、その人の思い出に思いを馳せる」っていう、正にこのコロナ時代には多くの人の心の琴線に触れるんだろうなあ、だからこんなに大ヒットしたんだろうなあ(ビルボード誌のアダルト・コンテンポラリー・ソング・チャートでも今年の春から夏にかけて20週連続1位でした)とは思うんですけどね。

自分もこれまでに大切な人を亡くした経験があるから、こういうテーマはかなり響くはずなんだけど、この曲はダメでしたね。まあ、出てきた当時は大好きだったマルーン5も、アギレラとの「Moves Like Jagger」(2011年4週1位)くらい以降、何だか売れてるアーティストとのコラボでバンバンヒットを飛ばす、というフォーミュラに陥ってるつまんないバンドになっちゃったなあ、と思ってて、最近も今風のソツのないポップ・ソングはやるけど昔のようなエッジも何もないなあ、と思ったりしてる、ということもあるんでしょうけど。今回のグラミー賞でもこの曲、というかマルーン5,どこにもノミネートされてないってのもむべなるかなという感じはします(この曲大好き、って人多いですよね。すいません)。

なお、この曲ビルボード誌の年間チャートでは堂々8位で年間トップ10入りしてます。やっぱ今年を代表するヒット曲ってことになるんだろうなあ。

11. Say So ▲3 - Doja Cat Featuring Nicki Minaj

(Hot 100 - 38週、Top 40 - 26週、Top 10 - 16週、Top 5 - 8週/2020.5.16付 1週1位

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さあ、この前の2曲から一転、この曲は大好きですよ(笑)。え?ドジャ・キャットのセクシーなPVにやられたんだろうって?いやいや、まあ100%否定はしませんが(爆)それよりも何よりも、この曲、70年代後半〜80年代前半のディスコ黄金時代のおいしいところをグーッと凝縮した魅力が150%弾けてる、僕ら世代のブラックミュージック好きの音楽ファンにはもうたまらないワクワク感満載で、それが何と言ってもこの曲の最大の魅力なんですよ!そして自分はニッキー・ミナージのラップが入ったバージョンよりも、オリジナルのドジャ・キャットが一人でラップしてるバージョンの方が遙かに気に入ってます。あんまり気に入ったので、この曲の限定12インチシングルが彼女のサイトのみで販売される、と聞いて即購入注文したくらい。何せUSから(しかもこのコロナの状況で)取り寄せなので、5月に注文した12インチが手元に届いたのは先月でしたが(笑)、さっそくちょうどその頃一時的に再開したDJギグでプレイしたくらい大好きなんですよね(その後またDJ活動はストップしてますが...)。そしてこの曲、ビルボード誌の年間チャートでも自分の予想と同じ11位と、2曲目の予想的中曲でした

先日のグラミー賞ノミネートでも、予想する時にこの曲、ROY候補にすることも考えたんですが、いやいやここは贔屓の引き倒しはいかん、冷静に予想しなきゃということで自重したんですが、蓋を開けてみると何とこの「Say So」、堂々ROYにノミネートされてるじゃないですか!いやあやっぱりノミネート委員の人達もこの曲好きなんだなあ、といろいろ個人的には不満の多いグラミーノミネーションの中でもうれしい誤算だったんです。当然彼女、新人賞部門でもノミネートされていて、ROYはかなり強敵揃いで難しいですが、新人賞は結構可能性あるんじゃないか、と個人的には思ってます。

母親がユダヤ系アメリカ人の画家で、父親が南アフリカのズールー族の血を引く黒人の映画監督という、マイノリティと多様性と文化的出自と家庭環境に恵まれた彼女のこと、ちょっと前はコロナに感染したり、いろいろ問題発言で一時期バッシングされたりといろいろあるようですけど、これからもたくましく業界で生き残っていくんじゃないかと思って密かに応援してます。いや、PVのセクシーさにやられたわけじゃないですよ、ええ本当に(笑)

ということで年間予想ランキング・カウントダウンのPart 2でした。Part 3はいよいよトップ10。何とか明日にはアップしたいと思ってますのでお楽しみに。

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