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シェア型書店の終わりが見えた

「シェア型書店の終わりが見えた」ような気がします。

現在、テレビで紹介された開業コンサルタントがプロデュースした高級食パン屋が次々と閉店しています。この現象と似たように、シェア型書店がひっそりと消えていく未来が見えました。

今朝、あるベンチャー企業がシェア型書店を運営しているという記事を読みました。メディアで紹介されて注目を集めた結果、多くの企業や有名人が次々と参入しています。この状況は、地道に活動している地域のシェア型書店や、これからシェア型書店を開こうとしている人々を窮地に追い込むのではないかと感じました。

その理由は、シェア型書店の資本力の違いにあります。都心に位置する資本力のあるシェア型書店は、デザインにも凝ったハイブランドです。それに対して、個人経営や地方のシェア型書店はノーブランドで、集客力に大きな差があるのは間違いありません。収益的にも話題性においても太刀打ちできません。

さらに、資本力のあるシェア型書店がテレビやメディアで情報を発信し続ければ、ブランドが確立されていないシェア型書店の経営者や、その店の棚を借りている棚主は、その力の差を感じてやる気を失ってしまうでしょう。

その結果、日本の書店文化を支える画期的なアイディアといわれたシェア型書店が、一過性のブームとして終焉を迎える可能性が出てくるのは当然の流れだと思います。「注目されるから」と打算的に考えて次々と参入してくる人々が、新しい文化を食い尽くして潰してしまうでしょう。(店主はシェア型書店は書店ではないと考えています)

こうなってしまう原因の一つに、現代社会では、知名度を上げたりアクセスを集めたりすること自体が経済的な価値を持っているという側面があります。フォロワーが多いアカウントが高額で取引されている事実を考えれば、話題になりそうなことにいち早く飛びつき、フォロワーを集めることに熱心な人たちがシェア型書店に流れ込んでくることも容易に想像できます。

実際、独立系書店が話題になったときに、いち早くクラウドファンディングで資金を集め、挑戦し、儲からないとわかったらダメージが少ないうちに撤退した猛者もいます。そのような「本を応援する!」と語る人たちが次々と集まることが予想されます。(怪しい人とは関わらないのが得策です。)

読書が苦手な人がたくさんいたとしても、本が嫌いという人は、そうそういないと思います。そう考えれば、楽にそこそこ稼げて、アクセスを集められて、知名度が高まり、友達が増えていきそうなシェア型書店を経営する理由なんか、後からいくらでも考えられますよね。だから、経営者の思いというのは話半分で聞いたほうがいいです。口ではいくらでもいいこと言えますから。そうではなく、その人が実際にどういう行動をしているのかで判断しなければなりません。

また、シェア型書店はクラウドファンディングで資金を集めやすい。これもシェア型書店が衰退に向かう要因になるかもしれません。支援(お金を払う)の見返りとして棚の賃料を設定できるため、双方にロスがないから成立しやすいのです。

というわけで、次々とクラウドファンディングが成功し、次々とシェア型書店が誕生し、最初は珍しかったシェア型書店も次第に増えてくれば、当然ながら棚の借主が足りなくなります。

そこそこ売上があり、シェア型書店の経営者にも恩恵をもたらす優良な棚主には限りがあります。現時点では需要と供給が合っているように見えますが、いずれ優良な棚主が少なくなり、こう言っては失礼ですが、やがて情弱な棚主が残り、目立つようになるでしょう。

普通の人は、思ったほど売れなかったことで学習し、本屋という夢を捨て、1年ほど楽しんで静かに去っていくと思います。古本に関しては、「古本屋に売った方が時間の無駄にならない」と気づく人や、メルカリで売るという選択をする人も増えるでしょう。新刊を仕入れて売っている棚主は、新刊書店が潰れている現実を身をもって学ぶでしょう。その結果、シェア型書店の魅力も薄れていくのは間違いないと思います。

シェア型書店の参入を拒むシステムはないため、話題を作って注目されたい、ビューを稼いで実績を作りたいという人や会社が参入してくる未来が見えます。それでも、シェア型書店はまだまだ注目され続けるでしょう。おそらく新刊書店の店員さんも、古本屋の店主も、多くの人がこの熱を訝し気に見守っていると思いますが、誰も反対意見を述べません。まぁ、それがある意味正解なのですが、ここはあえて吹けば飛ぶような小さな古本屋の店主が多くの人が感じている違和感を口に出し、苦言を呈させていただきました。

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