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今週の全米アルバムチャート事情 #109- 2021/12/11付

さてそろそろ記事を配信しようと思っていた、ビルボード誌の2021年度Hot 100年間チャート予想なんですが、予想が完了して執筆前だった先週水曜日にスルッとビルボードに発表されてしまい、記事配信のチャンスを失ってしまって残念。それでも1位のデュア・リパLevitating」を始め、トップ10の顔ぶれは全て的中、順位も1〜4位と6位と10位的中と、近年にない好成績でした。具体的な年間チャート上位の解説は、年末までに時間があったらまた別途ここnote.comの記事でお届けします。その前に次の恒例年末企画「DJ Boonzzyが選ぶ2021年ベスト・アルバム」現在準備中、これは来週くらいには配信しなきゃなぁ(汗)。

この「DJ Boonzzyの全米アルバムチャート事情!」の連動ポッドキャストも、本日(12/11土曜日)に無事配信。上記のリンクからSpotifyでお楽しみ下さい。

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さて今週12/11付 のBillboard 200全米アルバムチャート、今週も予想通りアデルの『30』が2週目の1位キープ。ただ今週、半分くらいは減るんじゃないか、と言っていたポイント数の減り幅は予想を結構上回っていて、対先週比66%減の288,000ポイント(実売は68%減の225,000枚)と一気に先週の3分の1になっちゃってます

それでもこのポイント数、今週2位のテイラーRed (Taylor’s Version)』の倍以上で、発売2週目のポイントとしては2018年のドレイクScorpion』が記録した335,000ポイントに次ぐ記録だそうだそうで、まだまだ先週の余韻は残ってますね。これで累計売上917,000枚。プラチナ認定の100万枚は来週達成するでしょうね。と、思ってたら今日のビルボードの記事で、12/6時点で早くも100万枚売上突破の報が。これで『30』は発売2週間ほどで2021年リリース作品で唯一の100万枚アルバムになりました。シングル「Easy On Me」も今週Hot 100いきなり3位に上がってきたマライアの「All I Want For Christmas Is You」の猛追も何のその、今週も6週目の1位をキープしてます。

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先週もお伝えしたように目ぼしいリリースのなかった今週のトップ10初登場アルバムは、今年の8/7付チャート以来のゼロ。一方、こちらも先週予告したように今週はクリスマスアルバムが大躍進。その急先鋒となったのが、先週9位→3位にジャンプアップした、マイケル・ブブレの『Christmas』。先週から何と51%アップの59,000ポイントのうちストリーミングが44,000(60%アップ)と急増しているのは、ちょうど集計期間の初日、ブラック・フライデーから、アップル・ミュージックスポティファイなど主要ストリーミングサービスがこのアルバムの曲を組み込んだクリスマス・プレイリストを本格的に配信開始したから

アメリカはサンクスギビングの到来=クリスマス・シーズンのスタートだから、ブラック・フライデーの買い物のレジ列そばに山積みされてるクリスマス関係CDのコーナーに絶対積まれていた、このアルバムの10周年記念盤をカートにほりこんだ消費者も絶対多かったはず。なので、今週は実売とそれを上回るストリーミングの急増でここまで躍進したというわけです。さすがにアデルを超えるところまでは行かないでしょうが、この辺でしばらくこのアルバムも滞留すると思うし、今週NBCで放映されたクリスマスTVスペシャルの反応次第ではもっと上に行くかも。これについてはまた後ほど。

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そして同様の要因で今週圏外21位→10位にジャンプアップしたのが、ヴィンス・ガラルディ・トリオの『A Charlie Brown Christmas』(36,000ポイント、うち実売16,000枚)。そう、あの古典的ピーナッツ・コミックスのクリスマス・アニメ映画のサントラ盤です。このアニメ映画、オリジナルはCBSテレビで1965年に放映されたものですが、多分我々アラ還世代は間違いなくディズニー映画にまさるとも劣らないくらい、子供の頃何度となく見たに違いなく、その中で使われているジャズ楽曲も彼らの耳に残っているから、ストリーミングでクリスマス・リストにも必ず入るし、ウォルマートやターゲットのレジ列そばのクリスマス・アルバムの山でもとりわけ人気の作品なんですよね

自分も2000〜2004年にNY駐在してた時、この時期になると必ずこのアニメ映画、再放送されまくってたので、うちの子どもたちもおなじみ。おまけに最近のヴァイナル復活に乗って、このヴァイナル盤も最近リリースされたので、こうしてこの季節になると躍進するわけです。

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ということで今週のトップ10は以上。先週「来週は11位以下がクリスマスアルバムやベスト盤で賑やかになるのでは」と書いたんですが、蓋を開けてみると賑やかだったのは101位以下、200位までで、今週は新たにチャートインしたノラ・ジョーンズのクリスマスアルバムなど3枚を含む、計12枚のクリスマスアルバムが101位以下に顔を出してます。一方100位以内は98位にジャクソン5のクリスマスアルバムが再エントリーしてるだけでした。来週以降は100位内も増えてくるのかしら。

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一方11位以下100位までの初登場は今週も3枚。うち一番人気は30位に入ってきたプエルトリコのラッパー、アニュエルAAの4作目のアルバム『Las Leyendas Nunca Mueren』(スペイン語で「伝説は死なず」)。お前はジュースWRLDか!というようなタイトルですが、もともとラテン・トラップの先駆者、と言われてた彼が今回は曲の大半をトラップでやった(アルバム中レガトン曲は2曲のみ)作品とのこと。

他の最近のラテン・ブームに乗ってメインストリームにブレイクしてきたバッド・バニーJバルヴィンらのようにメインストリーム・ポップ・ヒットはこれまでないながら、昨年の2作目『Emmanuel』で初めてBB200トップ10入、その後今年1月の同じプエルトリカンのシンガー、オスーナとのコラボアルバム『Los Dioses』も10位と、いよいよメインストリームへのブレイクを果たすか、と思われてたアニュエルAAですが、今回はやはりB級感満載のキャラどおりの結果になってます。ここらでメインストリームのアーティストとのコラボでブレイクを図りたいところでしょうね。

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続いてぐっと下がって83位初登場は、アメリカーナの雄、ジェイソン・イズベルの通算8作目、自分のバンド、400ユニットを従えての3作目となる『Georgia Blue』。彼は5作目の『Something More Than Free』(2015)で第58回グラミー賞最優秀アメリカーナ・アルバムを受賞してメインにブレイク以来、名実共に今のアメリカーナを代表するアーティストとして、そこから去年の『Reunions』まで3作連続トップ10を決めていただけに、ちょっと今回のこの順位の低さには驚いてます。

今回のアルバムは、昨年11月のアメリカ大統領選の際、彼が「もしバイデン候補がジョージア州で勝ったら、ジョージア出身のアーティストのカバー曲のチャリティ・アルバムを作るぞ!」と言ってたのを、実際にバイデンがジョージアで勝利したので、今回11/26のレコード・ストア・デイのブラック・フライデーに合わせてリリースしたもの。そういう背景や、R.E.M.ブラック・クロウズの「Sometimes Salvation、オールマンの「エリザベス・リードの追憶」といったポピュラーなロックアーティスト達の曲から、ジェームス・ブラウンオーティスといったR&B定番アーティストの曲などを、パンチ・ブラザーズクリス・シーリーや、今旬の女性シンガーソングライター、ブランディ・カーライルジュリアン・ベイカーなど多彩なゲストを迎えた作品で、トップ10に来ても全然おかしくない作品だっただけにこの順位は解せない。これがまた来年の中間選挙に向けてトランプ支持者などの超保守勢力の暗然たる台頭を意味してるんでなければいいのだけれど。とにかくRSDリリースで12,000枚しか出回ってないようなのでどこかで見つけて何としても買わなくては、このアルバム。

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そして今週100位までの最後の初登場アルバムは、こちらもレコード・ストア・デイのブラック・フライデーに合わせてリリースされた、エアロスミスの初期の未発表リハーサル音源を収めた『1971: The Road Starts Hear』の91位。1973年のコロンビアとの契約でメジャー・デビューする前の1971年に、ジョー・ペリーが録音していたリハのテープが今回発見されたものをレコードとカセットでリリースしたもので、後に大ヒットとなる「Dream On」や、彼らの代表曲の一つ「Mama Kin」などの初期の生々しいバージョンが聴けるという、まあファンサービスの一貫みたいなリリースですね。

この手の未発表音源のリリースは最近のレコード・ストア・デイの定番で、今回は他にもキャロル・キングの1971年のBBCライブとか、ジミヘンの1967年パリ(こちらは今週117位に初登場)の音源とかも出ているんですが、その中でもまともなライブ音源でもないこれが一番売れたということでエアロってみんな好きなんだなぁって改めて思いました。

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ということで今週のトップ10のおさらいです。今週もビルボードが発表してない実売枚数はHits Daily Doubleのデータ(*)を使ってます。ドレイクのアルバム、今週も最小売上枚数ペースを突っ走ってます(笑)(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数>)。

1 (1) (2) 30 - Adele <288,000 pt/225,000枚>
2 (2) (3) Red (Taylor’s Version) - Taylor Swift <102,000 pt/46,000枚>
*3 (9) (96) Christmas ▲6 - Michael Buble<59,000 pt/14,000枚>
*4 (8) (28) Sour ▲2 - Olivia Rodrigo<48,000 pt/21,000枚>
5 (3) (13) Certified Lover Boy - Drake <48,000 pt/288枚*>
6 (5) (47) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <45,000 pt/2,875枚*>
7 (6) (4) Still Over It - Summer Walker <40,000 pt/1,056枚*>
8 (4) (3) An Evening With Silk Sonic - Silk Sonic (Bruno Mars & Anderson .Paak) <37,000 pt/11,934枚*>
9 (10) (42) The Highlights - The Weeknd<37,000-pt/5,153枚*>
*10 (21) (95) A Charlie Brown Christmas (Soundtrack) ▲4 - Vince Guaraldi Trio <376000 pt/16,000枚>

さて最後に恒例の来週の1位予想。来週チャートの対象期間は12/3-9といよいよクリスマスシーズン本番ですが、今週アデルのポイントが一気に3分の1になったので、ちょっと微妙になってきたんですが、ただ前回の『25』の時も2週目33%に減らした次の3週目は2週目の66%で踏み止まってるので、その段で行けば来週は18万ポイントということで、何とか1位はギリギリ安泰ではないかと思われます
ただもしこれが50%減で15万ポイントを割り込むようなことがあると、アデルの3週目の1位を脅かしそうなのが、マイケル・ブブレ、ポロG、そしてエド・シーランの3人。マイケルはクリスマスプレイリストのストリーミング増に加え、12/6はNBC TVで放映されたクリスマス・スペシャルでセールスも刺激必至なこと、ポロGは9月に1位取った『Hall Of Fame』の20曲に14曲追加のデラックス・エディションが出ること、そしてエド君はこの間1位の『=』に、エルトン・ジョンとのクリスマスシングルを追加した「クリスマス・エディション」が出ることで、この3枚はいずれも15万ポイント近くまで伸ばしてくることが容易に想像できますねえ。さて、どうなりますか。ではまた来週。

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