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レティシア書房店長日誌

雨宮まみ「40歳がくる!」
 
 
先日ブログで紹介した前田隆弘の「死なれちゃったあとで」に、2016年に40歳で亡くなったライターの雨宮まみとの交流のことが、40ページにわたり書かれていました。前田が、信頼しリスペクトしてきた雨宮の死について、迷った挙句、彼女の著書「40歳がくる!」(新刊1870円)を読んだことで書こうと決めた、と書かれてあったので、私も読んでみようと思いました。

 雨宮まみは1976年福岡に生まれました。女性性とうまく付き合えない生きづらさを描いたエッセイ「女子をこじらして」で注目されました。私は以前、ミシマ社から出た岸政彦との共著「愛と欲望の雑談」を読んだことがありました。
 「世界を変えることはできなくても、自分の周りをささやかに変えることはできる。裸の写真を撮るなんて全然考えてなかった人たちが、自分の裸の写真を見て『私、悪くないじゃん』と思えるくらいまで変えられたら、もう、ささやかな革命家としての役目は十分すぎるほど果たせたと思っている。」これは、40歳を前にして、彼女が自分のヌード写真を撮影してもらった顛末を描いた「裸になっていこう!」のラストを飾る文章です。なぜ、ヌードを撮ったのか?
「昔は、裸になったら、失うものがあると思っていた。人に何を言われるのかわからない。流出したらどうするんだ、とか、そんな写真を撮らせるような女だと、好きになった相手に軽蔑されたらどうしよう、とか、こまごましたことを考えていた。 でも、もうこんな風に、年齢のことでごちゃごちゃごちゃごちゃ、細かいことで一喜一憂するのなんかごめんだ。男の視線が気にならないといえば嘘になるけど、もっと根本的なところで、私は私をそのまま肯定したい。私は、私だと、どんな姿でもどんな年齢でも私は私だと、自分で自分に宣言したい。」
 「私のままの40歳」を求めて、彼女はどんどん変化していきます。友人から、それ、どこで着るの?と言われるような服を積極的に買ったと言います。
 「『どこで着るっつうか、一生に一度着てみたかったんだよ!』と心の中の自問自答で怒鳴り返す勢いで、そういうものに手を出している。将来的にはもう、『そういう人』ということで自由に生きていきたい。着るものぐらい、自由でいたい。そう思うようになった。」
 ネットで「アラフォーババアだから若い女がうらやましくて仕方ないんでしょ」などというような中傷を浴びせられても、いいや、私は私の40歳を生きるのだ!と決心した彼女の心が、本書には溢れています。
「39歳で背中を出してても、ブラケットが透ける服を着ていても、誰も何も言わない。『そんなんで本当にものが書けるの?』と言われることもない。万が一言われても『書いてますけど?』で済む。若さゆえに不当に見下されたり、若い女であるがゆえに迫害されてきた不自由が、波が引くように去っていき、代わりに自由がどんどんやってくる。最高の気分だ。誰だかわからない世間の視線みたいなもののために自分を歪めたりしなくてもいいし、そんなことしようという発想すら溶けてなくなる。」と言い切った彼女でしたが、2016年11月15日の早朝、自宅で事故により急逝しました。
 自ら「AVライター」と名乗り、主にエロの媒体で執筆し、別名義では官能小説も執筆するというマルチな才能を持っていたライターでした。「40歳がくる!」は、彼女の死から7年後に発売されました。本人の連載原稿に加え、関係者たちが追悼文を寄せています。
 

●レティシア書房ギャラリー案内
4/10(水)〜4/21(日) 絵ことば 「やまもみどりか」展
4/24(水)〜5/5(日)松本紀子写真展
5/8(水)〜5/19(日)ふくら恵展「余計なことかも知れませんが....」

⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
野津恵子「忠吉語録」(1980円)
ジョンとポール「いいなアメリカ」(1430円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
福島聡「明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか」(3300円)
きくちゆみこ「だめをだいじょうぶにしてゆく日々だよ」(2090円)
北田博充編「本屋のミライとカタチ」(1870円)
友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する3 先人は遅れてくる」(1870円/著者サイン入り!)
平田提「武庫之荘で暮らす」(1000円)
川上幸之介「パンクの系譜学」(2860円)
町田康「くるぶし」(2860円円)
Kai「Kaiのチャクラケアブック」(8800円)
「うみかじ7号」(フリーマガジン)
早乙女ぐりこ「速く、ぐりこ!もっと速く!」(1980円)
益田ミリ「今日の人生3」(1760円)
島田潤一郎「長い読書」(2530円
つげ義春「つげ義春が語る旅と隠遁」(2530円)

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