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「古くてあたらしい仕事」

今日は本が売れませんでした。50円の雑誌はたくさん売れましたが、10冊売れても500円。手放しでは喜べません。

しかし、そのぶん時間は有意義に使えました。本を品出ししたり、ネットに本をかけたり、さらに自分の読書時間も充分に確保できました。

今日読んだ本は『古くてあたらしい仕事』という本です。夏葉社という一人出版社を経営する著者が書いたエッセイです。夏葉社ができるまで、できた後、そして本に対する思いをこれでもかと綴った一冊で、業界関係者や本好きの人なら間違いなく惹きつけられる内容でした。

著者の島田氏が目指すところは、誠実な本づくりです。現代の出版業界では、売上や利益が優先され、本当に価値のある本が市場から見捨てられています。著者は、そのような風潮に流されることなく、自分の目の届く範囲でしっかりと良い本を作ろうと決意しています。

そのため、夏葉社が発行するのは年間に三冊のみ。そのすべてが「何度も読み返される、定番といわれるような本」を目指しています。戦略としては、人気作家に頼るのではなく、昔の知る人ぞ知る名作を復刻して出版するという方法。そして、マス向けの大きな売上を意識するのではなく、「あの人にこの本を読んでほしい」という明確な思いで1冊1冊の本をつくっているというのです。

利益追求に流されず、本当に価値のある本を、多くの仲間の助けを借りて作り続ける著者が、出版業界全体に新たな風を吹き込んでいることは間違いありません。冴えない古本屋の店主が読んでも、本当に面白い内容でした。

ただ、個人的にはやはり日本は資本主義の社会なので、この著者の考えや夏葉社を大いに応援するものの、自分の中では、古本屋としてマスを取りたい。そんな気持ちが残っていることにも気づけました。

それでも、この著者の姿勢や考え方、事業に関しては、リスペクトしかありません。本好きの人はもちろん、異業種の人が読んでも面白いと思います。そして、店主もさっそく明日、夏葉社の本を読んでみようと心に決めました。


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