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【恒例新年企画#3】Boonzzyの第63回グラミー賞大予想#1〜ポップ&コンテンポラリー・インスト部門

金曜日のコロナ感染再拡大による緊急事態宣言発出を受けて、この3連休自宅で過ごす方が多いのでは。せっかくの成人式も急遽中止になってる自治体も多いらしく、政府の中途半端+遅きに失した対応のトバッチリを受けた格好の若者たちが可哀そう。1ヶ月で収拾、などと政府は言ってますが、既に専門家は「1ヶ月での収拾は至難の技」と言ってますから、どこまでも読みも打つ手も甘いという他ありませんね。我々一人ひとりが感染拡大を防ぐ行動を続けるしかないようです。

0.年始洋楽企画第3弾、グラミー賞大予想始動にあたって

さてBoonzzyの恒例年末年始洋楽企画もその3,恒例のグラミー賞大予想ブログですが、そのグラミー賞も先週従来予定されていた1/31から3/14に延期の発表。それに伴って、こちらもここ数年毎年恒例で、新宿カブキラウンジで音楽評論家の吉岡正晴さんカール南澤さんとやってたグラミー予想トーク・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ」も1/20の予定から3月初旬に延期になりました。楽しみにしていてくれてた皆さん、ごめんなさい。でも緊急事態宣言もまた出ちゃったしカブキラウンジが営業自体困難な状況なので致し方ありません。1ヶ月では収拾しないにしても2ヶ月後の3月には開催できる状況だといいですが…一応イベントの告知ページのリンクを下記に挙げておきますね。

緊急発表。2021年初の「ソウル・サーチン・ラウンジ#56~グラミー賞大予想」(ゲスト阿多真人、カール南澤)、当初1月20日(水)予定でしたが、コロナ禍のためとグラミー延期を受け、一旦3月初旬に延期いたします。新日程は後日発表します→https://bit.ly/2LmPkNt #sslounge @kabuki0424 @Boonzzy

Posted by Masaharu Yoshioka on Tuesday, January 5, 2021

それで今回のグラミーの延期決定にはいくつかの背景がありそうです。一つには主催団体であるNARAS(全米録音芸術科学アカデミー)がどうもギリギリまでリアル開催に拘っていたと思われること(これまでバーチャル開催の可能性については一切言及していない)で、これは常にグラミーが横目で見てるアカデミー賞(こちらも2/28の予定が4/25に延期になってます)が依然フィジカル開催の方針を変えていないこと、昨年11月開催の第54回カントリー・ミュージック協会(CMA)アウォードが間引きスタイルのフィジカル開催に踏み切ったことが大きいのでしょう。しかしもう一つの延期の要因として、アカデミー賞も延期になったことに加えて、CMAアウォードに出席して、ウィリー・ネルソン功労賞を受賞した、黒人カントリー・シンガーのレジェンド、チャーリー・プライドが12月にコロナで亡くなったことが半端なく影響したと思われますチャーリーCMA出席の前後数回のテストで陰性だったということでチャーリーの遺族も含めてCMAに責任あり、とはされていないのですがやはりこうしたことが今回の延期決定にNARASを突き動かしたことは否定できないでしょうね。昨年開催のエミー賞はバーチャルとリアルのハイブリッド(司会とプレゼンターは会場にいるけど、ノミニー達はリモート参加)で開催したので、少なくともこういうやり方を検討すべきだと思うんですが、アカデミー賞との横にらみがどうもガンになってるようですね。ミュージシャン達の安全が第一のはずなんですが。

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と、コロナのことをグダグダ書いてるとキリがないので、NARASには見識ある対応を是非お願いすることにして、さっそく今年のグラミー賞の予想に行ってみましょう。

上記の通り、今年のグラミー賞授賞式は今のところ昨年同様LAのステイプルズ・センターでのフィジカル開催の予定(昨年は授賞式当日にそのステイプルズ・センターの主ともいうべきコービ・ブライアントと愛娘の事故死というショッキングな出来事があったのは記憶に新しいところ)で、司会は2年務めたアリシア・キーズに変わり、コメディアンのトレヴァー・ノアが初登場(しかし彼もフィジカル開催、嫌かもね)。

で、今年のグラミーの注目点(コロナによる影響以外)は、

★ ザ・ウィークンドのガン無視など、12月に発表された驚きのノミネーションの結果、主要4部門でなぜか複数のノミネーションを得ているビヨンセ、ブラック・プーマス、デュア・リパ、ミーガン・ザ・スタリオンといった連中が、本来本命と見ていたテイラー・スウィフトポスティらとどの程度勝負できるのか、というのは見ものだと思います。あと、主要4部門で何気に「Everything I Wanted」1曲でROYSOYにノミネートされてるビリー・アイリッシュの存在もかなり気になりますね。何といっても去年主要4部門独占してますからね

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★ また、今年から過去の発表作品数の縛りがなくなった新人賞部門にノミネートされたミーガン・ザ・スタリオンケイトラナダ(多分これまでの基準だと対象外だったはず)、一方まったくの無名で音楽メディアでもほとんど取り沙汰されてなかったチカ(女性ラッパー)、Dスモークらがノミネートされてて、新人賞部門がここ最近にも増して混乱状態。自分が下記のノミネーション予想で予想した強力候補のはずだった、ギャビー・バレット、ポップ・スモーク、ビッグ・シーフといった連中が不在の中で、まさしく団子状態。個人的にはフィービー・ブリッジャーズに取って欲しいけど。

★ 今回の日本人ノミニーは、最優秀コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門で『Live At The Royal Albert Hall』がノミネートされたスナーキー・パピーのメンバーとして小川慶太(2017年にやはりスナーキー・パピーのメンバーとして受賞)の一人のみ。でもアジアということでいうと、去年USチャートで旋風を起こしたBTSが「Dynamite」で最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門にノミネート。このカテゴリーについては後で予想しますが、強敵も多い中、BTS、チャンスはあるのか?

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といったところでしょうか。あ、そもそもリアル開催できるのか、ハイブリッドになるのかはたまたバーチャルになるのか、というあたりも大きな見所っちゃあ見所ですけど(笑)。というところで恒例の大予想の始まりです。まずはポップ&コンテンポラリー・インスト部門。

1.最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス部門

  Yummy - Justin Bieber
  Say So - Doja Cat
◎ Everything I Wanted - Billie Eilish
  Don’t Start Now - Dua Lipa
× Watermelon Sugar - Harry Styles(受賞)
○ Cardigan - Taylor Swift

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さてのっけから強力候補がひしめき合うこの部門、通常5つのところで6つの候補がノミネートされるという2009年第51回以来の変則ノミネーションになってます。ここではジャスティン・ビーバーハリー・スタイルズ以外の4候補はいずれも主要4部門のROYとSOYでガチでぶつかってる顔ぶれで、正直どれが来てもおかしくない感じ。そんな中で、今回の自分のグラミー全体のシナリオは「テイラーはアルバム部門、ROYはビリー、SOYはポスティかビリーかH.E.R」というもの。その場合、そのうちビリーテイラーがぶつかってるこのジャンル部門ではどっちが取るかというのが難しい読みになってきます。でもさすがに去年に続いてビリーが複数部門独占(ROYSOY)というのも考えにくいので、今年は主要部門1つとこのジャンル部門を押さえてくるのではないか、ということで本命◎はビリーに付けました。そうなってくると自然にテイラーは対抗○。

かわいそうなのはとばっちりを食って無印になっちゃってるドジャ・キャットですが、彼女には新人部門で頑張ってもらいたいところです。なので、穴×は、本来主要のROYかアルバム部門にノミネートされてもおかしくなかったハリー君に付けましょう。え?デュア・リパじゃないのかって?いやすいません、だいたいこの子が主要部門複数ノミネートってのが(ザ・ウィークンドがいれば入らなかったはずなのに)自分は気にくわないんですわ。悪しからずw

2.最優秀ポップ・デュオ・グループ・パフォーマンス部門

  Un Dia (One Day) - J Balvin, Dua Lipa, Bad Bunny & Tainy
× Intentions - Justin Bieber Featuring Quavo
○ Dynamite - BTS

  Rain On Me - Lady Gaga with Ariana Grande(受賞)
◎ Exile - Taylor Swift Featuring Bon Iver

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先ほども前振りで書きましたが、BTS、唯一のノミネートがこの部門。なので、同じアジア勢として是非取って欲しいところ。ただ、この部門は前の部門ほど競争激しくないんですが、いかんせんテイラーボン・イヴェールとの美しいデュエット「Exile」がノミネートされちゃってるんですよねー。あの『Folklore』のアルバムでも二人のコール&レスポンスのような構成がテイラーにとってのある意味新境地を開いた、屈指の楽曲のこの曲を前にしては、本命◎はテイラー+ボン・イヴェールに付けざるを得ないでしょうね、残念ながら。なので、残念ながらBTSは対抗○ということで。でもチャンスはゼロではないと思いますよ、ええ。

そして穴×は、この前の部門では「おーいちー、おいーちー、おーいちーなー」っていうバカナンバーでノミネートされてたけど、この部門では、PVの内容も含めて社会的包容力を見せている「Intentions」でノミネートされているジャスティン・ビーバークエイヴォの二人に進呈。

3.最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム部門

○ Blue Umbrella - (Burt Bacharach &) Daniel Tashian
× True Love: A Celebration Of Cole Porter - Harry Connick, Jr.
◎ American Standard - James Taylor(受賞)

  Unfollow The Rules - Rufus Wainwright
  Judy - Renée Zellweger

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去年のこの部門、過去に2006〜2014年に7回ノミネート4回受賞という強さを誇っていたマイケル・ブブレが、2018年第60回に続いて受賞を逃す、しかも受賞したのがこの部門初ノミネートで初受賞というエルヴィス・コステロという、ある意味一時代の終わり的な事件が起きてました。一時はマイケルとこの部門を独占していたトニー・ベネット翁も、さすがにもう新作が出る気配もなく、今年はそのどちらもノミネートされてません。そんな中で今年圧倒的な存在感を放っているのがジェイムス・テイラーの『American Standard』。ジェイムスが自宅の納屋のスタジオで録音した、全編アコースティックで昔のミュージカルのナンバーや、彼自身が子供の頃親しんだアメリカン・スタンダード・ソングブックをカバーするという作品ですが、録音も最高で、ジェイムスの素晴らしい歌声も相まって、これが素晴らしい作品になってますから、今年の本命◎はこれ以外は考えられないですね。

ただ、他のノミニーもいずれ劣らず強力な顔ぶれで、対抗○はどれにするか相当迷いましたが、一昨年第61回の最優秀アルバム部門を圧倒的な強さでかっさらったケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』を共同プロデュース、曲も半分以上を共作していたダニエル・タシアンが、御大バート・バカラックとコラボした5曲入EP『Blue Umbrella』が何だかとっても気になるのでこちらを対抗○にしました。その他のノミネートでは、あのジュディ・ガーランドの激動の半生を描いた映画『Judy』で話題の演技を見せたルネ・ゼルウェガーのその映画のサントラ盤や、その中で一曲デュエットしていたルーファス・ウェインライトの久々の力作なんかもありますが、この部門過去にも2002年第42回に受賞経験のある、ハリー・コニックJr.コール・ポーター作品集に穴✗を付けときます。

4.最優秀ポップ・ボーカル・アルバム部門

  Changes - Justin Bieber
× Chromatica - Lady Gaga
  Future Nostalgia - Dua Lipa(受賞)
○ Fine Line - Harry Styles
◎ Folklore - Taylor Swift

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さてこの部門、毎回王道作品が受賞してますが、もっというと主要部門の最優秀アルバム部門にノミネートされたアルバムがこの部門にノミネートされて取れなかったのは、過去10年間で7回中2回しかないという、主要部門との連動性が極めて高い部門なんですね。去年も「ここも取っちゃうんかよ」って感じでビリー・アイリッシュがさらって行きましたし。で、今年はそうなるともうテイラーが本命◎、これしかないですね。そして対抗○ですが、もう1つの主要賞ノミネートアルバムのデュア・リパ、と思うでしょ。でも自分はそこには付けず、本来主要部門にノミネートされるべきだったんじゃないかな、というハリー・スタイルズに付けますね。このアルバム、昨年リリースのアルバム中、ヴァイナル(LP)の売上がトップだったようで、単にワンダイのファンだった層だけではなく、こだわりのポップ・ファンにも評価されてると思いますから。というか、ハリー、どこかで一個くらい取らせてあげたいなと。それくらいこのアルバムは出来が良かったですからね。

穴✗はジャスティンガガか、で迷いましたが、どちらも過去この部門でノミネート経験あれど、受賞経験あるのはガガなのでこちらに。え?デュア・リパ

5.最優秀コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門

○ Axiom - Christian Scott aTunde Adjuah
  Take The Stairs - Black Violin
× Americana - Grégoire Maret, Romain Collin & Bill Frisell
◎ Live At The Royal Albert Hall - Snarky Puppy(受賞)

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さて、ポップ・ソロ部門の反対で、この部門は2001年第43回に創設されて以来、初めて5作品でなくて4作品しかノミネートされなかった部門です。といことはいずれも凝縮された素晴らしい作品なんだろうな、と思いながら一わたり聴いてみた感想は「こりゃ、どれが取ってもおかしくないわ」というもの。強烈なアフリカン・パーカッションをベース・リズムにクールなフリージャズ的音像を展開する、ここ3年連続ノミネートのクリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュア。ヒップホップ・アーティストやロック・バンドとの共演を重ねる中でバイオリンというおよそそういう世界とはイメージの異なる楽器を操りながらスケールの大きい世界観で壮大な音楽を展開する黒人デュオ、ブラック・バイオリン。スイス生まれNY育ちのハーモニカ奏者グレゴワール・マレット、フランス人のジャズ・ピアニストのロメイン・コリンとロック・ファンにはお馴染みの激渋ギタリストのビル・フリゼルの3人がダイア・ストレイツ、ジミー・ウェッブ、ボン・イヴェールのカバーなどを通じて織りなす心癒やす音像世界。そしてNYはブルックリン・ベースの、マイケル・リーグ率いるジャンルレス・インスト演奏集団、スナーキー・パピーによるロンドンの最高舞台でのライブ盤。いやあどれも独自の素晴らしい世界観を持った音像を展開している盤ばかりですよ。でも、本命◎は、この部門では過去58回、59回と2回ノミネートで2回とも受賞を決めているスナーキー・パピーがやっぱり強そうなので彼らに付けたいですね。日本人パーカッショニストの小川慶太さんもいることだし。このグループ、数年前に横浜赤レンガ広場で行われたブルー・ノート・ジャズ・フェスティバルでライブ見ましたけど、やはりジャンル関係なく、テンション高いグルーヴを作り出すライブが興奮する、そんなフュージョン集団ですよね。こういうアーティストってNARASも好みだと思いますしね。

そして対抗○はやっぱりここ3年ノミネートと、NARASからのレコグニションが高まってる感のあるクリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアかなあ。今回のアルバムも前回ほどアフリカアフリカしてませんが、独特のクールネスがカッコいい作品です。そして穴✗は、トランプの凋落が見え始めた今、アメリカで今ほど移民系アーティストの作り出す音楽に注目が集まってる時はないと思うので、グレゴワール/ロメイン/ビルの『Americana』に。

ということで今年も始まった恒例グラミー賞予想企画の第1回、全部で51部門予想しますのでまだ10分の1ですが、グラミー延期のおかげでちょっと時間的余裕もできましたので、ちょっとロングランになりますがこのシリーズ、頑張ってアップしていきますので引き続きお楽しみに。

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