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【恒例洋楽新年企画】DJ Boonzzyの第65回グラミー賞大予想#3~ロック&オルタナ部門

さあドンドン行きます、グラミー賞予想。次はロック&オルタナ部門。今年からオルタナ部門が一つ新設されてます

8.最優秀ロック・パフォーマンス部門

  So Happy It Hurts - Bryan Adams
  Old Man - Beck
◎ Wild Child - The Black Keys
○ Broken Horses - Brandi Carlile

  Crawl! - Idles
× Patient Number 9 - Ozzy Osbourne Featuring Jeff Beck
  Holiday - Turnstile

この部門は他の部門同様、通常5組のノミネートのはずですが、史上最多の7組がノミネートされているということは、アカデミーメンバーによる投票数で、5位タイが3組あったということになります。そして他の同じロック部門のノミネート傾向からいって、ずばり5位タイだったのは、ブライアン・アダムス、ベックそしてパンク・バンドというレッテルを嫌ってるUKのパンク(風)バンド(笑)、クローラーじゃないかと睨んでます。逆にいうとそれ以外のノミニー達とのオーラの差が大きいってことで。

で、本命◎ですが、ダン・アウワーバックが今年4回目プロデューサー部門にノミネートされている(2013年55回では見事受賞)、ブラック・キーズがこのロック部門全般で歴史的に強いし、今回のアルバムは個人的には2011年の『El Camino』以来の快作だと思ってるので、迷うことなく彼らに進呈。

対抗○はグラミー・ダーリンのブランディ・カーライルか、オジーかで迷うところですが、オジーは歴史的にメタル部門(旧ハード・ロック部門)に強いので、ここは昨年出版された自伝のタイトルでもある、ブランディの「Broken Horses」にして、オジーは穴×を付けて見ました。突然ジェフ・ベックの訃報が舞い込みましたが、既に最終投票は1/4に完了しているので、残念ながら選考に影響はなさそうです。

9.最優秀メタル・パフォーマンス部門

× Call Me Little Sunshine - Ghost
○ We’ll Be Back - Megadeth

  Kill Or Be Killed - Muse
◎ Degradation Rules - Ozzy Osbourne Featuring Tony Iommi
  Blackout - Turnstile

そしてメタル部門ですが、ここは前の部門でも触れたように、オジーがかなり強い部門です。過去6回ノミネート中、3回(1994年36回、2000年42回と2014年56回はブラック・サバスのメンバーとして受賞)受賞してまして、今年予定されている今回のアルバム『Patient Number 9』のツアーを最後にステージ引退を表明しているだけに、最後の花道ということで彼に本命◎の票が集まるのは必至でしょうね。盟友トニー・アイオミとのナンバーというのも支持者にはグッとくるところでしょう。

一方対抗○ですが、この部門12回目のノミネートにしてやっと2017年59回「Dystopia」で受賞を果たしたメガデスに付けました。今年もオジーがいなければ間違いなく最右翼なんでしょうがね。そして穴×は2018年58回にこの部門で初ノミネート初受賞を決めて、リードボーカルの骸骨メイクやメンバーの被りものスタイルなどおどろおどろしいイメージとは裏腹に80年代っぽいポップでストレートな演奏で最近ハードロック・ファンの間で人気が上がりつつあるゴーストに付けておきましょう。何せ昨年はこの曲収録のアルバム『Impera』が全米2位を記録するというブレイクぶりだったので、来年以降も活躍が期待できそうです。

10.最優秀ロック・ソング部門(作者に与えられる賞)

◎ Black Summer - Red Hot Chili Peppers (Flea, John Fruciante, Anthony Kiedis & Chad Smith)
  Blackout - Turnstile (Brady Ebert, Daniel Fang, Franz Lyons, Pat McCrory & Brendan Yates)
○ Broken Horses - Brandi Carlile (Brandi Carlile, Phil Hanseroth & Tim Hanseroth)
  Harmonia’s Dream - The War On Drugs (Robbie Bennett & Adam Granduciel)
× Patient Number 9 - Ozzy Osbourne Featuring Jeff Beck (John Osbourne, Chad Smith, Ali Tamposi, Robert Trujillo & Andrew Wotman)

今回のロック関係ノミネーションで今一つ納得がいかないのが、レッチリの『Unlimited Love』が軒並みノミネーションを外していること。10年ぶりにフルシャンテが返ってきて内容も充実、メディアの評価も高く、自分も年間アルバムランキングの25位に入れたくらいで、正直主要4部門の最優秀アルバムにノミネートされても全くおかしくないと思ったんですが、何と主要部門どころか、次にお届けする最優秀ロック・アルバム部門にすらノミネートされていないという状況。そうなってくると、レッチリ関係で唯一ノミネートされている、このロック・ソング部門で『Californication』期を彷彿とさせる「Black Summer」には是非取って欲しいということで本命◎。何せ去年はこの曲、ビルボード誌のロック・エアプレイ・チャート1位を13週独走してましたからね。

これに対抗○するには、単なるグラミー・ダーリンというだけでなく、今年の最優秀アルバム候補の1枚である素晴らしいアルバム『In These Silent Days』の中でも力強くロックする、ブランディ・カーライルの「Broken Horses」でないとダメでしょう。一昨年アルバムリリース直後に出演したサタデイ・ナイト・ライブでのこの曲の熱演をYouTubeで見ましたが、圧倒的でしたねえ。穴×はここでもしっかりノミネートされている、亡くなったことがまだ信じられないジェフのリード・ギターが切ない、オジーのこの曲を。ちなみにレッチリのドラマー、チャド・スミスはこの曲にも参加していて、作曲者にも名を連ねてますね。

11.最優秀ロック・アルバム部門

◎ Dropout Boogie - The Black Keys
  The Boy Named If - Elvis Costello & The Imposters
  Crawler - Idles
  Mainstream Sellout - Machine Gun Kelly
× Patient Number 9 - Ozzy Osbourne
○ Lucifer On The Sofa - Spoon

そしてそのレッチリの『Unlimited Love』が何故か無視されてしまっているロック・アルバム部門。いやあしかしレッチリを差し置いて、ラップからメロコア・パンクに路線変更したばかりのマシンガン・ケリーのアルバムがこの部門にノミネートされるというのは、いかにも解せません

そんな中この顔ぶれの中で一際存在感を示しているのが、ロック・パフォーマンス部門でも同様の存在感を見せていたブラック・キーズ久々の快作『Dropout Boogie』。2013年55回でこの部門、ジャック・ホワイトブルース・スプリングスティーンを抑えて見事に受賞した『El Camino』以来の快作だと思っているこのアルバム、どう見て本命◎だと思います。

そしてここでもノミネートされているオジーもやはり光っているんですが、自分が対抗○を付けたいのが骨太のブチブチ言ってるようなロックを聴かせてくれているスプーンの『Lucifer On The Sofa』。「全米アルバムチャート事情!」の方でも書いたように、自分はこれまでこのバンドあまりちゃんと聴いてなかったんですが、今回このアルバム聴いて一発で気に入ってしまったので、彼らこれがグラミー初ノミネートなんですが、敢えて対抗印を付けさせてもらいます。従ってオジーは穴×ということで。

12.最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス部門(新設部門)

  There’d Better Be A Mirrorball - Arctic Monkeys
◎ Certainty - Big Thief
× King - Florence + The Machine
○ Chaise Longue - Wet Leg

  Spitting Off The Edge Of The World - Yeah Yeah Yeahs Featuring Perfume Genius

今年新たに追加された5つの部門のうちの一つ、最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス部門。これまではアルバム部門だったんですが、楽曲単位のパフォーマンスを評価する部門が追加されたということになります。ただ、従来のアルバム部門も実は過去にパフォーマンス部門という部門名だった年がありまして、オルタナ部門創設の1991年33回、1995年37回〜2000年42回の7回については、アルバム部門ではなく、パフォーマンス部門だったんです。ただその7回についても、ノミネートされていたのは楽曲ではなくアルバムだったということもあり、その後は看板に偽りないよう、アルバム部門一本だったという経緯があります。

なので今回の新設に当たって、史上初オルタナ・ロックの楽曲単位の受賞が可能になったということである意味記念すべきことにはなるかなと。そしてノミネートされているのもそれなりにこの分野では2022年を代表するアーティストが並んでます。そんな中自分が本命◎に選んだのは、昨年11月待望の来日を果たした(残念ながら行き損なった!)インディ・フォーク系オルタナ・バンド、ビッグ・シーフのアルバム『Dragon New Warm Mountain I Believe You』からのザ・バンドのサウンドを彷彿させるようなこのアコースティック・ナンバー。このバンドは何せボーカルのエイドリアン・レンカー(女性)の独得の歌声が個性的な魅力を放ってるんですが、今回はアルバム全体の演奏や録音がとてもシンプルながらがっつり世界観を作りあげてるのが素晴らしく、この曲はそういう世界観を象徴するような一曲なんですよね。

一方対抗○は、今回最優秀新人部門にもノミネートされている、2022年のロック・メディアから大絶賛だった、UKの女性二人組ウェット・レッグのデビュー曲に付けました。一回聴くと脳内ループするこの曲は去年よく耳にしましたよね。そして穴×はこちらも久々に充実作だった『Dance Fever』をリリースしてくれていたフローレンス+ザ・マシーンのシアトリカルな、いかにもフローレンスらしい「King」に。

13.最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム部門

  WE - Arcade Fire
◎ Dragon New Warm Mountain I Believe In You - Big Thief
× Fossora - Björk
○ Wet Leg - Wet Leg

  Cool It Down - Yeah Yeah Yeahs

そしてこちらは従来からあるオルタナのアルバム部門。パッと見てビッグ・シーフ、ウェット・レッグそしてイエー・イエー・イエーズはパフォーマンス部門との両方ノミネートになってますから、自然にこの3組に最終の票も集まっていることが想像できます。それとは別次元の問題として、過去には2011年第53回で主要賞の最優秀アルバムを受賞したこともある、アーケイド・ファイヤの『WE』の受賞は恐らくないでしょうね。既に報道されてますが、リーダーのウィン・バトラーがファンに対して行ったとされる性的不正行為について複数のファンから訴えられるという事件が起きてますので、アカデミー・メンバーの批判を受けこそすれ票を集めることはないと思います。

ここで本命◎を付けたのは、パフォーマンス部門同様、インディとかそういうレベルを超えてアメリカーナ・アルバムとしても素晴らしいビッグ・シーフのアルバム。自分も昨年の年間アルバムランキングで12位に入れました。そして対抗○もデビュー・アルバムにして昨年ロック・メディアの絶賛を集めた、ウェット・レッグに付けています。彼らはおそらく最優秀新人部門の受賞は厳しいでしょうから、もしビッグ・シーフが来ないのであれば、取るとしたらこのオルタナ部門しかないでしょうね。

穴×については、ここ最近、2000年前後の輝きが見られなかったビョークが、長年のパートナーとも別れ、母親とも死別して今回30年ぶりにNYから母国アイスランドに居を戻して制作した久々の快作『Fossora』に進呈しておきます。

さて次はR&B、そしてラップ部門の予想です。お楽しみに。


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