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【恒例新年企画#3】Boonzzyの第63回グラミー賞大予想#7〜ゴスペル&CCM部門

やはり予想されていたように緊急事態宣言、1ヶ月延長となってしまいました。そもそも最初から1ヶ月で解除というのが現実的でないことは専門家の皆さんが指摘していたのに、国会では「専門家の皆さんに相談して決める」といっているスガシがその言葉とは裏腹に1ヶ月で解除にこだわっただけだった気がします。一番これで危惧されるのが飲食業、特に夜のお店の皆さん。本当に見込み違いで延長する代償としての補償をしっかりすることが必須ですよね。自分も感染拡大防止に気を付けながら、飲食の皆さんのサポートは個人でできることをしていこうと思います。さて、Boonzzyのグラミー賞予想、今度はゴスペル&CCM部門です

31.最優秀ゴスペル・パフォーマンス/ソング部門(アーティストと作者の両方に与えられる賞)

  Wonderful Is Your Name - Melvin Crispell III
× Release (Live) - Ricky Dillard Featuring Tiff Joy (David Frazier)
◎ Come Together - Rodney “Darkchild” Jerkins Present: The Good News (Lashawn Daniels, Rodney Jerkins, Lecrae Moore & Jazz Nixon)
○ Won’t Let Go - Travis Greene (Travis Greene)

  Movin’ On - Jonathan McReynolds & Mali Music (Darryl L. Howell, Jonathan Caleb McReynolds, KOrtney Jamaal Pollard & Terrell Demetrius Wilson)(受賞)

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こちらも去年から予想を始めた部門で、CCMは「コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック」の略。もともとゴスペルはアフリカン・アメリカン系のR&Bやカントリーなど南部系音楽でイエスの教えを説くタイプの音楽で、CCMはそれ以外のポップ・ロック・フォークなどの音楽スタイルによる宗教音楽というのがゆるーい定義ですが、最近では特にCCMの部門にもアフリカン・アメリカン系のアーティストもノミネートされるようになってきていて、この辺の定義は更に緩くなっている気がします。この部門の各サブ部門の過去の歴史はかなり複雑でして、去年自分のブログでその当たりも含めて解説を試みたので、そちらの方もよかったら覗いて見て下さい。

さて今年のゴスペル・パフォーマンス/ソング部門も、ゴスペル部門の伝統でアフリカン・アメリカン・アーティストで占められてます。去年はゴスペル界の若きゴッドファーザー、カーク・フランクリン師が圧倒的な強さでこの部門7回目(ノミネートは8回目)、ゴスペル部門全体で16回目の受賞を決めたのですが今年は彼は不在で、ノミニーはすべてゴスペル部門での受賞経験のない顔ぶれが揃いました。でもその中でピカッと光っているのが、90年代にデスチャ、ブランディ、ホイットニー、トニ・ブラクストンといった連中を手掛けて90年代R&Bシーンの代表選手だったロドニー・ジャーキンス。最近でも昨年はH.E.R.の「Hard Place」でROYとSOYの両方にノミネートされていた御大、今年はゴスペル部門初ノミネート。何といっても主要部門ROYで5回ノミネート中1回受賞(第57回のサム・スミスStay With Me (Darkchild Version)」)、R&B部門でも7回ノミネート中1回受賞(第43回デスチャの「Say My Name」)とグラミー受賞経験も豊富なロドニー、今回はザ・グッド・ニュースというグループ名の下、多数のおそらくほとんどは有名ではない老若男女のゴスペルシンガー達を集めて次々に「We Are The World」風に歌い継がせながら、今アメリカに取って最も重要な「団結(Come Together)」を訴える、という曲を届けてくれてます。これはもう時節柄本命◎決まりでしょう。

対抗○は昨年に続いて2年連続ノミネート、この部門では4回目のノミネートとなる、実際にサウスキャロライナ州コロンビアで牧師を務めるトラヴィス・グリーン師の歌う、胸にぐっと迫る「Won't Let Go」、そして穴✗は元々80年代後半シカゴのハウス・シーンでキャリアをスタートするもすぐにゴスペルに転向、自らのゴスペル合唱隊を率いてこれまで4回のノミネート経験のあるリッキー・ディラードが同じシカゴ出身の女性ゴスペルシンガー、ティフ・ジョイをフィーチャーしてシカゴのバプティスト教会で演奏した、全てを包み込むようなゴスペル・コーラス・ナンバー「Release」に。

32.最優秀コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック・パフォーマンス/ソング部門(アーティストと作者の両方に与えられる賞)

  The Blessing (Live) - Kari Jobe, Cody Carnes & Elevation Worship (Chris Brown, Coddy Carnes, Kari Jobe Carnes & Steven Furtick)
◎ Sunday Morning - Lecrae Featuring Kirk Franklin (Denisia Andrews, Jones Terrence Antonio, Saint Bodhi, Rafael X. Brown, Brittany Coney, Kirk Franklin, Lasanna Harris, Shama Joseph, Stuart Lowery, Lecrae Moore & Nathanael Saint-Fleur)
  Holy Water - We The Kingdom (Andrew Bergthold, Ed Cash, Franni Cash, Martin Cash & Scott Cash)
× Famous For (I Believe) - Tauren Wells Featuring Jenn Johnson (Chuck Butler, Krissy Nordhoff, Jordan Sapp, Alexis Slifer & Tauren Wells)
○ There Was Jesus - Zach Williams & Dolly Parton (Casey Beathard, Jonathan Smith & Zach Williams)(受賞)

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さてそもそもは白人音楽系のスタイルで神への愛を歌うのがCCMなんですが、今回もノミネートされてるトーレン・ウェルズのように近年ではアフリカン・アメリカンのアーティストもノミネートされるようになってきてましたが、それでも彼の場合はR&Bスタイルではなく、クリスチャン・ロック的スタイルだったので、あくまで白人音楽系のスタイルは維持されてきてました。そこに今年いきなりノミネートされたのが既にゴスペル部門では4回ノミネート、うち1回は最優秀ゴスペル・アルバムを受賞(第53回)している、クリスチャン・ヒップホップ・アーティストというユニークな存在感を持つレクレイ(本名:レクレイ・ムーア)と、何とゴスペルのゴッドファーザー、カーク・フランクリン師が組んだ、聴くほどに高揚するナンバー「Sunday Morning」。2012年第54回創設のこのCCMパフォーマンス部門でこれほどR&Bスタイル(+ヒップホップスタイル!)の楽曲がノミネートされたのは初めてというのも、今年のグラミーのダイバーシティ重視のなせる技なのか。いずれにしてもカーク師も絡んでて、ゴスペル部門で存在感高いレクレイということもあり、本命◎は決まりでしょう。

対抗○は、昨年もオーストラリア出身のクリスチャン・ロック・デュオのフォー・キング&カントリーとコラボしてまんまとこの部門受賞している、カントリーの大御所ドリー・パートンと今年はこの部門で3回目のノミネート、CCMアルバム部門では第60回で受賞経験もある、アーカンソー州出身のザック・ウィリアムスとのデュエット「There Was Jesus」に。ドリー姐さん、2年連続の受賞あるか。そして穴✗は先程名前の出たトーレン・ウェルス、今年でこの部門4年連続ノミネートという根強い評価も考えて、彼につけておきましょう。

33.最優秀ゴスペル・アルバム部門

  2econd Wind: Ready - Anthony Brown & grop therAPy
○ My Tribute - Myron Butler
× Choirmaster - Ricky Dillard
◎ Gospel According To PJ - PJ Morton(受賞)

  Kierra - Kierra Sheard

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さてここからはアルバム部門です。今年のゴスペル部門で目を引くのは、いわゆるゴスペル・アーティストでないアーティストによるゴスペル・アルバムが2作ノミネートされていること。その一つがこの部門にノミネートされている、PJモートンの『Gospel According To PJ』(もう1枚は後ほど登場します)。PJモートンといえば2010年代前半はあのマルーン5のキーボード奏者として活躍、その後はマルーン5の活動拠点だったロスから自らの出自であるニューオーリンズに戻ってレーベルを立ち上げ、次々にグルーヴ感満点の良質のR&Bアルバムを発表。ここ数年はグラミーR&B部門の常連で、ノミネート9回、受賞2回という確固たる存在感を確立してました。その彼が地元のバプティスト教会の司教でもある父親へのリスペクトを込めて作ったのが今回ノミネートの『Gospel According To PJ』。アルバム冒頭、父親と「オヤジ、俺とうとうゴスペルアルバム作ったんだよ」「おおそうかそうか」と思わずニヤリとするようなやり取りをした後、オーセンティックながらも彼のR&B作品でよく登場するオートチューンのボーカルなんかも交えながら「R&B風俺風ゴスペル」を展開してます。これが結構いいんだな。なので他のベテランゴスペル・アーティストを差し置いてですが、彼に本命◎を。

対抗○ですが、最近は自らリーヴァイというゴスペルコーラス隊を率いているベテラン・ゴスペル・シンガーのマイロン・バトラーですかね。90年代頃彼が率いていたコーラス隊はゴッズ・プロパティという名前で、あのカーク・フランクリン師とのコラボ・アルバムは1998年第48回の最優秀ゴスペル合唱隊・コーラス・アルバム部門を見事受賞してます。今回の『My Tribute』というアルバム、なかなかコンテンポラリーな音作りでカッコいいですねえ。そして穴✗は冒頭ゴスペル・パフォーマンス部門で同じく穴✗をつけたリッキー・ディラードの「Release」収録のアルバム『Choirmaster』に。

34.最優秀コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック・アルバム部門

  Run To The Father - Cody Carnes
  All Of My Best Friends - Hillsong Young & Free
× Holy Water - We The Kingdom
○ Citizen Of Heaven - Tauren Wells
◎ Jesus Is King - Kanye West(受賞)

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さて先程触れた、今回ノミネートされている「ゴスペル・アーティストでないアーティストによるゴスペル・アルバム」のもう1枚は、そう、カニエの『Jesus Is King』。このゴスペル・アルバムのリリースに先立って、ゴスペル合唱隊のサンデイ・サービス・クワイアを立ち上げて毎週日曜日に彼らのパフォーマンスを発表するなど、ここ数年カニエが大きくゴスペル方面への関心とインボルブメントを深めてきた結果、2019年10月にリリースされたこの正真正銘のゴスペル・アルバム。いろんな意味で注目すべき作品であることは間違いないですよね。好き嫌いは別として(笑)。そしてCCMパフォーマンス/ソング部門同様、従来白人音楽スタイルのクリスチャン・ポップ/ロック・アーティストがノミネートされてきていたこのCCMアルバム部門で、このアルバムだけがR&Bスタイルの「ゴスペル」作品なのがちょっと奇異にも見えます。でもこのラインアップを見ると、本命◎はカニエになるんでしょうねえ。なぜこれがゴスペルアルバム部門にノミネートされずにこのCCMアルバム部門ノミネートなのか謎ですが。

対抗○は、CCMパフォーマンス/ソング部門では4年連続ノミネートされていて、このアルバム部門でも第60回に続いてノミネートされてるトーレン・ウェルズの『Citizen Of Heaven』に。ソング部門ノミネートされてた、女性ボーカルのジェン・ジョンソンをフィーチャーしたこの「Famous For (I Believe)」を聴いて頂くと、アフリカン・アメリカンなのに彼のスタイルはクリスチャン・ロックであるのが判ると思います。同じ部門にノミネートのカニエと好対照ですね。そして穴✗は今回CCMパフォーマンス/ソング部門共々グラミー初ノミネートを果たした、CCM界の大スター、クリス・トムリンとの仕事で過去CCM界のグラミー賞と言われるダヴ・アウォードを多数獲得しているプロデューサー、エド・キャッシュとその家族・親戚で構成されたバンド、ウィ・ザ・キングダムのデビュー・アルバム『Holy Water』に。

35.最優秀ルーツ・ゴスペル・アルバム部門

  Beautiful Day - Mark Bishop
◎ 20/20 - The Crabb Family
  What Christmas Really Means - The Erwins
× Celebrating Fisk! (The 150th Anniversary Album) - Fisk Jubilee Singers(受賞)
○ Something Beautiful - Ernie Haase & Signature Sound

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昨年のブログには書ききれなかったのですが、このルーツ・ゴスペル部門というのは、それまでこのゴスペル部門が、大きく分けて普通のゴスペル部門(アフリカン・アメリカン以外)とソウル・ゴスペル部門の2つで構成されていて、それぞれが男性・女性・デュオ/グループという区分けだったのが、1991年第33回からそうしたパフォーマーの構成分類から、トラディショナル、ポップ、ロック/コンテンポラリー、サザン、トラディショナル・ソウル、コンテンポラリー・ソウル、ゴスペル合唱隊という音楽スタイルの分類による7つのサブ部門構成に複雑化したあたりにその出自があるんです。この時のサザン・ゴスペル部門が1994年第36回からサザン/カントリー/ブルーグラス・ゴスペル部門と改称されて2011年第53回まで継続。その後、なぜか3年間このカテゴリーは消滅して、新たに2015年第57回から始まったのが、このルーツ・ゴスペル部門です。その経緯から言ってこの部門にノミネートされるのは、従来カントリーやブルーグラスを音楽スタイルとするゴスペル・アーティストたち(一部白人ブルース・アーティストもあり)だったのですが、昨年何とあの懐かしの大ヒット「恋のサバイバル(I Will Survive)」で有名なグロリア・ゲイナーがリリースしたR&Bスタイルによる初のゴスペル・アルバム『Testimony』がノミネートされたばかりか、しっかり受賞してしまったのでもはや白黒の垣根はないも同然の状態になってきているようです。

そういう観点から言うと、今年のアフリカン・アメリカン系でR&Bスタイルのノミニーは、何とナッシュヴィルのフィスク大学の黒人学生達で構成され、19世紀以来の歴史を誇るフィスク・ジュビリー・シンガーズ。この合唱隊は主として黒人霊歌やフォスターなどの伝統的アメリカの楽曲を綿綿と歌ってきていて、あのエリック・クラプトンのカバーで知られる「Swing Low, Sweet Chariot」とかを有名なレパートリーとしているようです。その合唱隊の結成150周年(!)記念アルバムが今回史上2度目のノミネートになってるんですが、まあ今回これはせいぜい穴×どまりではないかと思ってます。

というのは、ケンタッキー州ビーヴァー・ダムという街を拠点とする家族によるサザン・ゴスペル・グループ、ザ・クラブ・ファミリーが今回でこの部門4回目のノミネートと、今回のノミニーの間では過去最もノミネートされてて今回本命◎ではないかと思われるから。彼らが強そうだと思うのは、それ以外にも長男のジェイソンがソロ・アルバム『Unexpected』で2019年第61回に、そしてその前にも2010年第52回には、まだ部門名が「サザン、カントリーまたはブルーグラス・ゴスペル・アルバム部門」だった頃にこの部門で受賞しているという実績充分だということもあります。典型的なカントリー・ゴスペル・グループで、この顔ぶれの中ではまあ一番受賞に近そうな気がします。対抗○は、今回この部門第61回に続いて2回目のノミネートとなる、オハイオ州出身のアーニー・ハース(テナー)をリーダーとする四声コーラスのサザン・ゴスペル・グループ、シグナチャー・サウンドの『Something Beautiful』に。グループ構成的にはやはりサザン・ゴスペルでも有名なカントリー・コーラス・グループ、オーク・リッジ・ボーイズに似てるんですが、この曲を聴いて頂くと判るようによりポップ寄りのサウンドで、ちょっと昔のレターメンとかを思わせるグループですね(古い?)。

ということで、ゴスペル・CCM部門の予想はここまで。あと残すところ、主要4部門を含めて16部門になりました。ルーツ・ゴスペル部門が終わったところで、この次はBoonzzyの大好きなアメリカン・ルーツ部門になります。ではまた。

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