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今週の全米アルバムチャート事情 #167- 2023/1/21付

先週はジェフ・ベック高橋幸宏さんと、自分のようなアラ還世代の音楽ファンが同時代を過ごした偉大なミュージシャンの方々の訃報が続いてなかなかキツい一週間でした。一方でコロナの国内感染者数・死者数も引き続き増加傾向の最近、皆さんもくれぐれもご注意下さい。さて、週末に頑張って第65回グラミー賞大予想ブログを3連発でポストしてますが、音楽評論家の吉岡正晴さんとのグラミー大予想DJ&トーク・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ」は先週もご案内のとおり、1/24(火)新宿カブキラウンジで19時から開催です。詳細は吉岡さんの下記のnoteの記事をご覧下さい。いよいよ来週の開催、寒い日が続きますが、熱いグラミートークで盛り上がりましょう!皆様のお越しをお待ちしています。

"SOS" by SZA

さて今週1月21日付のBillboard 200、全米アルバムチャートの1位は先週の予想通り今週も強かったSZAの『SOS』がこれで5週目の1位をキープしてます。今週特筆すべきはこのアルバム、先週とほとんど同じポイント数の125,000ポイントを維持していること。これで来週1位だと、1993年のジャネット・ジャクソンjanet.』が持つR&B女性シンガーのデビューからの連続1位記録(6週)に並ぶことになります。そしてもしそれを超えて7週1位ということになると、1987年、今バイオピックが話題のホイットニー・ヒューストンのセカンド・アルバム『Whitney(ホイットニーII〜すてきなSomebody)』の11週に次ぐ史上2番目の記録になりますね。来週再来週のリリース・スケジュール見ると強力な新譜リリースが見当たらないので、この記録達成の可能性はかなり大。年初からなかなかスゴいことになりそうです。

収録曲の中では特に先週同名映画のオマージュ感満載のMVがリリースされた「Kill Bill」(最高位3位、上昇中)と、当初からの先行シングルとされていたバラードの「Nobody Gets Me」(最高位10位)がダントツでストリーミングを稼いでいて、先週のチャート期間にはそれぞれ2800万ストリーミングと1040万ストリーミングを稼いでたということで、しかも「Kill Bill」はストリーミングポイントを先週伸ばしてるので、今週さらにHot 100での上昇が予想されます。来月21日にはオハイオ州コロンバスを振り出しに3月末までのツアーも始まるようなので、1位はあと数週としても、上位にかなり長期に留まり続けることになりそうですね

"I Rest My Case" by YoungBoy Never Broke Again

さて今週のトップ10内初登場は1枚だけ、先週SZAと競るかも、といっていたヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン(YBNBA)アトランティックからモータウンへの移籍第1弾アルバム『I Rest My Case』ですが、わずかに29,000ポイント(うち実売1,000枚)とSZAとは比べものにならない水準で、9位初登場がやっとという状況でした。

アトランティック在籍中の5年半の間にアルバム4作、コンピレーション2作、ミックステープ19作(うちコラボ作6作)EP3作の合計28作と年間平均5作以上をドロップしながらこれまではトップ10が12作(うち1位が4作)と、ヒット作品を次々に放ってきたYBNBAですが、今回の移籍第1弾で29,000ポイントというのは前作の『The Last Slimeto』(2022)が初週10万ポイント超えだったことを思うといかにも低調のスタート。やはりいくら何でも数打ち過ぎだと思うんだけどねえ。内容もいつもと変わらないベタベタのトラップ一色なので、いい加減飽きられ初めているんじゃないですかねえ

"Love Yourself: Her" by BTS

11位以下100位までの圏外も今週は初登場はわずか2枚。でも初登場じゃないけど再登場でちょっと注目すべきなのが、13位に再登場してきた、BTSの『Love Youself: Her』。2017年リリースの5作目のEPで、当時Billboard 200に7位で初登場した彼らのブレイクアウト作品だけど、何で今頃再登場?というのも、今回彼らの作品としては初のヴァイナル・リリースがあったから。そしてただのヴァイナルだけのリリースじゃなく、当然各メンバーのフォトカードなどが同梱されたKポップらしいヴァイナル・リイシューでここに飛び込んできたというわけ。やはりBTS、リイシューでも強いねえ

"Coke Boys 6: Gangsta Grillz" by French Montana Hosted by DJ Drama

さて11位以下の初登場行きます。まず11位初登場で惜しくも久々のトップ10を逃したのが、フレンチ・モンタナDJドラマとコラボしたミックステープ『Coke Boys 6: Gangsta Grillz』。フレンチ・モンタナ、ここのところ出す作品いずれもチャート的には振るわない状況が続いてて、トップ20に入ってきたのは2017年に全米3位を記録したセカンド・アルバム『Jungle Rules』以来6年ぶりなんで、フレンチ・モンタナとしては万々歳なんじゃないかな。アルバムのフォーマットとしては各トラックの冒頭でDJドラマが「DJドラマあー!」と叫んでる、DJキャレドと同様のDJミックステープスタイルですね。

基本トラップベースのトラックが多いんだけど、この人の場合モロッコからの移民系アメリカ人だっていうのが影響してるのか、ベタベタのトラップ一辺倒じゃなくて、トラックなんかもちょっと工夫してる感じのトラックもあるからまだ聴けるな、って感じ。ただDJドラマの怒鳴り声が正直鬱陶しいけど(笑)。

"Public Housing Pt. 2" by Real Boston Richey

そしてもう1枚の初登場は39位に入ってきた、フロリダはタラハッシー出身のラッパー、リアル・ボストン・リッチーの2作目のミックステープ『Public Housing, Pt. 2』。去年リリースした『Public Housing』が60位だったから、順調にゲームをナッチアップ(一段階上げ)してきてるみたいだけど、この人も基本普通のトラップ・ラッパー。

まあトラップといってもバックトラックがドヨーンとした808のベースとかじゃなく、ピアノベースのちょっとエモR&Bっぽいトラックも使っていて、結構タイトなフロウを聴かせてはいるのでこれもフレンチ・モンタナ同様、まだトラップでは聴ける部類。でもリル・ダークをフィーチャーした「Keep Dissing 2(ディスしっぱなし、その2)」なんてトラックもあってネガティブな感じなので、自分は1回聴いたらもういいや、って感じですけどね。あと、今回チャート順位上げてきたなあ、と思ったらこのミックステープ、何と34曲も入ってやんの。そら曲数多ければストリーミングで稼げるわなあ。

ということで初登場はすべてトラップ系ラッパーの作品という、なかなか自分的には盛り上がらないチャートだった今週、いつものようにトップ10のおさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (5) SOS ● - SZA <125,000 pt/3,329枚*>
2 (2) (12) Midnights ▲2 - Taylor Swift <81,000 pt/25,070枚*>
3 (3) (6) Heroes & Villains - Metro Boomin <57,000 pt/232枚*>
4 (4) (10) Her Loss - Drake & 21 Savage <51,000 pt/173枚*>
5 (5) (36) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <45,000 pt/789枚*>
6 (6) (105) Dangerous: The Double Album ▲4 <43,000 pt/1,230枚*>
7 (8) (34) American Heartbreak - Zach Bryan <33,000 pt/2,760枚*>
8 (9) (13) It’s Only Me ● - Lil Baby <31,000 pt/96枚*>
*9 (-) (1) I Rest My Case - YoungBoy Never Broke Again <29,000 pt/1,000枚>
10 (10) (34) Harry’s House ▲ - Harry Styles <26,000 pt/6,666枚*>

先週に引き続き今週も地味目だった「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。では最後に恒例の来週1位予想ですが、冒頭にもお伝えしたように、来週チャート対象期間の1/13~19も目立った強力な新譜のリリースが見当たりません。SZAのポイントが来週大幅にダウンする要因もあまり考えられず、おそらくSZAの6週1位でジャネットとのタイ記録達成はまず間違いないものと思われますね。ではまた来週。


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