見出し画像

田舎で~本屋開業日記⑪

令和元年のうちに済ませたいことは、何としても!ということで、なんとか12月28日本屋大賞に一次投票することができた。
走る本屋さん高久書店としては初の投票となった。

画像1


小さな本屋作りの話しの続き・・・。

書店キャリアは適当にあるので、本の仕入れなどは出来るとしても、一から本屋を作るのはなかなかに骨が折れると実感する日々が続いている。
実感しながらも、ハードルを一つ一つ越えていくことに、とてもやり甲斐を感じている。
道無きところに、道を拓く事でしか経営者としての経験値や感覚は養えない。
次のステップとして田舎に本屋を植えていく為にも、知らなければいけないことをオンパレードで勉強させて貰っていると思えば前向きにもなれた。

企業書店員時代に当たり前と思っていたことは、つまりは会社や出版社や取次の各部署が担っていたことが沢山あったということだ。
自分が作る本屋は、地方の小さな本屋とはいえ、環境は企業書店並みに近づけたいと思っている。
例えばこんなことを進めていた。

①図書カードを扱えること
図書カードを扱える書店にする為に、取次を通じ日本図書普及株式会社に申し込みをする。契約には、加盟預り金や保証人などが必要となる。契約の際に収入印紙も必要となった。
※要ネット環境

②検定受付が出来ること
書店では、英語検定や漢字検定を始めとする様々な検定の受付をしている。
これも基本的に取次を通じて申し込みをするのだが、一部検定では、主宰する協会に取次の推薦状が必要であることには驚いた。

③クレジット(キャッシュレス)決済が出来ること
小さな本屋であるが、お客さんの利便性を考えると矢張り使えた方が良い。
取次と契約をしている書店であれば、仲介する業者と契約する事も出来る。ただ現在では、国のキャッシュレス推進事業の流れの中で、様々な業者を見比べて選ぶ選択肢が増えた。私の場合は、移動する本屋でも使える業者を選ぶことにした。いずれにしても審査を含めた申込みから1~2ヶ月もかかる事には驚いた。開店に間に合わないかもしれない(苦笑)

④書店システムを使うこと
走る本屋さんだけの活動であれば、番線を使ってfaxや電話、郵送でも十分に対応が出来た。
然し、相当数の在庫を持った固定店での商いともなれば、矢張り取次システムを入れない訳には行かないと思った。
出版関係の様々な情報が得られたり、在庫管理、発注などをリアルタイムで出来るようになる。
私の場合はトーハン帳合なので、TONETSというシステムと契約した。同様に大手取次では、日販がNOCS、楽天BN(旧大阪屋栗田)がFRONTというように書店専用のシステムを用意している。
また、お客様の注文に迅速に応えられるようにトーハンでは、booklinerやe-honなどのシステムがある。正味は高いものの早く商品を仕入れる事が出来る。私の場合はさらに選択肢を増やすべく他システムも導入も進めている。

⑤出版社の受注システムを使うこと
これも取次番線があってのサービスであるが、商品を通常正味で確実に仕入れるために版元システム導入は必要と思われる。メジャーなところでは、例えば講談社ならwebまるこ というシステムがある。KADOKAWAならweb Hot Line、集英社や小学館、白泉社などの複数版元ではS-BOOK、ほか版元共同でBookインタラクティブなどの書店専用のシステムが存在する。その一つ一つに申し込みを進めていた。
一つ断られたシステムが、Bookインタラクティブだった。新規店であるが故に、取次番線を持っていても日本出版インフラセンターの書店マスターに登録がないというのが理由だった。年明けには登録が出来そうである。

⑥文房具を扱うこと
書店に文房具はとても相性が良い商材だと思っている。
ある程度の規模感がある書店であれば、取次でも文具問屋でも即取引をしてくれよう。
ただ今回は色々申し込みをしてみたが、小さいという理由から、ことごとく断られる結果となった。
途方に暮れるも、探しに探して何とか仕入れルートは確保出来た。ただし、営業のラウンドは臨めないので自身で単品管理して行く道を選んだ。

⑦お役所に届けを出すこと
開業ともなれば、納税地の税務署に「開業届」を提出することになる。その際、一緒に白色とか青色といった納税申告の形式も届ける事になる。
それから、念のために消防署に「対象物使用開始届」を出したほうが良い。企業書店員の時代に開発の仕事をしたことがあったので地域によっては指導を受ける事があった。案の定、小さな規模でも防災指定カーテンを使うことや消火器の常備、ガラス面にはキャスター付き什器を使うようアドバイスを受けた。

⑧流通と向き合うこと
流通なくして、商いは成り立たない。
雑誌や新刊を扱う新刊書店となれば、当然のことながら売れ残った雑誌や本の返品を出すことになる。
その際に、運送会社さんと配送料について協議する必要がある。近年、この物流に関しては様々な要因(人手不足など)が重なって、コストは上昇傾向にある。安くお願いしたいと思うところだがなかなか難しい。

などなど・・・
とにかく使い易いお店を作る為にも、水面下での手配りが何より大切である。
開拓と申請と契約、この3本を進めることで2019年は暮れていった。
2020年は、いよいよ開店を迎える年となる。
地方に本屋を植え、そして増やしていくためにも力の限り頑張りたい。
こんな稚拙な文章でも、多くの方が読んで下さいました。感謝の念に堪えません。
どうか、皆さま良いお年をお迎え下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?