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今週の全米アルバムチャート事情 #184- 2023/5/20付

GWも終わって春本番のはずが、最近天候が今一つ思わしくない日が続いてますが、皆さんお元気ですか。何だかこのまま梅雨入りに向かって行きそうな感じがするので、天気のいい日はせいぜい屋外で活動レベルを上げたいな、と思う今日この頃。

"One Thing At A Time" by Morgan Wallen

さて今週5月20日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位、我らがエド・シーランが気持ち良くモーガン野郎を撃墜してくれる!と思って蓋を開けてみたら何とエドの新譜は112,000ポイントという、前作『=』の118,0000ポイントを更に下回る寂しい水準で、今週なぜか対先週比で2%アップの141,000ポイント(うち実売5,000枚)を確保してしまったモーガン野郎の『One Thing At A Time』がとうとう10週目の1位を記録。2021年の前作(って未だにトップ10に居座ってる)『Dangerous: The Double Album』の10週と並んじまいましたわ。いい加減にしてほしいわ、ホンマに。

ビルボード誌は、2作連続で10週以上1位を記録したのはモーガン野郎が男性ソロアーティストでは史上初だ、なんていう記事を上げてますね。過去に2作連続で10週以上1位を記録したのは、アデル(2011-12年に24週1位の『21』と2015-16年に10週1位の『25』)、ホイットニー・ヒューストン(1986年のデビューアルバム14週と1987年の『Whitney』の11週)、モンキーズ(1966-67年に13週1位のデビューアルバムと、1967年に18週1位の『More Of The Monkees』)そしてキングストン・トリオ(1960年に12週1位の『Sold Out』と同年に10週1位の『String Along』)の計5組だけなんだそうですわ。その他にもいろいろこれで記録達成したらしいけど、一つ言えるのは、モーガン野郎が他の4組とはアーティストの格というか何というかが全く比較にならないってこと。ファンもいい加減ストリーミングでこいつのポイント支えるのやめてくれないかなあ、ホントに。

"- (Subtract)" by Ed Sheeran

この間盗作訴訟に見事に勝訴したばかりのエド・シーランの新作『ー(Subtract)』は上記のように残念ながら112,000ポイント(うち実売81,000枚でアルバム・セールス・チャートでは断然の1位)で予想以上にモーガン野郎に及ばず2位初登場でした。先行シングルの「Eyes Closed」が本国UKではいつものように1位なのに、Hot 100では初登場26位と近年の彼の新曲のチャートアクションとしては最低だったんで、何だか嫌な気はしてたんですが、ここまで初週ポイントが低調だとは(当然UKでは1位初登場でした)。

今回のアルバムの作品は、コロナ期にテイラー・スウィフトの3部作のプロデュースや共作でシーンにおける存在感を一気に上げて、先週自分のバンド、ザ・ナショナルの新作もチャートインしてたアーロン・デスナーが全面的にエドと共同プロデュースし、曲もほとんどを共作しているという、「基本アーロンとエドの共作アルバム」になっているのが特徴です。それ以外の曲はここ何作かで一緒にやってるマックス・マーティン、シェルバック、フレッド・アゲインといったいつもの連中と組んでますが、もともとエモーショナルな楽曲を書くことの多いエドが、今回は特に内省的な楽曲を書いてるもよう。「Eyes Closed」は昨年ODで急逝したエドの親友で音楽ビジネス起業家のジャマル・エドワーズに捧げた曲ということだし、オープニングの「Boat」は鬱のスパイラルから抜け出せない心情を歌っているらしい。そしてそうした楽曲群が、アーロンとのコラボで一段と胸に響いてくるように感じるな。商業的には今ひとつかもしれないけど、じっくり聴き込む必要がある作品のように、僕には思えるね。

"Unforgiven" by Le Sserafim

今週トップ10内初登場のもう1枚は、今週も来たよKポップ!ってことで45,000ポイント(うち実売38,500枚)で6位に初登場してきた、5人組ガール・グループ、ル・セラフィム(Le Sserafim)の初フル・アルバム『Unforgiven』。去年11月にEP『Antifragile』(14位)で初チャートインしてたからこれが2枚めのチャートインで初のトップ10になります。そしてこのグループ、メンバーにサクラカズハという日本人が2人在籍してるので、日本人のトップ10チャートイン、という意味では今年3月のTWICEの『Ready To Be (EP)』(2位)以来ということになります

初フルアルバム、っていっても全13曲中6曲はこれまでにリリースした2枚のEP『Fearless』と『Antifragile』に収録されてた曲の再録らしいので、何だか使いまわし感満載でこれってどうよ?って感じもあるんですが。タイトル曲ではこれもギミックですがナイル・ロジャースをフィーチャーしてて、おまけにエンニオ・モリコーネの『続・夕陽のガンマン(The Good, The Bad & The Ugly)』のあのピロリロリ〜♪ってのをサンプリングしてるヒップホップ風ポップ・ソング。それ以外の曲は正統派ダンス・ポップ、って感じですが何か彼女たちじゃなくちゃ感がかなり希薄な感じがして、日本人がらみのトップ10は喜ばしい限りだけど、これでよくトップ10来たなあ、さすがKポップ・アーミーの購買行動や恐るべし、って感覚しかないですね、はい。

"Guardians Of The Galaxy Vol. 3: Awesome Mix Vol. 3" - Soundtrack

いろいろと考えさせる今週のトップ10内初登場2枚ですが、今週の11位以下100位までの初登場は3枚。その先頭を切ってるのが、このGWに日本でも公開されて既に人気を集めているシリーズ3作目&完結編のサントラ盤『Guardians Of The Galaxy Vol. 3: Awesome Mix Vol. 3』、15位初登場です。選曲センス抜群だった2014年の1作目サントラは見事ナンバーワン、2017年の2作目のサントラは4位とトップ10の常連だっただけに今回の15位はやや残念。前2作と選曲者も変わって70年代ポップ・ソングだけでなくて最近の曲まで含まれてるのがちょっと違う感あったのかも。

ただいきなりレディヘの「Creep」のアコースティック・バージョンで始まって、フィナーレはフローレンス&ザ・マシーンの「Dog Days Are Over」で締めるというセンスはなかなかだと思うし、映画そのものもかなり評判なので早く映画見なきゃ、と思ってるところです。個人的にはいろいろと自分のこれまでの洋楽活動にゆかりのある、スペイスホッグの「In The Meantime」が使われてるのに反応してしまいました。

"If Looks Could Kill" by Destroy Lonely

そのすぐ下、18位に登場してるのはアトランタ出身の今年21歳の新人ラッパー、デストロイ・ロンリー(本名:ボビー・ウォーデル・サンディマニー3世)のデビューフルアルバム『If Looks Could Kill』。2020年頃からミックステープを何本かリリースしてたところ、プレイボーイ・カーティの耳に止まって、翌年カーティのレーベル、オピウムと契約。そこから昨年リリースしたミックステープ『No Stylist』が91位にチャートインしてブレイクし、今回は満を持してのアルバムデビュー、ということらしい。

前評判も高くて、プレスの評価もそこそこ(ピッチフォークがけなしてないw)ということでこの高い順位に登場したということのようなんで、音を聴いてみましたが特に何ということもないよくその辺に転がってる、ちょっとオートチューン使ってるトラップ野郎のようにしか聞こえませんね、このオジサンには(笑)。この手のラッパーのアルバムにしては珍しく、ストリーミングとデジタルダウンロードだけじゃなくてCDに何とLPも出している、というあたりにレーベルの期待が見えるんですが。いきなりデビューで25曲(デジタルは26曲、CD/LPは27曲)と曲数多めなのはストリーミング目当てだとは思います。

"Lucky" by Megan Moroney

そして今週最後の100位までの初登場は、38位に入って来た、ジョージア州サヴァンナ出身の新人女性カントリー・シンガーソングライターのミーガン・モロニーのデビュー・アルバム『Lucky』。カントリー・ワルツ調のシングル「Tennessee Orange」は昨年末にHot 100の下の方に入って来て先週まで50位〜60位台でうろうろしてましたが、このアルバムリリースが引き金になったか、今週一気に30位に上昇、トップ40入りしてます

先月4月2日に開催されたCMT(カントリー・ミュージックTV)アウォードでは見事年間最優秀女性ブレイクスルー・ビデオ部門をこの曲で受賞してるミーガン嬢、一時期あのモーガン野郎と付き合ってるんじゃないかという噂が立ったこともあるらしく、そういうのも彼女の人気にプラスになってるんでしょうな、ちょっとどうかと思うけど。ちなみに「Tennessee Orange」というタイトルは、テネシー州立大学ノックスヴィル校のアスレチック・チーム、テネシー・ヴォランティアーズのチームカラーがオレンジということによってるようです。

ということでいつものようにトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (1) (10) One Thing At A Time - Morgan Wallen <141,000 pt/5,000枚>
*2 (-) (1) - (Subtract) - Ed Sheeran <112,000 pt/81,000枚>
*3 (3) (29) Midnights ▲2 - Taylor Swift <60,000 pt/12,000枚>
4 (4) (22) SOS ▲2 - SZA <54,000 pt/152枚*>
*5 (5) (122) Dangerous: The Double Album ▲5 - Morgan Wallen <49,000 pt/1,181枚*>
*6 (-) (1) Unforgiven - Le Sserafim <45,000 pt/38,500枚>
*7 (10) (194) Lover ▲3 - Taylor Swift <37,000 pt/7,000枚>
*8 (11) (53) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <36,000 pt/625枚*>
9 (7) (7) Gettin’ Old - Luke Combs <36,000 pt/2,560枚*>
10 (9) (23) Heroes & Villains - Metro Boomin <34,000 pt/1,073枚*>

エドでも撃墜できなかったモーガン野郎の強さに失意の思いいっぱいの今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがだったでしょうか?今週も最後は来週の1位予想(集計対象期間:5/12-18)、もうホントにモーガン野郎、誰か撃墜してくれ!と思うのですが、今週のリリースで可能性があるのはジョナス・ブラザーズヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインくらい。頼むわホントにもう!ということでまた来週。

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