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今週の全米アルバムチャート事情 #89- 2021/7/24付

開催直前になってもまだケチが付き続けるオリンピック。やはりスガシ政府のコロナ対策と同じで、利権がらみで方法論がおかしいのと、先読みが甘すぎてリスク管理や事前対策が全くなってないという笑うに笑えない状況ですね。この長い週末、私はオリンピックも見ず、自分の好きなこととやりためたことを片付ける、こころ落ち着くコロナフリーの週末にしたいと思ってます。みなさんも良い週末を。この「全米アルバムチャート事情!」も今週はゆるゆると参ります。でも連動ポッドキャストはいつも通り配信しますよ。それまではこのリンクで過去の配信をお楽しみ下さい。

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さて先週の1位予想のとおり、今週7月24日付のBillboard 200全米アルバムチャートの1位は、先週からのポイント数減を今週もわずか5%とシングル%に押さえてオリヴィア・ロドリゴの『Sour』が83,000ポイント(実売10,000枚)で先週に続く1位をキープ、通算では4週目の1位をマークしてます。

UKでは今週、アイルランドから登場した話題の新人ロック・バンド、インヘイラーのデビュー・アルバム(これ、なかなかいいです。初期のU2とかアメリカのバンドだけどキングス・オブ・リオンのファンである僕は気に入りました)に1位を奪われているオリヴィアの『Sour』ですが、先週もポッドキャストでコメントしたように、基本的になかなかストリーミングのポイントが落ちないようで、今後しばらくはこれくらいのポイント水準はキープしそう。そして早くもグラミー候補としての前評判が高くなってますね。確かにアルバム自体の出来や、楽曲のレベルなど、去年のビリー・アイリッシュの快挙を再現してもおかしくない状況にはなってきてますね。ただ今年のアルバム部門もテイラーEvermore』やラナの『Chemtrails Over The Country Club』など強敵がいるし、ROYではシルクソニックがかなり有力候補。今からグラミーの行方が気になります。

さて今週は今年の5/22付のチャート以来2ヶ月ぶりにトップ10内の初登場はゼロ。これで今年のトップ10内初登場ボウズ週は7回目ということで、過去5年間で最高だった2020年の8週に並ぶまであと1回となりました。これもコロナの影響はゼロではないんでしょうけどね。一方、今週トップ10圏外100位までの初登場は3枚。極端に少なかった先週から先々週レベルには戻って来ました。そちらを順にご紹介。

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まず21位に初登場してきたのは、先週「ひょっとするとトップ10来るかも」と言っていた、LAのハードコアなラッパー、ヴィンス・ステイプルズの4作目になるその名も『Vince Staples』。彼の最大のヒットになっていた2作目『Big Fish Theory』(2017年16位)に次ぐ成績となったばかりではなく、今回も音楽メディアの評価は高く、Metacriticのサイトでは84点を獲得しています。

一昨年のフジロックで彼のライヴを見た時も思いましたが、彼のラップスタイルはミニマルながら凡百のトラップ連中とは一線を画するトラックに乗せて淡々としたフロウを展開する(フランク・オーシャンの作品を思わせます)、というものでリリックも社会的観点だったり内省的な内容だったりと意識高い系のリスナーにも受けが高いので、爆発的な人気は呼ばないかもしれないけど、確実な固定ファン層を確保しているんだろうなあ、という気がします。

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そのすぐ下の24位に初登場してきたのは、ペルシャ系スウェーデン人の女性R&Bシンガー、スノウ・アリーグラ(本名:スノウ・シェリ・ノウロジ)の3作目になる『Temporary Highs In The Violet Skies』。「ペルシャ系スウェーデン人のR&Bのシンガー」という説明で頭の中に?マークがいっぱい飛んだ人も多いでしょうが(笑)、風貌に確かに西アジアっぽさを感じさせますが、ごくごく王道の今どきのR&Bを歌うシンガーです。そしてこのアルバムが彼女に取ってのブレイク作になっています(これまでは前作が2019年にBillboard 200の73位というのが最高)。

彼女のキャリアで特異なのが、いろんな形でこれまで他のアーティストとのつながりに恵まれていて、今のステージネームにして最初の仕事があのコモンの2014年のアルバムでの客演だったり、同じ頃にプリンスに見出されて弟子入りしたり、最初のシングルのプロデュースがあのウータンRZAだったり、先程のヴィンス・ステイプルズのアルバムでの客演が評判を呼んだり。ある意味この業界での「運」に恵まれている雰囲気を持っているような気がするので、今後ビッグになっていくかもしれません。知らんけど(笑)。

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そして今週最後の圏外初登場はぐっと下って、64位に入ってきた新進女性ラッパーのBIA(本名:ビアンカ・ミクェラ・ランドロー)のメジャーレーベル(エピック)デビューで、初チャートインアルバム『For Certain』。さっきのスノウ・アリーグラも人種的には複雑な出自でしたが、BIAの場合、アフロ系プエルトリカンとイタリア人の両親を持つマサチューセッツ州出身のアメリカ人という、まあ多様性の21世紀の申し子のようなマルチ・レイシャル・アーティスト。2014年頃からNBC系のペイTVでの女性ラッパーにフォーカスしたリアリティ番組にレギュラー出演し、名前を知られるようになったそうです。

アルバムにはあのリル・ジョンをフィーチャーした「BIA BIA」や、下腹に響くベース・サウンドのほとんどメロディレスなトラックに乗っけてちょっとニッキー・ミナージ的なスタイルの「Whole Lotta Money」など、かなりハードコアなスタイルのラップを聴かせるBIA。またこのアルバム8曲収録なんですが、トータルの分数が21分というEPか?という感じの今どき珍しいエコ・アルバムでどちらかというとサンプラー的な位置づけのようにも聞こえます。

ということで今週のBillboard 200も静かなチャートでしたが、いつもどおりトップ10のおさらい。今週一気にモーガン・ウォレンのアルバムにプラチナ・ディスク・マークが点灯してますが、先週お伝えしたMRCデータ社のレポートによると、6月末で24万枚しか売れてないはずなのに、この1ヶ月で75万枚売れたってこと???うーんよくわからんなあ(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

1 (1) (8) Sour ▲ - Olivia Rodrigo
2 (2) (3) Planet Her - Doja Cat
3 (4) (27) Dangerous: The Double Album ▲ - Morgan Wallen
4 (3) (6) The Voice Of The Heroes - Lil Baby & Lil Durk
5 (7) (5) Hall Of Fame ● - Polo G
6 (8) (67) Future Nostalgia ▲ - Dua Lipa
7 (6) (3) Call Me If You Get Lost - Tyler, The Creator
8 (11) (6) Inside (The Songs) - Bo Burnham
*9 (15) (65) After Hours ▲2 - The Weeknd
10 (10) (12) A Gangsta’s Pain ● - Moneybagg Yo

今週の全米アルバムチャート事情!、いかがでしたか。さてこちらもいつものように来週1位の予想です。今回の集計対象期間は7/16-22ですが、今回はさすがにオリヴィアの1位はストップされそう。というのも、多分来週1位の最右翼はポップ・スモークの遺作第2弾で、メディアの評判は賛否両論みたいですが、これは山のようにストリーミング稼ぎそうなんで、多分当確。そこに前評判の高いジョン・メイヤーの新譜がどれくらい絡むか、というのが見所です。それ以外にもドリーミー・インディ・ポップのクライロのセカンドや、テデスキ・トラックス・バンド『愛しのレイラ』再現ライブ盤、そしてウィル・スミスの娘さん、ウィロウの新譜なんかもトップ10を賑わせそう。ということでまた来週。

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