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今週の全米アルバムチャート事情 #117- 2022/2/5付

月が2月に変わって中華圏では春節が始まり、北京ではいよいよ冬期オリンピックも始まるようですが、感染拡大防止は大丈夫なんでしょうかね。先週家族に陽性者が出てしまった我が家では、濃厚接触者となった我々は幸いPCR検査は陰性でしたが今週水曜日までは外出制限となって自主隔離状態でなかなか大変でした。前回のデルタ株拡大の頃と違って今回は身近な人達の感染も多く聞かれるようになってきて、感染者数はここ2週間で爆発的に増えていますが、実際の重症者数は全体感染者数の0.1%程度(昨年9/4最も重症者数が多かった時期は1%)と、その様相は去年の夏とは大きく変わってるようですね。それなのに、相も変わらず外出禁止、4人以上の会食禁止(5人がだめで4人がいい科学的理由は?)、酒類販売禁止と全く同じ規制しか出せない政府は、岸田氏になっても思考停止状態のようにしか見えません。飲食業の方々、ご苦労のほど心よりお察し申し上げます。

一方並行してこのnote.comでお送りしている第64回グラミー賞大予想ブログも第2弾を先週末にアップしましたので、上記のリンクから是非チェック下さい。第3弾以降もどんどんアップしていきますのでお楽しみに。

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さて今週の全米アルバムチャート、Billboard 200の2月5日付チャートの1位ですが、軽々と1位を持って行くだろうと思っていた、ヒップホップのヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン(YBNBA)のポイントが10万に届かないという予想外の展開で、しかも逆に今週も11%もポイントを伸ばした(115,000ポイント、うち実売19,000枚)、ディズニー・アニメの『Encanto(ミラベルと魔法だらけの家)』のサントラ盤が何と、通算3週目の首位をキープという結果になりました。しかもその間3週間、ポイント数も実売数も伸ばし続けたというのは、2014年12月13日付のチャートで今のポイント数によるチャート集計が始まってから初めてのことなんです。だいたい1位になるアルバムは初週から2週目にポイント数も売上も落ちるのが当たり前。その期間でこれまで2週目にポイント数を上げたアルバムもわずか1枚、2015年7月18日、25日に1位を記録した、ミーク・ミルの『Dreams Worth More Than Money』(246,000ポイント→289,000ポイント)のみなんで、今回のミラベル現象がいかに特筆すべきものかわかりますよね(なお、2014年以前で実売のみによる集計だった期間では、2007年12月から1月にかけて40万枚から75万枚まで、5週連続実売枚数を伸ばし続けたジョッシュ・グローバンの『Noel』というオバケアルバムの記録があります)。

そして今週はこの中の収録曲「We Don’t Talk About Bruno」はアデルを下して何とHot 100でも1位を獲得ディズニー・アニメ曲のHot 100ナンバーワンは、映画『Aladdin』の「A Whole New World」(1993、ピーボ・ブライソン&レジーナ・ベル)に続く2曲目ですが、サントラと同時1位というのは史上初になります(『Aladdin』のサントラは最高位6位)。一足お先にこの曲が1位になったUKでは今週も1位をキープ。英米でも同時1位ということで、これは来年のグラミー賞の目玉の一つになりそうですねえ

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そしててっきりこいつが1位だと思ってたYBNBAの16本目になるミックステープ『Colors』は79,000ポイント(実売2,000枚弱)で2位初登場でした。だいたい毎回10万ポイントは叩き出すやつなんですが、今回はやや少なめのポイントで、勢いを増した『Encanto』に追いつけず1位は取れず。

前もこのブログでご紹介したように、彼まだ若干22歳にして5人の子持ちのお父ちゃんなんで稼がなあかん、ということでとにかく多作。昨年2021年も自分のナンバーワンアルバム『Sincerely, Kentrell』と同じニューオーリンズ出身のベテランラッパー、バードマンとのコラボ作(19位)をリリース、その前の2020年に至ってはナンバーワンアルバム『Top』、ミックステープ3本(2位、1位、10位)、NY若手ラッパーのリッチ・ザ・キッドとのコラボ作(43位)と1年に5作品もリリースするなど、やや露出過多気味になったきらいもあるかもね。他のトラップ野郎たちとはちょっと作風違った感じなのでちょっと気にはなってたけど、そろそろ自分も飽きてきました(笑)。

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今週もう1枚のトップ10内初登場は、シングル「Fancy Like」がカントリー・ソングス・チャートで昨年から今年にかけて24週1位、Hot 100でも昨年末に最高位3位と大ヒットして一気にハウスホールド・ネームとなったアラバマ州モーバイル出身のカントリー・シンガー、ウォーカー・ヘイズの、その「Fancy Like」を含む3作目『Country Stuff The Album』が33,000ポイント(実売16,000枚)で9位に初登場、彼にとって初のトップ10アルバムとなっています。こちらは去年6月に出たこの曲を含む6曲入りEP『Country Stuff』のアルバムリブート盤、という(つまり同じネタで2度美味しいを狙った)位置付けのようです。

Fancy Like」、Hot 100にもクロスオーバーしたカントリーヒットとしては2020年11月にいきなり2位に初登場したルーク・コムズForever After All」以来の大ヒット、ということになりますが、彼の作風はこの曲に象徴されるように、シンガーソングライター然としたストーリー性のある楽曲よりも、パーティー向きのリズムとビートを強調した、時にはカントリー・ラップっぽいこともやってみるという、ややギミック寄りの作風みたいですね。この曲もすましたカッコしたり、高い食事が必要な女の子じゃなくって、俺の彼女はアップルビー(アメリカで地方に行くとよく見かけるサイゼリヤみたいな安いファミレスです)でデートもOKな、安上がりで庶民的な最高な子だぜベイビー、って感じでまあこの辺が共感呼んでるんでしょうねえ(特に白人男性の)。この曲に合わせたダンスがTikTokでもバズったというのもよくわかります。でも自分はやっぱりジョーダン・デイヴィスとかシンガーソングライター然としてる人の方がいいですねえ。彼が5年後にもまだシーンに残っているか興味のあるところです。

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さて先週伝えられたミートローフの訃報にチャートも反応していて、彼の『Bat Out Of Hell(地獄のロック・ライダー)』(1977年最高位14位)が13位に再登場して最高位を更新、また1993年のナンバーワンアルバム『Bat Out Of Hell II: Back Into Hell(地獄のロック・ライダーII〜地獄への帰還)』も91位に再登場しています。僕ら70〜80年代に熱く洋楽聴いてた世代には忘れられないアーティストですし、自分は『Bat Out Of Hell II』の直筆サイン入りCD持ってたりするので、結構ショックでした。盟友のジム・スタインマンも昨年亡くなっていて、またまた一時代の終わりを感じますね。ご冥福をお祈りします。

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その他の圏外11位から100位までの初登場アルバム、今週は2枚。そのうちの一つが、コロナの真っ最中、2020年後半から昨年にかけて8週1位の大ヒットになってた24kゴールデンの「Mood」にフィーチャーされてることで名前が売れた、プエルトリコ人ラッパーのイアン・ディオール、2作目のアルバム『On To Better Things』で、28位に初登場、彼最大のヒットアルバムになってます(2019年のファーストは44位)。そう、「Mood」のMVで、左側にいた細い方のラッパーですね。

彼の作風も「Mood」の路線同様、ポップ・ラップというかメインストリームのラジオで流れていても全く違和感のない、いわゆる最近そこら中にいるゴリゴリのトラップ野郎ではないスタイル、ということもあって(もちろん「Mood」の大ヒットで名前が売れたのは大きいでしょうが)この高い位置でのデビューになったのでしょう。何となくキッドLAROIとか、パンクに行く前のマシンガン・ケリーあたりのスタイルで、ラテン系入っているのでその辺が微妙なスパイスになってる感じですね。ロック系を意識したトラックなんかもあるし、いやアルバム冒頭の「Is It You」なんて普通にいい曲ですし。スポティファイとかで流れてきたら「ん?これ誰?」って気になる、そんな感じ。今後も活躍しそうな雰囲気持ってます。

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そしてもう1作の圏外初登場は、44位に入って来たコンピレーション・アルバム『LLD (Long Live Young Dolph)』、そう昨年11月に地元メンフィスで射殺されてしまったジュースWRLDの従兄弟にあたるラッパー、ヤング・ドルフのトリビュート盤ですね。犠牲となった当時36歳だったヤング・ドルフ、自分が幼少時ほとんど両親と過ごせなかったこともあって、2人の子供のしつけには厳しく、またコミュニティ活動も積極的にやっていて、母校の高校に寄付したり、射殺する直前は地元の癌治療センターにサンクスギヴィングの七面鳥200本寄付したりして、そろそろ引退もほのめかしていた矢先の不幸だったので、地元のコミュニティの哀しみは大きかったんでしょう。

地元への貢献で、その名前をメンフィス市街の通りに命名されたヤング・ドルフのためにこのアルバムに集まったのは、一緒にコラボアルバムも出していた舎弟のキー・グロックをはじめ、ヤング・ドルフが創立したレーベル、ペイパー・ルート・エンパイア所属のアーティスト達。楽曲自体はトラップのオンパレードですが、なかなかエモーショナルな作品になっています。こうしたラッパーの早逝、今年はないようにお願いしたいものです。

ということで以上今週のトップ10および圏外の初登場アルバムのご紹介でした。ここでいつものようにトップ10のおさらいです。今週ついにアデルRIAAのマークが、それも一気にトリプル・プラチナマーク(300万枚売上認定)が付いてます。それに対し、今週ドレイクはいよいよ実売100枚割っちゃいました(笑)それでもポイント数、先週からジリっと増やしてますからしぶといもんです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (1) (9) Encanto - Soundtrack <115,000 pt/19,000枚>
*2 (-) (1) Colors - YoungBoy Never Broke Again <79,000 pt/2,000-枚>
3 (2) (3) DS4Ever - Gunna <69,000 pt/179枚*>
4 (3) (3) Dawn FM - The Weeknd <43,000 pt/1,405枚*>
5 (5) (55) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <41,000 pt/2,170枚*>
6 (4) (10) 30 ▲3 - Adele <39,000 pt/13,213枚*>
7 (8) (21) Certified Lover Boy - Drake <35,000 pt/78枚*>
8 (7) (50) The Highlights - The Weeknd <34,000 pt/1,426枚*>
*9 (-) (1) Country Stuff: The Album - Walker Hayes <33,000 pt/16,000枚>
10 (10) (31) Planet Her - Doja Cat <32,000 pt/565枚*>

さて今週の「DJ Boonzzyの全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか。最後に恒例の来週の1位予想ですが、来週のチャート集計対象期間1/28-2/3のリリース・ラインアップを見てもこれといった強力な新譜は見当たらず(個人的には女性R&Bシンガーのアンバー・マークのアルバムが気に入ってますが)、なかなかポイントを大きく減らしそうにないミラベルのサントラ、このままだと来週も4週目の1位をキープしそうですね。ではまた来週。

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