20180726_土と光_

写真集を言葉にする 小野田陽一『土と光』

森岡書店での展示&トークイベントにも言ったのはデザイン事務所のアンパサンズの中村さんと知り合いだからだ。

以前から陶芸家・寺村光輔さんとウェブサイトのデザインなどで仕事をしているとは聴いていて、それが一冊の写真集になった。購入したのは確かトーキョーアートブックフェア2017。

印象的なタイトルは、土=うつわ、光=益子のイメージから。寺村光輔さんは益子で器を焼いているのである。

作品の話に移る。濃紺色でマットな質感の右下に雨の益子の風景、寺村さんの工房前の道だそうだ、が小さく切り取られている。ウェットな感触を受けてページを開いてみると、青が強く出た写真。益子の風景と寺村さんの作陶風景が並ぶ。寺村さんとの仕事というから作陶風景が主かと思いきや益子の風景が割と多い。空、森、池、田んぼ、稲穂、花畑。時刻でいうと早朝のような薄暗く静謐な雰囲気の写真が続く中で、急に陽の光が降り注ぐ明るい写真が入り込む。ハッとして次のページをめくるとまたあの薄暗さ。最後から2ページ目の薄曇の中を飛ぶ一羽の鳥の写真を観て、ここまで寺村さん以外の動物が一匹も写っていないことに気が付いた。「薄暗く静謐な雰囲気の写真」と先に書いたがそう感じた理由は動物が居ないことも関係しているような気がした。

いまや人気作家だという寺村光輔さん。イベントでマグカップを購入したが、本作中で写真家の小野田陽一さんが、"手にすっとなじみ"と書いているがその通りの感触で確かに"生活に寄り添った器"だと感じる。

そんな器が生まれた場所がこの写真集の中にあるのだ。静かで光が強くなくて、自分の内側を掘っていくのにはうってつけの場所のように感じた。

僕は益子にはまだ仕事で2回しか訪れたことがない。そのときは取材後にすぐ帰ってしまったがまた訪れてみたいと思った。

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