スリップのこと

とりあえず「今」考えていることをざっと。まったくまとまってない。で、POS対スリップという考え方はしないようにする。しちゃうときもあるけど。


lighthouseでのスリップ→現状なくてもいい。というか、自作で間に合う分量&売り上げ。店舗開業後も、まあなんとかなる。スリップレス歓迎!!ではもちろんないけど、そもそもPOSだなんだとかいうことを想定していない。すべて「自分の手の届く範囲」でやるものとして考えている。久禮さんのいう「身体感覚」に近いかも、そういう意味では。

志津でのスリップ→絶賛活用中。担当棚の文庫で特に。志津の売上規模だとちょうどいい。店内整理や棚づくり、レジ業務の合間にさっとスリップを確認して、その場でnocs検索、発注 or notの判断、同著者の他作品の掘り起こし、など。という流れが、1日のうちに何回も行える。よって、その日の売上スリップはその日のうちに処理ができる。僕は極力返品を減らすために、トランスビュー方式にヒントを得た発注方法を模索している。要はこの「その日のうちに」を繰り返すことで、極論をいえば1冊ずつの発注でも在庫切れを生じさせないようにしたいのだ。在庫切れを恐れて始めにどーんと10冊いれて5冊売れ、5冊返品。というのよりも、始め2冊入荷、1売れたから1追加、また。みたいな流れで5冊売れて、6冊目の入荷を棚挿しにする。みたいな。そういうイメージのやり方がうまくいくのかどうか、しかも現状の取次システムの中で。という実験をしている。少なくとも志津規模の売り上げ(人の出入り規模)だとなんとかなっている。ただ、これだと売り上げ冊数3桁見たいな大ヒットは生み出せない。多面展開をしていないから。そこは課題。でも将来的に軸足をlighthouseに移すわけで、おそらくlighthouseではそういう売り方をしない可能性が高いので、無理に追求する必要はないかもしれない。知らんけど。


スリップの活用法、特に教育効果について。

大いにある。ただ、これは「今まではスリップに代わるものがなかったから」、裏を返せば「POSがクソだったから」スリップに頼るしかなかった、ってだけのことなのかもしれないので、慎重に。とはいえ少なくとも「今」の段階で、本の知識を得るとか、つながりを考えるとか、そういう類のものを教える(というか自ら学んでもらう)にはスリップ「的なもの」の方が有用に思える。機械とかデータの使い勝手があまりにも悪すぎるから、以外にも何か理由はありそう。うまく説明はできないけど。

大矢さんの言っていた、「棚担当レベルではスリップは有用だけど、マネージメントレベルになるとPOSが必要」というもの。なるほどなー、ととても思った。

で、その上で思うこと。反論ではない。僕は今から棚担当についての話をする。

本屋がつまらなくなった、と言われる理由の一端は「店員が本のことについて頭を使わなくなった(楽をするようになった)」からではないかと、業界歴数年の僕が言ってみる。取次のランク配本的なものに任せて、入荷したものをとりあえず分類・ジャンル別に並べる。ハンディでピッとしてピッとなったものをとりあえず返品する。そういう仕事の仕方をする人(せざるを得ない人)が増えたのではないか。例えば大型店や繁盛店。学生時代のバイト先の書店はまさにこれだった。忙しすぎて本を見れていない。もはや本は「流れていく」ものだった。気づくと店に「流し込まれて」いて、それを棚に「流し込み」、その中でお客さんへと流れるもの、取次ヘと流し戻されるものに分かれる。あるいは滞留するもの。そういう環境にいる人は、マネージメント能力や「捌く」能力はつくかもしれないが、「本のこと」についてはなかなか学べない。

何もしなくても、要は「流していただけ」で本が大量に売れてしまっていた時代のおかげで、本を大量かつスピーディーに「流す」仕組みあるいはそれに適した店舗形態が発展・普及した。そこで育ったのは前述のような「流し」の達人であり(なんか違う。笑)、「本を見る」力を持った書店員ではなかった。のではないか。

それが、本が売れない時代になり、「本を見る」力を持たない世代がエライヒトになり、あるいは現場の育成担当になり、どうすればいいかわからない。(スリップに限らず)本の一点一点を見る(知る)力はないし、かといってPOSもポンコツ。

とにかく、本を見る力をもう一度取り戻さないといけない。で、そのための方法として、「現状」もっとも有用(あるいはマシ、あえて皮肉っぽくいうけど)なのはスリップということになる。少なくとも、スリップ以外の「技法」を世に出している(問うている)人はいない。僕の観測範囲では、かもしれないが。だから久禮さんも言っているけど、自分はスリップ以外でこんなことしてる、っていうのがある人はどんどん教えて欲しい。これは優劣でも勝ち負けでもない。知識も方法論も道順も、選択肢として多くあった方がいい。いろんなものを組み合わせて、いいとこ取りして、やっていくのが一番でしょう。


最後に。別問題だろ、という声も起きるだろうけど。やっぱり同根だと思うので一言。

スリップを「いきなり」廃止すること、そしてこれからも「スリップに代わるもの」がないままで廃止していくこと。それはやはり「切り捨て」あるいは「見捨てる」ことだ。POSがないとこ、あっても大して売り上げてないとこを。

で、これは最近の日本社会の問題点と同じなんじゃないの。弱者切り捨て。生産性。そういうワードで語られるものの類。

実際にはそこにいて、売り上げもあるのに、「POSがないから」存在しないことにされている本屋がある。そこに「その本」を求めるお客さんがいるのに、「大した売り上げにはならないから」配本してもらえない本屋がある。本屋だけが弱者だというつもりはない。版元も取次も弱者はいる。経営は厳しいのはわかっている。でも、だからこそ、ちゃんと考えていこうよ。短絡的に「楽して」解決しようとしても結局うまくいかなくなるの、学んでないのかな。


とりあえずここまで。1時間で書いたから洗練も何もない。改めてちゃんと書きたい。でもそんな時間がないから、政府に「俺サマータイム」を提言してくる。1日を36時間に。睡眠時間を12時間に。


電車の中で追記。

僕の考える最強のコンビ()は、「爆発的な売り上げをとれるひと」と「コツコツと地道な売り上げをとれるひと」の組み合わせなんですけど。たぶんこれは、「店の経営を保つひと」と「お客さんの満足度を保つひと」と言い換えることも可能なんじゃないかと。大雑把な話ですけどね。

「いいお店とはなにか」の価値観の違いというか、理想とする本屋が業界側の人間もお客さんもみんなそれぞれあるわけで。この話をすると結論が出なくなるんだけど。

スリップを活用してそこから読者の意図や欲望を読み取る。っていうのは、明らかに「読者の満足度を保つひと」の役割ですよね。もちろん満足度にもいろいろ種類はあるから一概には言えないけど。意識無意識かかわらず、「この本を読みたい」と思うとき、その前段階(日常での出来事や関心ごと、そして以前に読んだ本)の影響があるわけで、それを読み取って棚を作っているひとがいるお店にいけば、「面白そう」と思う本がある確率は高まる、つまり満足する可能性が高まる。という。万人にとっての「いいお店」かどうかは知りませんけど、少なくともその人にとってはいいお店じゃないですか。で、その回数と人数を増やしていけばいい。これが極まれば、爆発的な売り上げがなくてもなんとかなるかもしれない。あったほうがいいけど。そりゃね。

これをいまのPOS(またはスリップ以外のなにか)でできるのか。やってるひとはいる(方法はある)のか。そこを知りたい。ないなら考える。し、ない上に考えてもいないのにスリップ廃止は困る。

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