見出し画像

今週の全米アルバムチャート事情 #113- 2022/1/8付

新年も早くも一週間が過ぎ、皆さんには新年のお仕事等でお忙しい毎日かと思います。東京は今日初雪も降って、自分はリモートワークのありがたさをしみじみ感じているところ(笑)。一方コロナですが、オミクロン株についてはこれまでのコロナ株に比較して重症化の可能性が低いという説明を各国政府等が行っていますが、感染は広がっている様子であり、既に1/31(US現地)開催予定のグラミー賞授賞式も今日4月頃への延期のアナウンスが出てしまいました。今年もコロナとは折り合いを付けながら、またそれぞれが感染リスク回避の対応をしながらの一年になりそうですが、昨年一昨年よりはましな年になってほしいものですね。

この年末年始は公私ともに多忙な関係で、この「DJ Boonzzyの全米アルバムチャート事情!」連動のポッドキャストはお休みしていましたが、今週末くらいから可能であれば再開したいと思っていますので、配信できたらまた告知しますね。それまでは上記リンクでこれまで同様過去の配信をお楽しみ下さい。

画像1

さて今週の全米アルバムチャートBillboard 200、1/8付のチャートの1位ですが、先週の予想どおりアデルの『30』が6週目の1位をキープしたんですが、クリスマスイブも含む集計期間だったので、アデルのポイントは落ちないだろう、と予想したところ、あに図らんや対先週比で何と53%ダウンの99,000ポイント(うち実売枚数71,500枚、こちらも60%ダウン)と、予想以上の大幅ダウンで何とか1位キープした、という状況になってました。2位のマイケル・ブブレChristmas』も31%ダウンの53,000ポイントだったので、一応余裕のある1位キープだったんですが、10万ポイント割れということになると、ちょっと強力な新譜が入ってくると1位キープが危ないレベルなので、今後の新譜動向によっては意外と早めにアデルの1位陥落があるかもしれません。

ちなみに先週お伝えしたように、アデルは先週の1位までで通算1位滞在週数で39週と、エルトン・ジョンと並んで歴代8位タイでしたが、今週の1位で通算40週となり、歴代単独8位となりました。前回のあれだけ無敵だった『25』でも6週目から大きくポイントが減衰して、7週1位どまりでしたから、来週のチャートの集計期間が売上の薄い12/31-1/6であることを考えると、来週は1位キープしてもその次はキツそうですね。

画像2

そして今週のトップ10内の唯一の大きな動きは、チャートイン5週目で圏外110位から一気に今週7位に急上昇してきた、ディズニー通算60作目のアニメ映画『Encanto』(邦題:ミラベルと魔法だらけの家)のサントラ盤(41,000ポイント、うち実売8,314枚*)。南米コロンビアの山中にある不思議な家に住む15歳の少女ミラベルとその家族のお話。ミラベル以外の家族のメンバーやその家はいずれも魔法の使い手なのですが、その魔法の源となっている50年間燃え続けているロウソクがその力を失いそうになっているのを発見したミラベルが、家族の魔法を救うために奮闘する、というストーリー。ちょうど11月末のサンクスギヴィング前に限定劇場公開され、1ヶ月間の劇場上映の後、ちょうど今週のチャート集計期間の初日、12/24にディズニー+で配信視聴可になったことによる急上昇のようです

今回のこのアニメ映画の楽曲をメインで書いているのが、過去に『Hamilton』(2015)の楽曲・脚本・主演で一躍ブレイクし、その後もディズニーの『Moana(モアナと伝説の海)』(2016)や映画『In The Heights』(2021)の楽曲を担当、昨年は名作ミュージカル『レント』の作曲家ジョナサン・ラーソンの自伝ミュージカル映画『Tick, Tick…Boom!』で監督デビューも果たしたリン=マニュエル・ミランダ。彼は既にトニー賞、グラミー賞、エミー賞を受賞しているので、アカデミー賞も含めて4賞受賞のEGOT(現在16人)にはあとアカデミー賞受賞を残すのみ、と言う状況。今年の第94回アカデミー賞のノミネートは2/8発表ですが、彼は充分ノミネートの可能性大なので、ひょっとすると今年彼が17人目のEGOTになるかもしれません。

画像3

今週のトップ10の他の大きな動きは、昨年服役中のまま他界したフィル・スペクターが1963年に自分のレーベル、フィリーズからリリースした、ダーリン・ラヴ、ロネッツ、クリスタルズなど当時のフィル・スペクター軍団オールスターのクリスマス・アルバム『A Christmas Gift For You From Phil Spector』が先週11位からジりっと初のトップ10入りしたこと(39,000ポイント)。リリースから実に58年2ヶ月かけてトップ10入りというのはひょっとして記録なんじゃないかしら。でもビルボードの記事には何もそういう言及ないから更にこの記録、上があるのかもしれません。ちょっと調べておきます。

なお、ここにきてこの上昇は、このコンピに収録のダーリン・ラヴChristmas (Baby Please Come Home)」(先週Hot 100で16位最高位)やロネッツの「Sleigh Ride」(同じく先週最高位10位)と2曲が各ストリーミングサービスのクリスマス・プレイリストに組み込まれてる関係で、ストリーミングポイントでHot 100上で躍進してるので、その影響でアルバムのポイントも伸びているから。

画像4

今週のトップ10は以上。11位以下100位までの圏外は、今週も初登場が少なくわずかに2枚。そのうちの一つが先週トップ10入りあるのでは?と言ってたナスがクリスマスイヴにドロップした15作目のアルバム『Magic』で27位に初登場。2020年の『King’s Disease』(最高位5位、第63回グラミーで最優秀ラップ・アルバム受賞)以来タッグを組んでるヒット・ボーイチョーンシー・ホリス)と今回も共同プロデュースしているこのアルバム、友人からオススメだと聴いていたのでさっそく聴いたら、まあこれがしなやかで力強い往年のナスそのままの素晴らしい出来だったので嬉しくなっちゃいました

何せ冒頭の「Speechless」から最後の「Dedicated」まで一切捨て曲なし、もちろんオールド・スクールの音作りでトラップのトの字もありません。特にエイサップ・ロッキーDJプレミアという、新旧のNYラップ・シーンの実力者を従えた「Wave Gods」なんか、最近ちょっとLAやデトロイト、シカゴ、アトランタやメンフィスとかのラップシーンの台頭でやや押され気味に見えるNYラップ・シーンに活を入れるかのような、本当に力強いトラックプリモのトラックメイキングもちっとも古くさくなくて、これもう少し早く出てれば去年の年間ランキングの上位に入れたかも。最近のトラップマスプロなラップ作品に食傷気味の、ホンモノのラップ・アルバム聴きたい人には絶対オススメです。

画像5

そして今週圏外のもう一枚の初登場はこちらもクリスマス・ソングのHot 100での躍進に押し上げられて登場したと思われる、ボビー・ヘルムズのベスト盤『The Classic Years: 1956-1962』。こちらは今シーズンで7シーズン連続Hot 100入りしているクリスマス・ソングの定番曲「Jingle Bell Rock」が今年も3年連続でHot 100のトップ3入り(3位)していることの影響ですね、明らかに。

ということで、今週の100位までの初登場曲とトップ10の主なチャートアクションの解説でした。ここでいつものように今週のトップ10のおさらい。先ほどお話ししたフィル・スペクターのクリスマス・アルバムなんて実売わずかに365枚(Hits Daily Double調べ)と今週の最低売上でした(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数>)。

1 (1) (6) 30 - Adele <99,000 pt/71,500枚>
2 (2) (100) Christmas ▲6 - Michael Buble<53,000 pt/3,788枚*>
3 (3) (7) Red (Taylor’s Version) - Taylor Swift <47,000 pt/20,110枚*>
4 (5) (32) Sour ▲2 - Olivia Rodrigo<46,000 pt/15,494枚*>
*5 (12) (51) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <43,000 pt/2,318枚*>
6 (8) (65) The Christmas Song ▲6 - Nat King Cole <42,000 ptj/2,406枚*>
*7 (110) (5) Encanto - Soundtrack <41,000 pt/8,314枚*>
8 (6) (99) A Charlie Brown Christmas (Soundtrack) ▲4 - Vince Guaraldi Trio <41,000 pt/6,914枚*>
9 (7) (108) Merry Christmas ▲8 - Mariah Carey <39,000 pt/2,864枚*>
10 (11) (23) A Christmas Gift For You From Phil Spector - Various Artists <39,000 pt/365枚*>

ということで今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。では最後にいつもの来週の1位予想ですが、本文でも述べたとおり、今回の集計対象期間が12/31-1/6とかなり商いの薄い週であるのと、その間めぼしいリリースがないことから、来週もアデルはポイント減らすでしょうが、何とか7週目の1位はキープするのではないかと思います。ではまた来週。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?