2018/11/14

入荷した本が傷んでいる。いわゆる汚損破損にこのクソ取次、アホ版元、と罵りの言葉を吐く毎日ですが、残念ながらこれはブーメランだ。ガッツリ刺さっている。頭にも腹にも足の小指にも。

僕ら書店員は日々の返品作業を丁寧に行なっていると胸を張って言えるのか。言えない。汚損破損に減数、そして過剰な送り込みに対する怨念などなどを本にぶつけて返品の段ボールを作っている。というより、それら怨念がすべての書店業務の原動力ともいえる。つらい。

トランスビューで返品の荷開け、検品をしている。びっくりするほど丁寧な梱包の返品もあれば、びっくりするほど雑な梱包、というか梱包ですらない返品もある。
前者は普通の本屋じゃないとこが多い。ミュージアムショップ系とかは本当に綺麗。そのまま店頭に並べていい。店に並んでいるときも大事に扱われていたことがわかる。
後者はもうほんとうに酷い。本の容量に見合わない、しかも壊れかけの段ボールに緩衝材ゼロのスカスカ。帯やカバーどころか本体まで折れ曲がってしまっていたりする。あなた本屋?

余談だけど、返品伝票が雑なのもできればやめてほしい。無伝返品が当たり前だから面倒なのもわかるけど。せめてタイトル(略称でもいい)と冊数くらいは書いてほしい。30冊とかの返品で「書籍 30」としか書いてない伝票が入ってるときは心が無になる。無心。

もう一度言う。面倒なのはわかるがもう少しなんとかしてくれ。というかそもそもそんなに返品を出してしまうような発注をした己をまずは責めてくれ。トランスビューの「(可能な限り)即日/(品切重版中でなければ)満数出荷/1冊から発注可」という仕組みをきちんと理解していれば、過剰な発注はしなくていいことがわかるはず。なんで発売後1ヶ月くらいで二桁冊数の返品が来るんだ。返品を面倒にしてるのはあなただ。既存の取次流通の感覚から抜け出してくれ。

余談が長すぎる。返品が雑な話に戻る。

返品が雑だと回り回って書店に皺寄せがくる、という想像力を持ってほしい。どうせ改装か廃棄なんだからいいじゃん、という意見をお持ちか。改装するのも廃棄するのもお金がかかる。というか改装しないでそのまま新本として次の書店に回せるならそれが理想でしょう。そうやって版元に不必要な負担をかけるから、経費削減のためにスリップ廃止みたいなことにもなるわけだ。

特にトランスビューで扱っている版元はほぼ零細で、初版2000で重版かけるのも慎重に、というようなイメージのところだ。ゆえに1冊1冊がとても大切になり、そういう想いを強く持つことになっている。綺麗な返本がもう少しあれば重版せずに客注出せたのに、みたいなことが起きやすい、というか起きてるはずだし、でもそんなクソみたいなことはしたくないから重版かけて客注に対応するような気概を持ってやってるところばかりだ。どうしても重版できないってなるときもあるだろうけど、そういうときは苦虫を噛み潰し苦汁をなめる、いや飲み干したくらいじゃすまないほどの鈍くて昏い感情を覚えるはずだ。とにかく、1冊の本を刊行するのも、それを売り切るのか重版かけるのかの判断も、クソほど重い。それがそのまま自分や家族の生活に100%影響を及ぼすから、アホみたいに悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで身を切って読者のためをとる。そうやって必死に生きている版元の本をテキトーに返していたらどうなるか。すぐ死ぬぞ。そんな版元。そんで良書、あるいは魂のこもった本がまた消える。生まれてこなくなる。代わりに、とにかく出せ、数を出せ、出せば金が入る、返品されたらそれ以上の本を入れればいいんだ、さあさあとにかく出せ、質なんてどうでもいい、はやく出してしまえ、そんな粗製乱造版元の本ばかりを扱うことになる。いままでどおりに。あるいはそれ以上に。そういう想像力はないのか。

取次や版元ばかりに文句を言うだけでは足りない。いち版元人であり、いち流通人であり、いち本屋人として。改めて問いたい。あなたに、そして自分に。

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