雨粒の思いを繋いでいくということ
#猫を棄てる感想文
父親についての物語を、春樹さんは小説ではなく、ノンフィクションの体裁で書いた。この物語の主軸である戦争が人の心身や行動に与える影響について語ることだけが目的であれば、むしろ小説という形式のほうが春樹さんには得意なはずだ。『ねじまき鳥クロニクル』の間宮中尉の長い話のように。
しかし、春樹さんは、本名と実在の場所と正確な日付をもったノンフィクションを選んだ。その真実性と具体性に触発されて、(これこそが春樹さんの意図かもしれないが)読者は自分(や自分の身内