逆噴射2020ライナーノーツ 投稿作編
エル『こんばんは! 夢世のエルよ』
しもべ「こんにちは。エル様のしもべです」
『ここは逆噴射小説大賞2020に応募した作品の解説をするページなのよね』
「新参の未熟者ではありますが、堂々といきましょうか」
創作手法について
「最初に、僕たちの創作手法について触れておきます。僕が物語をつくる場合、まず描きたい絵面(ヴィジュアルイメージ)、キャラクター、台詞、タイトルなどが最初にあります。そしてそれらに相応しい世界観、設定、ストーリーはどんなものだろうか、と後付けで考えていく。これが基本ですね。もちろん毎回かならずそうだ、というわけではないのですが」
『でもしもべ君は想像力が貧弱だから、うんうん唸っても最初の要素を思いつけなかったり、途中で次の展開が思いつかないよぉ……って泣き言をぬかしやがることもしょっちゅう。そんな時、わたしが素材を見つけてきて、手伝ってあげてるの。世話が焼けるんだから』
「毎度毎度、ありがとうございます」
『要するに、閃きとか、どこから降ってきたから分からないようなアイディアと呼ばれるものをわたしが見つけて、しもべ君がそれを料理する。それがわたしたちの創作手法ってわけね』
「あの、その言い方、僕が閃きとかアイディアとか全然思いつけない堅物脳ミソって言ってるようなものでは」
『事実でしょ?』
「アッハイ、事実です……」
1発目:白狼の子たる修道女
イメージのもと
■小説:ニンジャスレイヤー(特に『ザ・グロウ』)
■映像:ジョン・ウィックシリーズ
■音楽:
PARADISE(WHAT ABOUT US?) - Within Temptation
Silent Howling - 山根ミチル(『Bloodstained: Ritual of the Night』より)
『綺麗で優しい金髪シスターのおねえさんが、悪いヤツを殴ったりちぎったりするお話ね』
「名刺代わりの一作ってところですね」
『レイチェルさんはしもべ君の好きな要素(前述のシスター+白髪で寡黙なダークヒーロー)を足し算して割らないキャラが見たいってワガママ言ってたから、わたしが見つけてあげたキャラクターよ』
「ありがとうございます。今まで色んなキャラクターを見てきましたが、この人は本当に大好きです」
『これ、長編化する予定なのよね?』
「はい。一年前からちょこちょこ書き溜めていまして、この応募作はその外伝として話を構成したので、作るのは割と楽でした。ただ自分が書くとどうしても予告編的な冒頭になってしまうので、逆噴射ナイズした書き方にするのは少し苦労しましたね。というか、ちょっと失敗してるような……」
『最後の一文で纏まっちゃった感じは出てるかもねー』
「そうですね。でも個人的にはとてもお気に入りです」
『ちなみにこれ、続きも書き上がってるから、気になったらぜひ見ていって頂戴ね!』
2発目:そして北に十三歩
イメージのもと
■小説:魍魎の匣、狂骨の夢
■音楽:Rest Calm - Nightwish
■その他:栄光の手
『これは栄光の手っていうイギリスの民間呪術と、雨のなか木に首を吊った死体を見上げる人の絵面を元にして膨らませていった話ね』
「どうしようもなく重たい話になったのですが、好評を頂いてるようですごく嬉しいですね。タイトルと最後の台詞がバシッと決まったお陰でしょうか」
『このタイトル、わたしが見つけたのよ? 感謝してよね』
「いやほんと有難うございます。栄光の手、生首、宝を示す、示し方は歩数で……とこの辺りまでは脳みそでこねくり回していたんですが、突然このタイトルを降ろして頂いて、そんなら最初は南に行かすかっていう軽い気持ちで決めたのがこのラストです」
『安直! でもこの思い付きから作品全体の方向性も決まって、長編化した場合のラストシーンまで一気に浮かんだのよねー』
「やっぱタイトル先行型ってこういうところ強いんですよね。作品の枠組みを最初に用意してるおかげで話を纏めやすいといいますか」
『でもこのタイトルで行くかどうか、最後まで迷ってたみたいじゃない?』
「そうなんです。理詰めで考えた候補として《スカルランプの放浪者》ってのもありまして。というのも、この《そして北に十三歩》の方は800字まで読んでもらって威力を発揮するタイプですから、タイトル単品として見た威力はどうなのかなーと。結局は総合的な威力を考慮してこっちにしましたが、今ではこっちが正解だなと確信してます」
『ふふん』
「(えばってらっしゃる……)ちなみにこの作品、非常にありがたいことにオススメとサポートまで頂くことができました。ほんっっっとーに嬉しかったです。なんか体がほわほわして血行が良くなり、肩凝りが治りました。ほんとに。ありがとうございました」
『サポートは創作者の肩凝りを治す!』
3発目:朝露と土がねむるまで
イメージのもと
■ゲーム:
『世界樹の迷宮』シリーズ
『NieR:Automata』
■音楽:
遺サレタ場所/斜光 - 岡部啓一(『NieR:Automata』より)
ユグドラシル - 光田康典(『ゼノブレイド2』より)
『北欧神話、創世記、SF。そして大樹から泉に落ちる少女とモザイク状の波紋という絵面から膨らませた作品ね。あなた、RPGでよくあるファンタジー世界と滅亡した超科学文明の組み合わせが大好きなのよね』
「イメージのもとを見ると一目瞭然ですね! 特に植物と機械の組み合わせには無条件で胸がときめきます。そこに更にファンタジーを乗っけて、お爺ちゃん口調で喋る機械でできた古木という何とも捻じれたキャラが出来上がりました。ここだけの話、スラシルよりも古木爺ちゃんの方が気に入っていたり……」
『ちなみにリーヴとリーヴスラシルは元ネタがあるキャラクターで、簡単に言うと北欧神話版アダムとイヴよね。世界崩壊後に子孫を増やしたっていう点ではノアの箱舟だけれど』
「人類の祖を組み合わせてみようというのは割とあっさり決まったんですけど、四組の組み合わせのうちどれにするかは最後まで悩みました」
『リーヴ×イヴ、リーヴ×アダム、スラシル×アダム、スラシル×イヴの四組ね』
「少女が落っこちてくるっていう絵が最初にあったんで、スラシルは確定してました。あとはアダムかイヴか」
『イヴだとしたら、朝露と林檎がねむるまでってタイトルになってたわね。わたしはこっちの方が好きだけど、どうしてこっちにしなかったの?』
「この作品は、現人類はそれぞれの片割れ同士の子孫なのか?という謎を追うミステリーでもある、というコンセプトにしたかったんです。同性同士でもまあ何とかならないこともないとは思ったんですが、やはり800字制限の中ではそれが分かりにくくなるかなと。それに今の自分がスラシルとイヴで書いたら、たぶん明るめの百合作品になったでしょうね。それはそれで楽しげですが、今回は神秘の側に寄せようと思ったので、この形に落ち着きました」
『むつかしいのねえ、色々と』
4発目:殺すと言うなら殺してみせよう
イメージのもと
■小説:魔剣天翔
■漫画:ジョジョの奇妙な冒険
『これに関してはわたしは殆どタッチしてないわね。あなたが理詰めで考えた作品でしょ?』
「理詰めというものでもないですが、これまでの傾向からあえて外してみようとした実験作ですね。具体的には、
1:ファンタジー世界ではなく現代日本
2:設定の説明をしない
3:アクセルを踏むタイミングを早くする
4:太字を使う
特に強く意識したのは2です。手癖で書くとどうしても設定の説明に字数を割いてしまうので、それをほぼゼロにしてみたらどんなのが書けるかなと」
『設定っていうと、今回だと魔剣についてかしら?』
「そうです。この魔剣は、生命を損なわせるという意味の殺の字をふくむ発言をした他人を自動的に襲うという性質を持っています。文中ではこれを示唆するために、スイッチとなった殺の字を太字にしました。《殺すと言うなら》ってのはそういう意味ですね。この説明をばっさり省き、実際に呪いが発動する様子を描いて物語を進めてみようと」
『確かにドライブはかかってる感じよね。アクセル踏み込みすぎじゃない?って気もするけれど』
「読者としての自分の目線では急すぎるな、と感じますね……。でも逆噴射大賞的にはこれでいいかもしれませんし、何事もまずはやってみようということで」
『にしても、発動条件が他人任せだなんて面倒くさい呪いねえ。これ、テレビでキャスターが《本日〇〇市で殺人事件が……》とか読み上げたらどうなるの?』
「そのキャスターを殺すために行動を開始します。アニメとかなら声優さんを殺しに行きます。舞台を現代日本にしたのもこの設定があるからですね。絶対に生きにくい」
『うわあ面倒くさい。なるほど、ジョジョの発動条件があるスタンドっぽいわね……』
5発目:暁滅のナイトフォール
イメージのもと
■小説:スズメバチの黄色、ニンジャスレイヤー
■ゲーム:ドラゴンクエスト3、Katana ZERO、ロックマンX など
■音楽:T.M.Revolutionのアニソン
『真正面からの勇者vs魔王軍、そしてサイバーパンク要素を掛け合わせた作品ね。解き放て、心の中学二年生!』
「とにかくストレートにかっこいいアクションをしたい、という点にすべてを注いでいます。なので設定語りは最小限、戦う理由も『勇者だから』の一言で済まして、さっさとアクションシーンに入っていきました」
『3作目もそうだったけど、ファンタジーとSFを掛け算するの好きよねあなた。空が闇に包まれてるのって、やっぱりドラクエ3のゾーマ様オマージュ?』
「そうです。そこにダイソン球の素材を乗っけています。前に科学雑誌で読んだんですが、地球に一時間で照射される太陽光は、現代世界で一年間に消費される電気エネルギーに匹敵するとか(うろ覚えなので間違ってるかもしれません)。これを個人で利用できたらヤバいだろうなと」
『あと気になったんだけど、またお爺ちゃん出てるわね。5作品中3つって多くない?』
「ほんとだ、いま気付きました……。サイバーパンクのナビ役が爺ちゃんって珍しいだろ、と思って出したので今作については理由はあるんですけど。やっぱ手癖なのかな?」
『もし続きがあるとしたら、支配階級になった魔族が未来的世界観でどんな生活をしているのか、覗いてみたいわね』
これからに向けて
『とにかく楽しい一ヶ月だったわねー』
「本当ですね。一作目を投稿したのは10/11で、それまでは読み専だったんですが、えっ始まってからまだ三日でこの満足度なの……?ってビビリ散らしました」
『結局最終日までビビリ散らしてたわね』
「パルプのメキシコ、恐るべしですよ」
『でもやっぱり、楽しいばっかりってわけでもないんでしょ?』
「ですね。他の作品がチョー面白いということは、自分の作品の至らぬ点もたくさん見つかるということ。特に感じたのはR.E.A.Lさが足りないということでした。考えすぎると行動を起こせないという弱点を自覚してましたから、あまり深く考えすぎないようにしようとは思っていたのですけれど」
『毎日の鍛錬を積んだうえで、作品ひとつひとつにじっくり向き合っていきましょうっていうことね。わたしも素敵な素材を見つけられるよう、もっと頑張るわ』
「よろしくお願いします。何事も修行あるのみ」
『Practice Everyday……』
「なお、没作品が5つあるのですが、それらについてもライナーノーツを書くかもしれません。もし出来上がったらそちらも読んでみてくださいね」
(11/12追記:没作品編も書きました)
(おしまい)
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