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「『一万円選書』でつながる架け橋」を読んで共感したり、しなかったり。

今日もコツコツと本を売りました。そして少額の買取が3件。派手さは皆無。そして読書も少しづつ。すべてが送りバントのような古本屋の一日でした。

そして本日お売りいただいた本の中に、気になる本がありました。「一万円選書」で話題となった「いわた書店」さんを紹介した本です。そこでさっそく手に取りました。(一万円選書とは、購入者にピッタリ合う本を書店が一万円分選んでくれるというサービス)

先に正直に書かせていただきますと、この本はいわた書店ファンや同店に興味がある人向けの本です。ビジネス書や学術書のように読んで勉強になるような本ではありませんし、文芸書のような楽しみを得る本でもありません。

ただ、店主としては個人的に気になっている点がありました。

元々、店主は「一万円選書」には見えない労力が大きく、割に合わない販売方法なのではないかと考えておりました。何故かというと、新刊書店の原価率はおよそ22%といわれています。つまり、1万円の本を販売しても利益は2200円。もしその選書という頭を使う作業に2時間以上の時間をかけるなら、コンビニで2時間働いた方がお金はもらえるという計算です。

だから費用対効果を考えたらやってられません。選書って意外と時間がかかるし疲れます。だから採算度外視すれば利益は残るというレベルかと思われます。ある意味ブラック個人事業ですが、それが店主の趣味ということであればOKなのでしょう。

そして、この本を読んで、いわた書店の店主の本への愛情を感じました。その愛情が「一万円選書」を支えているんですね。そして、その本への愛情はこのブックスミタカの店主も同じです。立場は違えど、能力は違えど、立地も違えど、本を絶やすことなく残していきたいという気持ちは同じです。読んで共感できました。

ただ、逆に本屋が廃れ行く運命であるのは変わらないのかな・・・とも思いました。この本では「小さな本屋が革命を起こす」という章がありますが、少し精神論のような語りで具体性に欠け、そこだけは共感できませんでした。すでに1冊の本を何百冊販売できる販路と知名度がある書店だから言えることで、普通の書店がマネするのは難しいと感じました。

時々、ネットで新しい書店の形の成功例が紹介されていますが、店主はどれも眉唾物だと考えています。Twitterでそのようなキラキラした情報が流れてきてもスルーします。地域とタッグを組んだり、イベントを開催して集客する書店を見ていても、同じ気持ちです。

本の感想はすっかりどこかへ行ってしまいましたが、「一万円選書」や「いわた書店」に興味がある人、そして業界関係者が読めば面白いと思います。ただ、それ以外の人が読むと、少し肩透かしを食らうかもしれません。

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