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今週の全米アルバムチャート事情 #140- 2022/7/16付

先週末の衝撃の事件の後、日曜日の参院選は恐れていた自民党の圧勝。投票率の低さもあって憂鬱な選挙結果でしたが、東京選挙区は何とかれいわの山本太郎氏と共産の山添拓氏が選出されて、東京都民の良心を見た感じで少し安堵しました。しかしこの後の国会運営や与党+αの改憲への動きの可能性を考えると更に憂鬱に。皆さん、きちっと今後の政治動向に対しては、国民に不利益に進まないよう、目を離さずに行きましょうね。

"Un Verano Sin Ti" by Bad Bunny

さて今週の全米アルバムチャート、7月16日付のBillboard 200の1位ですが、先週の予想がやはり当たって、今週も先週からわずか4,000ポイントしか減らさず111,000ポイント(実売は多分1,000枚以下)とこれでデビュー以来9週連続10万ポイント以上ドレイクの『Views』に並んでしまった、バッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』が通算4週目の1位をキープしてます。来月からはこのアルバムのプロモーションを兼ねたワールドツアーがスタートしますから、ライブ観に行ったファンがガンガンにストリーミングでこのアルバム聴いて、更にポイント減を下支えの傾向が持続しそうですねえ。

だんだんこのアルバムのことで書くネタも減ってきたし(笑)この後も実はまだまだ1位続きそうな雰囲気もあるので、今週はこのアルバムから「今週のバッド・バニーの一曲」をご紹介することにしましょうか。アルバムリリースの週に他の曲と同時に一番人気「Moscow Mule」の4位に次いで5位に登場してきた「Tití Me Preguntó」は、ゆったりめに始まるけどヴァースに入るといつものレガトンのリズムでバッド・バニー節が繰り出される曲。タイトルは「伯母さんが俺に訊くんだよ」という意味ですが、何を訊くかというと「あんた、ちゃんとガールフレンドはいるの?」と、いかにもラテン乗りな感じの伯母さんのイメージがくっきりと浮かぶそんなタイトル。で、バッド・バニーの答えは「いっぱいいるよ。今日はあの子、明日はあの子、俺とチョメチョメした子はニッコリさ/コロンビアの子は毎日俺に手紙書いてくるし、メキシコの子ともちゃんとキメてるし、サン・アントニオのあの子は未だに俺に惚れてるし」といった軽ーい調子のいかにもなナンバーです(笑)。バッド・バニー版「California Girls」って感じですかね。今のご時世、ジェンダー的に眉をひそめる向きもあるでしょうけど、いかにもラテンなこの軽さも彼の魅力なんでしょうね。

"Planet Zero" by Shinedown

今週のトップ10内初登場はもう1枚、フロリダ州ジャクソンヴィル出身のメインストリームなハード・ロック・バンド、シャインダウンの7作目になるアルバム『Planet Zero』が5位に初登場してます(49,000ポイント、うち実売43,000枚)。トップ40ファンであれば2008年のトップ10ヒット「Second Chance」(7位)で覚えてる人も多いでしょうが、その後もメインストリーム・ロック・ソング・チャートでは安定した人気を持続してて、2003年のデビュー以来そのチャートで17曲のナンバーワンを記録していますHot 100からはここ10年くらいご無沙汰ですが、だいたいシングルが出れば間違いなくメインストリーム・ロック・チャートで1位になる(過去29曲のシングルのうち17曲なんで打率5割以上)高い人気を誇ってるんですよね

で、今回のアルバムからもさっそくタイトルナンバーがメインストリーム・ロック・ソング・チャートで1位を記録、サウンド的には「Second Chance」の頃はドートリーとか、クリードとかああいった感じのポップさとR&Bテイストを内包したちょっと軽めのハードロック、って感じだったんですが、かなり重厚でハードなサウンドに進化していて、タイトルからも判るように、PVは近未来SF的なので、ちょっとラッシュとかも想起するサウンドになってます。今この手のちょいメタル寄りのハードロックって全米では人気あるので、このアルバムも売れて当然かなと。これで5作連続BB200のトップ10入りを果たしてますね。

"Stranger Things" Soundtrack

ということで今週のトップ10内初登場はシャインダウンのみ。で、11位以下圏外に目を向けると、何と今週は100位までの初登場はゼロでした。これは今年1月22日付、6月4日付に続く3回目の現象。先週名前を上げたイマジン・ドラゴンズの新譜なんて200位内にも入らず、今週の初登場一番人気は、例のケイト・ブッシュの「Running Up That Hill」が劇中で使われて今大ヒットしているネットフリックスのSFホラー・ドラマ、『Stranger Things』のサントラが177位という状況。確かに今週はかなり新譜が薄い週ではありますがこの状況、音楽消費自体が沈滞してるのかな、と不安になります。

"The Highlights" by The Weeknd

さて気を取り直して今週のトップ10おさらいです。初登場以外では、ザ・ウィークンドのベスト盤『The Highlights』がまたまた圏外52位から9位に急上昇。これ、何回目のトップ10復活でしょうかねえ。この記事をずっと読んで頂いてる方ならお判りだと思いますが、アルバム収録の楽曲のストリーミング・ポイントは、その楽曲を収録しているアルバムが複数ある場合は、一番実売が多いアルバムに全部加算される、というあのビルボードのおかしなルールのおかげで、今週たまたまこのベスト盤がそういう楽曲収録のオリジナル盤よりわずかに売上が多かったために(1000枚以下と1000枚ちょい超え、くらいの差らしいです)このベスト盤にそういう楽曲のストリーミングポイントが全部集まったことによるバウンスバックというわけで。こんな不健康なチャート、いつまでやるんでしょうか。ビルボードの良心に期待しましょう(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (9) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <111,000 pt/1,000-枚>
2 (6) (7) Harry’s House - Harry Styles <54,000 pt/11,643枚*>
3 (3) (3) Honestly, Nevermind - Drake <52,000 pt/642枚*>
4 (8) (78) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <50,000 pt/1,148枚*>
*5 (-) (1) Planet Zero - Shinedown <49,000 pt/43,000枚>
6 (5) (17) 7220 ● - Lil Durk <42,000 pt/86枚*>
7 (10) (10) I Never Liked You - Future <40,000 pt/124枚*>
8 (4) (2) Breezy - Chris Brown <35,000 pt/958枚*>
*9 (52) (73) The Highlights - The Weeknd <34,000 pt/1,321枚*>
*10 (12) (5) Twelve Carat Toothache - Post Malone <31,000 pt/1,778枚*>

今週の「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後はいつものように来週の1位予想で、今回の対象期間は7/8-14ですが、来週おそらくまだ10万ポイント前後を維持していると思われるバッド・バニーの上を行きそうなのは、キッド・カディのコンピ盤くらいか。ラテン対ヒップホップの対決、という感じです。それ以外では最近益々勢いを増しているKポップ勢のエスパの2枚目のEPが今回はトップ10に食い込んできそうです(前回20位)。ではまた来週。

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