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【恒例洋楽新年企画】DJ Boonzzyの第65回グラミー賞大予想#10~アメリカン・ルーツ部門(その2)

昨夜新宿カブキラウンジで開催した吉岡正晴さんとのグラミー賞授賞式直前大予想トーク&DJイベント「ソウル・サーチン・ラウンジ」においで頂いた皆さん、寒風吹きすさぶ中お立ち寄り頂きありがとうございました!比較的少数のオーディエンスの皆さんと、膝つき合わせた感じで楽しいイベントになりました。急遽音出し係もやりながらのトークは忙しかったですが楽しかったなあ。また来年もきっとやりますので、来年は今年以上に多くの方々においで頂くのを楽しみにしています!
ではアメリカン・ルーツ部門の後半、ブルーグラス、ブルースそしてフォーク部門の予想です。

41.最優秀ブルーグラス・アルバム部門

✗ Toward The Fray - The Infamous Stringdusters
○ Almost Proud - The Del McCoury Band

  Calling You From My Mountain - Peter Rowan
◎ Crooked Tree - Molly Tuttle & Golden Highway
  Get Yourself Outside - Yonder Mountain String Band

このカテゴリーも、さっぱり判らないアーティストだらけで予想も手探りで初めて今年で早くも12年目、暦が一回りしました。その間、年ごとにアーティストや作品を聴きこむことによる慣れもあって、これまでの11回の予想の成績は、本命◎的中7回、対抗○的中2回と、そんなに悪い成績ではないなと、ちょっと安心してます。そんな中今年のノミニーは、
* ナッシュビル拠点に活動する、プログレッシブ・ブルーグラス・バンド5人組、インファマス・ストリングダスターズ。この部門過去3回ノミネート、2018年第60回に見事受賞してます。
* 今年83歳、ブルーグラス・ギターのレジェンド、デル・マッコーリーとその息子2人を含むデル・マッコーリー・バンド。ソロ・グループ合わせてこれが27回目のグラミー・ノミネートで、この部門も過去2回受賞(2006年第48回と2014年第56回)。
* こちらも今年80歳のブルーグラス・レジェンド、ギターとマンドリンの名手、ピーター・ローワン。過去7回ノミネート(この部門は今年で4回目)ながら未だ無冠。
* 2017年女性として初めて国際ブルーグラス・ミュージック協会の選ぶ年間最優秀ギタリストを受賞、昨年は同協会の年間最優秀女性ボーカリストも受賞し、今年の主要部門の最優秀新人賞にもノミネートされてる、ギターとバンジョーの若き名手、モリー・タトル。今回初ノミネート。
* コロラド州出身のプログレッシブ・ブルーグラス・バンド4人組のヨンダー・マウンテン・ストリング・バンド。彼らも今回初ノミネート。

と、新旧入り乱れての実力派ぞろいのラインナップなのですが、ここは本命◎はやはり昨年ブルーグラスのみならずアメリカーナ・シーンで一気に注目を浴びたモリー・タトルのアルバムだと思います。レジェンド・ドブロ奏者のジェリー・ダグラスと共にプロデュースしたこのアルバム、ブルーグラスの伝統もしっかり踏まえながら、ビリー・ストリングスシエラ・ハルなど新世代のブルーグラス・アーティストや、マーゴ・プライスギリアン・ウェルチらアメリカーナ・シンガーソングライターの先輩達をゲストに迎えて、地に足の着いた内容で実力を感じさせますからね。ちなみに彼女は3歳の時に全身性脱毛症で体中の毛を失っており、この動画にあるように通常はウィッグを付けて演奏してますが、盛り上がってくるとウィッグを外して演奏するというなかなかインパクトのあるパフォーマンスも見せるアーティストです。

対抗○はレジェンドに敬意を表してデル・マッコーリー・バンドのアルバムに、そして穴✗は受賞経験を買ってインファマス・ストリングダスターズに付けておくことにします。

42.最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム部門

  Heavy Load Blue - Gov’t Mule
○ The Blues Don’t Lie - Buddy Guy
◎ Get On Board - Taj Mahal & Ry Cooder
✗ The Sun Is Shining Down - John Mayall

  Mississippi Son - Charlie Musselwhite

一方この伝統的ブルース部門の方は、伝統的の名に恥じず、5ノミニー中4組がいずれもブルース界の大御所揃い。特に過去ブルース・アルバム部門で7回受賞の大御所、バディ・ガイの存在が一際光っていて、メイヴィス・ステイプルズ、エルヴィス・コステロ、ジェイムス・テイラーなど多彩なゲストを迎えたこのアルバムも気迫に満ちていて聴き応えあるのですが、もう一人の大御所、タジ・マハールライ・クーダーと50年ぶりに一緒に録音した、1950年代のブルース・デュオ、ソニー・テリーブラウニー・マッギーの作品をカバーした激渋ブルース・アルバム『Get On Board』がこの部門を征するのではないか、というのが自分の見立てです。タジ・マハールは過去3回受賞、特に2018年第60回でもケブ・モーと組んだアルバム『TajMo』でコンテンポラリー・ブルース・アルバムを受賞してますから、ある意味有名ミュージシャンとのコラボ作というのは彼に取っての受賞の方程式なのかもしれません。ということで本命◎はタジライのアルバム、対抗○はバディ・ガイ御大に。

穴✗についてはこちらも大ベテランの白人ブルース・ハーピスト、チャーリー・マッスルホワイトも貫禄充分なのですが、彼は過去15回ノミネートのうち、唯一の受賞作が、今回コンテンポラリー部門でノミネートのベン・ハーパーとの共演アルバムのみ。一方もう一人の白人(かつイギリス人)ブルース・ミュージシャンの大御所、ジョン・メイオールはほぼ30年ぶり2回目のノミネートで今回のノミネート自体が快挙でもあるので、ジョンの方に付けておきたいと思います。

43.最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム部門

✗ Done Come Too Far - Shemekia Copeland
  Crown - Eric Gales
○ Bloodline Maintenance - Ben Harper
  Set Sail - North Mississippi Allstars
◎ Brother Johnny - Edgar Winter

こちらのコンテンポラリー・ブルース・アルバム部門というと、吉岡さんとの「ソウル・サーチン・ラウンジ」に過去来られた方はご存知のように、吉岡さんもギタリストのマサ小浜さんを通じて交友のあるファンタスティック・ネグリートが、過去3作は全てノミネートされしかも受賞してきた部門。ところが今回はこの部門に新作『White Jesus Black Problem』をエントリーせず、収録曲の「Oh Betty」をアメリカン・ルーツ・パフォーマンス部門にエントリーしたらしく、今回はファンタスティック・ネグリートのアルバムはここにノミネートされていません(アメリカン・ルーツ部門にはアルバム部門ないので、ここにもエントリーしとけばいいのに、と自分などは思うのですが)。

で、そうなるとこの部門でのノミニー中いかにも受賞しそうなのが、2014年に兄ジョニーが他界した後、しばらく沈黙を保っていた弟エドガーが、兄を偲んでこれまでに兄と演奏してきたブルースやロック楽曲を豪華ゲスト陣と共演している『Brother Johnny』。このゲスト陣の豪華さが半端なくて、ケニー・ウェイン・シェパード、ジョー・ボナマサ、ケブ・モー、デレク・トラックスといった腕利きのブルースマン達は当然のこと、元Totoスティーヴ・ルカサーとの自らのヒット曲「Rock ’N’ Rll Hoochie Koo」、ギターがジョー・ウォルシュ、ドラムスがリンゴ・スター、自らはピアノでマイケル・マクドナルドがソウルフルなボーカルを聴かせる、兄ジョニーの1974年のアルバム『John Dawson Winter III』からの「Stranger」など、聴き所満載。これはもう文句なしに本命◎でしょう

対抗○は、この前のトラディショナル部門でも触れた、2014年第56回にチャーリー・マッスルホワイトとのコラボ作『Get Up!』でブルース・アルバム部門を受賞しているベン・ハーパーに、そして穴✗はこの部門5回目のノミネーションになる(されど未受賞)ゴスペル系黒人女性ブルース・ボーカリストのシェメキア・コープランドの力強いボーカルが楽しめるアルバム『Done Come Too Far』に。

44.最優秀フォーク・アルバム部門

  Spellbound - Judy Collins
○ Revealer - Madison Cunningham
  The Light At The End Of The Line - Janis Ian
◎ Age Of Apathy - Aoife O’Donovan
✗ Hell On Church Street - Punch Brothers

ブルース部門と違って、2012年第54回以降はトラディショナル部門とコンテンポラリー部門が合体して一部門になってしまっているフォーク・アルバム部門。対象が絞られていることもあって、ここ毎年実力派の若手・ベテランが入り乱れて素晴らしい作品でノミネートされてます。今年のベテラン代表は大御所2人、60年代からの大ベテランで今回が6年ぶりのノミネートになるジュディ・コリンズと、70年代に人気を呼び、日本でもお馴染みながらこの部門では実にほぼ30年ぶりのノミネートになるジャニス・イアン!(ジャケの彼女の写真で時の流れを感じてしまいましたが…)そして残り3組はいずれも今のオルタナティブ・フォーク・シーンを代表する若手のミュージシャン達。うち2人、イーファ・オドノヴァンマディソン・カニンガムはアメリカン・ルーツ・パフォーマンス部門にもノミネートされガチで対決状態、ここでもおそらく受賞はこの2人のいずれかになるのではないかと見てます。パンチ・ブラザーズもアーティストとしては強力なんですが、今回ノミネートの『Hell On Church Street』は彼らが影響を受けた70〜80年代に活躍したブルーグラス・ギタリスト、トニー・ライスのアルバム『Church Street Blues』の再現アルバムということでちょっと評価対象作品としては異質ですよねえ。

で、自分が本命◎を付けたのは、イーファの『Age Of Apathy』。何と言っても全11曲、どれを取っても瑞々しい彼女のボーカルと演奏が素晴らしい作品ですし、あのアイム・ウィズ・ハーのメンバーで、自分のアルバムでグラミー受賞してないのはイーファだけなので、ここは彼女に是非取って欲しい、というファン心理もあるわけです。

もちろんマディソン・カニンガムの『Revealer』もフォーク楽曲に留まらず、オルタナ・ロックやジャズの要素なども感じられるあたりが秀逸なんですけど、フォーク・アルバムとしての評価とすると、イーファの作品に一歩譲らざるを得ないような気がします。従ってマディソンは対抗○。
そして当年83歳ながらあの美しいソプラノヴォイスが健在な大ベテランジュディ・コリンズの、半世紀を超える長いキャリアで初となる、全曲自作によるアルバム『Spellbound』に穴✗を付けておきます。

さてこれでジャンル部門は全て予想完了。次はミュージカルとヴィジュアル・メディア部門の予想です。あともう少し、最後までよろしくお付き合い下さい。

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