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「食品サンプルの誕生」

体が火照っている。目の前に積み上げられた本を査定していると、体温の上昇を感じました。もちろん本を持って動くのは肉体労働。しかし、何か精神性なものも感じます。ただ、査定が終わると熱はすぐに消え、疲労だけが残りました。

というわけで、本を開いたのは20時半。疲れが残るので難しい本は読めない。昨日は漱石を読んだので本日は内田百閒を・・・と本を開くものの、進まない。早々に諦め、本日は「食品サンプルの誕生」という不思議な本を選びなおしました。

この本に書かれているのは食品サンプルの歴史です。どうして著者はこんなテーマを選んだのか。そしてなぜ店主はこの本を読もうと思ったのか。それは読書をすすめるうちに明らかになりました。食品サンプルは日本の歴史や文化と深くかかわりがあるテーマだったのです。

日本で最初に食品サンプルを導入したのは都会のデパート。大量のお客さんを素早くさばくために、「見本」と「食券」というシステムを導入します。見本があれば説明する必要がありません。食券があれば注文を取る必要もない。そして更に「サンプルを見て食べるものを決める」が当時のファッションだったのではないかと著者は推測しています。

その他にも、ラーメンひとつとっても地方ごとに全く違うというのが日本独特の食文化。そして店頭の食品サンプルで店内の雰囲気を感じとる国民性。それら慣習が食品サンプル普及に拍車をかけます。「日本人はサンプルや写真をみて、安心感を求める」と分析したのはホテルエドモンド中村氏。

ちなみに後半ではフランスや韓国との食文化が比較されます。フランス人はメニューを見て30分ほど討論してから注文するらしい。ほんとかな?そして店側はメニューを見た客の要望に応じてコース料理を変えることもあるのだとか。そして韓国では料理名で調理方法がわかるのでサンプルが普及しなかったというエピソードも。

最後に店主は思いました。日本が世界中の食文化を取り入れてこれたのは、食品サンプルの力添えもあったのではないかと。サンプルを通じて料理を可視化したことは、挑戦のハードルを下げたに違いない。

ゆえにサンプルが意味あるものだとわかります。考えてみたら、本を選ぶときも試し読みが大事ですよね。このサンプルという文化。意外と様々なものと深いところでつながっているかもしれません。

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