田舎で~本屋営業日記①
令和2年2月7日(金)
10坪にも満たない高久書店はオープンの日を迎えた。
チェーンではない新規書店の開業は、静岡では実に4年ぶりとのことで、全国(地方)的にみても昨今珍しい街の書店のオープンとなった。
業界の方や、メディアの方、なにより地元の方々に前評判を頂く一方で、開店を迎えるまで内心は不安でしかなかった。
開店してもお客様が来ないのではないだろうか?
設備やシステムにトラブルが発生するのではないだろうか?
頭の中では、ぐるぐるとキリがない取り越し苦労の思考戦が繰り広げられていた。
たぶん、長い経営を続けていく中でこういった不安や緊張との戦いは常につきまとうものであり、だからこそ上手く行くように失敗しないように先回りして、日々の試行と実践に繋げる力に変わって行くのだと思う。振り返れば、企業書店時代も、常に不安と共に歩む毎日の連続だった。
開店前から、テレビや新聞で取り上げて頂いたお陰もあってオープン直後の3日間は、10人も入れば窮屈な店内は終日賑わいをみせた。
足を運んでくれたお客様読者には最大限の感謝をしたい。
①開店前のテレビ放送
https://www.youtube.com/watch?v=bEu1pe4aSes
②開店日のテレビ放送
https://www.youtube.com/watch?v=Ur7WsxSLyMY
10年足らずのうちに掛川地区では5つの書店が無くなった。
一昨年、掛川駅周辺からはとうとう最後の街の書店が消えた。
それら書店を利用していた多くの読者は他の書店に行くようになったかというと決してそうではない。
高久書店を訪れ定期購読や注文をしてくれるお客様と話しをしているとよく分かる。
近くに書店が無ければ、本や雑誌を買ってまで読むことを諦めてしまう人達が多いのだ。
出版業界のV字回復を願う業界人は多い。けれども数字を求めすぎるがあまり本当の意味で読者の方を向いていないのではなかろうか?既得権益を見直したり、新規参入がし易いように規制緩和したり、やれることはいくらでもあるのではないかと思う。
身近に本屋があるということを、街の本屋が復活したことをこんなにも多くの地元の皆さんが喜んでくれるとは思ってもみなかった。
本当に嬉しかった。
今回、企業書店を飛び出してまで一人本屋を始めたのは、「街の本屋なんて無理だ」とういう諦めへのチャレンジでもある。街の本屋は大丈夫なんだという事を実証してみたい。だから徹底的にイニシャルコストもランニングコストも削れるところは削ったつもりだ。
オープン直後の集客はご祝儀相場だから、恐らく日常はその三分の一程度になるだろう。そして半年間は低迷期が続くであろう。企業書店で培った酸いも甘いも噛み分けた経験がそう物語っている。
街の本屋が末永くご愛顧頂けるよう、買い支えて頂けるよう弛まぬ努力を続けて行きたい。
まだ一歩を踏み出したにすぎない。
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