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「この世で一番おもしろいミクロ経済学」

早朝からの部活指導を終え、古本屋に出勤する途中、生徒から聞いた荒れたクラスの話が「ふ」と頭をかすめました。政府は子育て支援を積極的に政策に落とし込もうとしていますが、現実問題として子供たちを指導できる大人が減っているような気がします。問題解決は、お金の問題だけではないですよね。

そんなことを考えていたからかもしれません。店を開け、棚を整理していると100円の値札がついている「この世で一番おもしろいミクロ経済学」という本が目につきました。この本は絵が多く読みやすそう。ミクロ経済もマクロ経済もを全く知らない店主ですが、少し広い視野を得るべく挑戦することにしました。

実際に本を開くと大きなイラスト。そして、そこに少し説明文が添えられているというスタイル。これはかなり読みやすい。ただ、イラストはアメリカの風刺マンガ風。日本のマンガとはちょっとテイストが違います。

ただ、それでも要点を簡潔にまとめてある内容に好印象を受けました。難しそうなミクロ経済学ですが、ゆっくりと読めばそこそこ理解できそうだ!と気持ちを強く持ち読みました。

気になったところを5個ほど抜き出してみます。

序盤で本書は、製薬会社が薬の販売価格を決める理由を「研究開発費の回収」と言っているのはウソだと断言しています。すでに研究開発費はサンクコストとして埋没しているから、薬をいくらで販売しようが費用回収とは何の関係もないと言い切っていました。では、何で薬の価格を決めているのかというと、いくらで薬を販売したら一番儲かるかという「限界分析」。利潤が最大化するように計算して価格を決めていると紹介されていました。

そして2つ目。「今日のお金は明日のお金よりも価値が高い」という一連の話も面白かった。経済学の専門用語だと、「利子率5%で1年後に10500円をもらう場合は10000円が現在価値」ということになるそうで、同じ10,000円でも、未来と現在とでは価値が違うということを教えてくれます。これはつまり、未来のお金はインフレ分を差し引いて比べるのだと教えてくれています。

また、3つ目のルーレットを題材にした「期待値」の説明も面白かった。1回まわすのに100円かかり、もし当てたら3500円もらえる、38の数字が刻まれているルーレットをまわした場合、この期待値はたやすく計算できるそうです。①1/38*3500=92円(1回あたり92円得をする)と②37/38*-100円=-97円(1回あたり97円損をする)となる。この①と②を通算すると-5。よって期待値は100-5=95円と計算できます。だから胴元は参加者より毎回5円ずつ収益を上げているということだそうです。

更に、4つ目は保険を例に出し「逆選択」についての不可思議な説明もありました。これは文章で説明するのが難しいのですが、順番に説明します。①健康な顧客は、高い費用の生命保険に入る必要がありません。②健康な顧客は保険を解約してしまいます。③すると、不健康な人だけ契約を続けることになる③保険会社としては受け取るお金が減って支払うお金は変わらない。④だから、必然的に保険会社は全員の保険金を値上げせざるを得ない。つまり、個人にとっての最適化の結果が、集団にとっての良い結果とはならない。

そして店主が何よりも面白いと感じたのは、5つ目の政治と経済のど真ん中と言っても過言ではない「取引」の話でした。狩が得意で農業が不得手な人と、狩が不得意で農業が得意な人が取引をすると、1人で両方を行うよりも大きく得をする。

国同士の問題もこれと同じだという書いてあり、更に「取引の利益がなくなるまで取引を止めない」とまで書かれています。そして、誰も損をしないで行う取引をパレード改善と言い、それはパレートが効率的(これ以上改善できなくなる)になるまで続く。この説明を読んだとき、店主は外交問題や貿易問題で政治家や官僚が一生懸命になる理由を理解しました。この体験は新鮮でした。

という訳で、取り急ぎ要約を試みたものの、迷走する読書ブログとなりました。他にも「ゲーム理論」や「囚人のジレンマ」など庶民でも知っている言葉も多数ありましたので、そちらに興味があるかたは読んでみてはいかがでしょうか。それにしても経済の話って奥が深いですね。また挑戦してみたいと思います。

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