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今週の全米アルバムチャート事情 #163- 2022/12/24付

いよいよクリスマスウィークに突入した今週の「全米アルバムチャート事情!」は寒波吹き荒ぶ日本を離れ、暖かいハワイからお送りします!なーんて、実は今週3年半ぶりの海外出張でホノルルに来てます。あ、ホントに仕事なんですよ、お客様のハワイ子会社法人のお仕事の付き添いでして。でもその合間をぬってレコ屋は覗いてきましたけど(笑)。

"SOS" by SZA

さて2022年ラス前のチャート、イヴ付の12月24日付Billboard 200、全米アルバムチャートの1位、先週の予想ではア・ブギー・ウィット・ダ・フディSZAの新譜が強力ではあるけど、地すべり的にテイラーが6週目の1位だろう、と言ってたんですが、いやいやわからんもんです。蓋を開けたら、何とSZAの5年ぶりのセカンド・アルバム『SOS』が、R&Bアルバムとしては過去最高の309,500ポイント(オンデマンド・ストリーミング4.05億回相当分)という驚異的なストリーミング・ポイントに強力に後押しされて、318,000ポイント(うち実売7,500枚)で今週も139,000ポイントを維持した2位のテイラーの倍以上のポイントでぶっちぎりの1位でした!これはSZAにとってもちろん初の1位になります(ファーストの『Ctrl』は最高位3位)。

前作から5年、と言ってもその間、彼女は何もやってなかったわけではなく、ケンドリック・ラマーとのデュエットで映画『ブラック・パンサー』のエンディングロール曲「All The Stars」(2018年7位)の大ヒットの他、今回のアルバムでも「Love Language」で共作者に名を連ねているタイ・ダラ・サインとのシングル「Hit Different」(2020年29位)、そして今回のアルバムに収録された「Good Days」(2021年9位)、「I Hate U」(同7位)、「Shirt」(今年11位)、更にはドジャ・キャットとのデュエット「Kiss Me More」(2021年3位)などなど、実に切れ目なくシングルをチャート上位に送り込んで来てましたよね。なのでアルバムを押し上げるマグマは充分に蓄積されてのこの結果でしょう。今アルバムも繰り返し聴いてますが内容はかなりいいです。もう1ヶ月リリースが早ければ、今発表してる2022年間アルバムランキングの上位に入ったんじゃないかと思ってて、間違いなく自分的にはビヨンセのアルバムよりは上に行きますね。この調子だと来週も1位をキープするっぽいので、今週はこれ以上の深堀りはやめて、来週に残しておきましょう。

"Me vs Myself" by A Boogie Wit da Hoodie

12月に入っての常で、トップ10でのクリスマス・アルバムの活躍が目立つ一方、初登場はSZA以外ではもう一つの1位争う候補に挙げていた、ア・ブギー・ウィット・ダ・フディの4作目、『Me vs. Myself』が53,000ポイント(うち実売3,000枚)で6位に初登場してます。今回のアルバムリリースは、もともと11月の予定だったのを、ドレイク21サヴェージの『Her Loss』のリリースと重なったので12月にずらしたとのこと。リリースに当たってGQ誌のインタビューで本人が「俺は毎回アルバム出すたびに少しずつ進化してるんだ。昔の曲がいいっていうファンもいるし、それは過去の思い出とかとつながってるから否定はしないけど、俺のデビュー作を聴いた後に今回のアルバム、聴いてほしい。曲の質や言葉の選び方やフロウすべてよくなってるから」と言ってるほどの自信作みたいですね。

確かに何曲か聴いた限りでは結構トラックもア・ブギーのフロウもなかなかタイトではあります。多作乱発しているYBNBAあたりと比較しても明らかに作品としてのクオリティは高い、と本人が言うのもわかりますね。アルバム参加ゲストは今回も多いですが、H.E.R.をフィーチャーしたシングル「Playa」以外はロディ・リッチ、トーリー・レインズ、コダック・ブラック、Gハーボ、リル・ダーク、そして9月に強盗に射殺されるという非業の死を遂げたPnBロックと、ラッパー中心の共演で固めてます。この辺も硬派なアプローチということである意味共感は持てますね。いきおい、トラックの感じはエモなものが中心になっていて、この辺もファンの支持を受けている要因の一つなんでしょう。

"LLNM2" by Anuel AA

さて年末も近くなって大型の新譜のドロップが先週くらいで一段落して、今年の旧譜のアルバム楽曲がラジオでも多くかかり、ストリーミングのプレイリストでも繰り返し聴かれるようになってくると新作のチャート登場がぐっと減ってくるんですが、今週もそんな傾向明らかに、11位以下100位までの初登場はわずか1枚。その唯一の初登場、30位に入ってきたのは、プエルトリコのラッパー兼レガトン・シンガー、アニュエルAAことエマニュエル・ガズメイ・サンティアゴくんの5作目になる『LLNM2』でした。LLNMって何かっていうと、前作でやはり30位だった『Las Leyendas Nunca Mueren(伝説は死なず)』のまあ続編ってことなんですね。

前作で大きくラテン・トラップ方向に舵を切ったアニュエルAAなんで、このパート2もその方向なのかな、と思って聴き出すとこれがあんまりトラップじゃないみたいですね。冒頭の「BRRR」は極めて90年代ヒップホップっぽいビートだったりするかと思うと、何とあのデヴィッド・ゲッタと組んで正しくEDMレガトン・ポップっぽい「Vibra」やってたり、ダベイビーをフィーチャーした「Wakanda」っていうどっかで聞いたことあるタイトル(笑)では前作以前ではおなじみだった正統派のレガトンやってたりと「何がLLNM2なんだよ」って突っ込みたくなるような内容です。でもラテントラップ一辺倒よりは遥かに聴く気がする作品ということで、バッド・バニーだとちょっとナンパすぎて、という人なんかにはいいかもしれません。

"Midnights" by Taylor Swift

ということで今週の100位までの初登場、計3枚でした。トップ10内にはおなじみのクリスマス・アルバムが3枚頑張っている今週のトップ10、ここでおさらいです。モーガン・ウォレンのアルバムが今週10位まで下がって久しぶりにトップ10から消えてくれそう。でも今週で通算100週目のトップ10を達成してしまって、この記録でBillboard 200史上5位の位置を依然確保しちゃってます。来週は消えてほしいな。あと、ようやくテイラーにダブル・プラチナ・マークが付いてますね(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) SOS - SZA <318,000 pt/7,500枚>
2 (2) (8) Midnights ▲2 - Taylor Swift <139,000 pt/74,000枚>
3 (1) (2) Heroes & Villains - Metro Boomin <102,000 pt/640枚*>
4 (3) (6) Her Loss - Drake & 21 Savage <67,000 pt/245枚*>
*5 (5) (106) Christmas ▲6 - Michael Buble <62,000 pt/10,000-枚>
*6 (-) (1) Me Vs. Myself - A Boogie Wit da Hoodie <53,000 pt/3,000枚>
7 (4) (32) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <51,000 pt/1,628枚*>
*8 (9) (71) The Christmas Song ▲6 - Nat King Cole <47,000 pt/3,499枚*>
*9 (12) (105) A Charlie Brown Christmas (Soundtrack) ▲5 - Vince Guaraldi Trio <47,000- pt/17,000枚>
*10 (7) (101) Dangerous: The Double Album ▲4 - Morgan Wallen <45,000 pt/2,050枚*>

ということでSZAがあっと驚く圧倒的1位を決めた今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか?さて来週はいよいよ今年最後のこのブログということで1年経つのは早いですね。このブログも既に4年目に突入していますが、来年も引き続き頑張って毎週アップしていきます。さて来週今年最後のチャートの1位予想ですが、集計対象期間は12/16-22ということでクリスマスショッピングがこれから佳境に入ろうというタイミングの中でSZAをトップから引きずり下ろす新譜があるか?しかし今回のSZAのトップはそのほとんどがストリーミングポイントなので、来週一気には減らないと思われせいぜいいいとこ2割減か。というと25万ポイントくらいは維持しそうなので、これを上回りそうな新譜というと….うーん、唯一可能性がありそうなのは、ホイットニーの伝記映画のサントラ盤兼ホイットニー楽曲のリミックス・アルバムくらいかなあ。でも20万ポイントはきつそうなので来週はSZAが2週目の1位をキープしそうです。それ以外にトップ10に来そうなのは、ベテラン・ラッパーのジージーと、既に故人のラッパー、ヤングドルフくらいでしょう。ではまた来週。皆さん、ハッピー・ホリデー!

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