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「人間の先生」に破門された話

前々回の記事だろうか、僕と同じく1人書店としてデビューしてから、光の速さで僕を追い抜いていった逸材を紹介した。

名を鳥平純子という。

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笑いあり、涙ありの文章を書く能力、喋らせたらずっと話し続けられるほどのトーク力、こんな逸材どこに隠れていたのかと驚くほどのポテンシャルを秘めながら今日まで世間にバレずにきた原石中の原石だ。

そんな彼女の、日常を題材にした記事は内容の面白さに加え、友人たちや家族、同僚の愛に溢れている。

人ってこんなふうに人を思いやるのか、だとか
親のことをこんなに愛して書けるのか、とか
友人をネタにしながらも優しさの一線を忘れないところとか、言葉通りにしか受け取れず、人の気持ちや表情に思いを向けるのが苦手な僕からしたら、その文章は学びに溢れていた。

そんな彼女を、人間の先生と評した二つ前の記事
感動の長編をしたためたのちに、僕が前回の破天荒極まりない記事を投稿したものだから、秒で破門されてしまった。

その時の彼女のインスタのストーリーがこちら

巻き込み事故といいつつしっかり巻き込まれてくれるやさしさ


感情のジェットコースターとはこのことか、とばかりに困惑、怒り、笑いが入り混じったシェアをご丁寧にしてくれていた。

無理もない。
前回の記事は正直、今ご縁のある方たちにフォローを外されたり、そっと距離を置かれても仕方ないなと思って、投稿した。

ただ、昔から、真面目そうだねとか、本をたくさん読んで物知りだねと言われ、クリーンなイメージばかりが先行することに嬉しさ反面戸惑いと苛立ちを感じていたのも事実で、前回の記事は僕の中で、「イメージをぶち壊してやったぜ!」と快哉を叫ぶほどには会心の出来でもあった。


だからそれは、「あいつ実はこんな奴なんだぜ」と悪意を持って言われるより前に、自分から明らかにする心地よさと、自分がある意味本当の自分を出せた瞬間でもあった。

なので前回の文章を書いたあと、自分はさらに軽やかになったと感じている。

そんな転換の節目に鳥平さんを巻き込んでしまったことは大いに申し訳なく思うが、あの記事を読んだ上で引き続き僕と会話してくれる人に、僕は心から感謝したいとも思っている。

そんな面白人物の紹介を、このタイミングでする。


鳥平さんと出会ったのは、昨年11月末、書店「読書のすすめ」店員である小川貴史さんの主催イベントである。

「1人で本屋始めたいって子が来るからさ!コペルちゃん、色々話して教えてあげてよ!」
と小川さんに誘われ、北千住に向かった。
※僕はどくすめネーム(読書のすすめでついたあだ名)がコペル君になっている。
『君たちはどう生きるか(漫画版)』の表紙のコペル君に似ていたかららしい。

当時僕は学会発表をようやく乗り越え、本格的に始まった実験では失敗ばかり繰り返し、めちゃめちゃ疲れて、追い詰められていたので、少しでも娑婆の空気が吸いたいとばかりに、のこのこ出かけて行った。

そこで出会ったのが、鳥平さんである。

新卒で入った会社でOLとして7年勤め、いよいよ念願の書店員になりたいと転職するも、癖強めの新型書店でなかなかハードな働き方をし、数ヶ月耐えたのち退職。現在は特に仕事に就くことなく、いろいろな活動をしているとのことだった。

僕より2歳ほど年下だが、言葉の端々の真面目さが、社会人歴が長いことを物語っていた。そして話が面白い。関西人だからなのか、彼女の天分なのか芸人さんみたいな磨かれたトーク力を発揮している。

こちとらいまだに社会人だか学生だかわからないような半端な身分で生きている。しかも自分の本分では圧倒的にうまくいっていない。あまりの眩しさに消え入りたくなった。

そんな中、イベントを終え、少し話させてもらう。
1人書店の先輩からのアドバイスなんて大したことは言えない。僕は素人のただの本好きで、相手は本を愛し、しかも書店経験のあるちゃんとした社会人なのだ。

正直、当時の自分は絶賛トンネルの中で、めちゃくちゃ流れの悪い状態であった。事実、その日もイベント終わりに上司から電話が来て、実験のために大学に戻った。

ただ、書店を始めたい、ということでどういうところで本を仕入れられるのか、と、書店のロゴを作ってくれそうなデザイナーさんを1人、紹介させてもらった。そこで繋いだデザイナーさんが、のちに鳥平さんと面白い展開を起こすことになる。


そんな感じで出会った鳥平さんだが、怒涛の勢いでロゴを決め、名刺を作り、翌月12月に、僕もお世話になっている岡山県総社市で、1人書店デビューを果たす。本の仕入れこそ、小川さんが代行したものの、その時の書籍の紹介は、面白く、感情を揺さぶる、堂々たるものだった。

年が明けて2月には、香川で、今度は自分で仕入れた本を、2種類紹介してくれた。友人夫婦のご実家という、不思議なシチュエーションで、本の訪問販売どころか、韋編三絶共々、本の押し売りと化していた。泊めてもらうお宅で本を紹介して、さらに買っていただくなんて経験は、後にも先にもあの一回だけである。

そんな鳥平さんを見ていると、とても勉強になる。
これと感じた時の行動の早さ。周囲の人への眼差し、気の遣い方、職場の人との会話や、周りの人に関心を持つこと。僕が甘えてしまいがちな、周囲の方の善意にもちゃんと感謝とお礼を返していく姿。当たり前なのかもしれないけれど、僕にとって一番欠けている人としてのベースの部分を、鳥平さんの行動や、書く文章が補完してくれた。

そうした感謝を込めて、人間の先生と呼ばせてもらったのだが、前回のあの記事である。

上のインスタストーリーに繋がり、「もう人間の先生とは呼ばんといてください」と破門を言い渡された。

絶交されなかっただけ、マシなのかもしれない。

そんな彼女とも、現在進行形で一つ企画を進めている。この先に待つものが、楽しみである。

追いかけたくなった方はこちら↓

鳥平純子

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