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古本屋の小さなお客さん

睡魔が襲ってきました。とにかく眠い。この眠気に抗うべく、姿勢を正してカウンター前の椅子に座り、読みやすい小説を開きました。最初は眩暈が続くものの、少しずつ文字に視点が合ってきます。眠気が完全に取れるわけではありませんが、この方法で眠気に対抗していました。

すると、ふと本の横に小さな人影が現われ、目が合いました。どうやら小学生低学年の女の子です。大人が低めの椅子に座って姿勢を正していると、子どもの目線と同じぐらいの高さになるんですね。

当たり前のことに妙に感心しつつ、静かにこちらを見つめる子どもの手元に目を移すと、本を一冊手に持っています。

「買うのかな?」と声をかけると、子どもはコクリと頷き、つぶらな瞳で本をこちらに差しだしてきます。そこで、自分が読んでいる本を閉じ、立ち上がると、子どもの頭が胸ぐらいの高さだということが判明します。やはり小学生って小さいんですね。

本を見ると、「100円」というシールが貼られています。もちろんこれは店主が付けた値段です。子供がトレーに100円を置いたので、それを見て、旧式のレジをガシャンと打ち、レシートと本を手渡しました。「ありがとうございます」

すると、子どもは小走りでお母さんのところに戻っていきました。そして一言。「ほら、100円って言ったじゃん!」とお母さんに自慢げに話しています。なんと微笑ましい光景だ…

そんな尊い出来事があった、普通の古本屋の普通の一日でした。ただし、売上はいつも通り低調でした。


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