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核家族化というアヤシイ話

※当クリエイターページにおける引用は全て、著作権法第32条第1項に定められた「報道、批評、研究」のためのものです。

よく言われる「核家族化」について、これがアヤシイ議論であることを覚書程度に記しておく。


そもそも「核家族化」とは

よく言われるのが、昔は拡大家族世帯が主流であったけど、最近は都市化が進むことで核家族世帯が増えた、ということ。
これに付随して、核家族は子どもを親だけが育てるため、祖父母のアドバイスが入ってこず、良くない、とか言われたりする。

あとは、核家族化で人と人のつながりが薄くなったことが問題ということも言われる。

その核家族の定義だが、夫婦と子・夫婦のみ・父親と子・母親と子、これらの家族構成を指す。
一人暮らしだと単独世帯に分類され、これは核家族には含まれない。


本当に核家族化しているのか

結論から言うと、核家族の割合は増えた。
といっても、それはある時代の限定的な現象であり、その理由まで含めて理解すべきだ。
核家族の割合が増えた主な理由は「金の卵」だ。


「金の卵」世代に核家族の割合が増えたのは事実

まず、田舎の衛生面が良くなって多産少死が実現し、農村部で子どもがどっと増えた戦前戦中世代を押さえておこう。

かつて農村部では沢山の子どもを生んでも、成人するまでには多くが死んでしまっていた。

生き残った子どもが成長して、そのまま家に残り、結婚して子どもを生めば拡大家族になるのではないか、という疑問もあるだろう。
もちろん、そういうケースもあった。
とはいえ、普通に考えて、農家のさほど大きくない家でずっと残れる子どもは多くない。

家に残るのは長男というケースが多かっただろう。
次男・三男は結婚すれば、(妻の家に入ることもあっただろうが)実家の近くで独立して住むケースが多かったと考えられる。
また、長男が家に残って拡大家族を形成したとしても、当時の寿命だと祖父母は孫が小さい時分に死ぬことが多かったようだ(参考文献のウェブ記事①も参照されたし)。

こんな感じで、いくらか拡大家族はありつつも、長男以外は独立して核家族を形成することも珍しくないのが日本の農村であったと考えられる。

しかし、戦前戦中の衛生面の改善で子どもが死ななくなると、農村では多くの余剰人口を抱えることになった。
1960年代、この子どもたちが大人になったとき、農村で抱えきれない人口の捌け口は労働需要が増えた都市部であった(参考文献のウェブ記事②も参照されたし)。

家を継ぐ長男以外は中学卒業や高校卒業で田舎を離れ、都市部に流入していった。
この人たちが「金の卵」と呼ばれる。
「金の卵」が結婚して、郊外等で核家族を形成したことで、日本の家族構成の変化が起きた
実際に1955年に18歳未満の子どもがいる家庭の約6割弱が核家族だったのに対して、1975年には約7割にまで増加しているという。

しかし、そもそも1955年時点でも、18歳未満の子どもがいる家庭の過半数(6割弱)が核家族であった。
そこから核家族の割合が増えたといっても、たった10%程度増加したにすぎず、イメージされているよりも限定的な現象と言わざるを得ない。
この限定的な現象を、核家族”化”とまで言えるのだろうか。

さらに言うと、1975年以降は18歳未満の子どもがいる家庭のうち核家族の割合は70%前後で安定している(参考文献の広井2010:11頁も参照されたし)。
ちなみに、若者が大都市に出たがることも関係してか、都市化による単独世帯の増加はずっと続いている。


他の要因

あとは、これは詳しくよく分からんからメモ書きだが、核家族の増加と関係があると言えそうな事象を二つ。

・国民の長寿化で、子育てが終わった夫婦が長生きするようになり、全世帯の内の「夫婦のみ世帯」という意味の核家族の割合が増えた。
→これは、よく言われる「昔は拡大家族だったのに、今は核家族ばっかで…」とはあまり関係がない。
昔も子育てが終わった夫婦は「夫婦のみ」世帯として核家族になっていたが、その後すぐに死ぬから核家族の数としてカウントされる期間が短かったのだ。

・昔、厚生省が単独世帯を核家族にカテゴライズしていた、らしい。
→資料が見つかってないから何とも言えない…


核家族化というよりも

結論として、核家族"化"とあえて言うことが可能そうな事象は、戦後の「金の卵」世代が都市部に出てきたことくらいだろう。
しかし、これを変に家族形態の観点から「核家族が増えた~」と言うよりも、都市化が進んだと端的に言った方が自然な気もする。

また、核家族と子どもの教育についても、近年は独立しても実家から1時間圏内に近居している世帯も多いそうなので、意外に今でも祖父母は孫の教育にコミットしているとも言われる。

ただ、田舎が衰退しているのは事実であり、都市の希薄な人付き合いが一般化したことは、たぶん事実だろう。
でもそれは、核家族化とは関係ないし、これも普通に都市化と言えば済む話な気がする。
加えて、田舎の濃密な人付き合いが共助であったのは事実かもしれないが、反面それは閉鎖的な「ムラ社会」であり、悪い面も多分にあったわけだ。

むしろ都市化により増加し続けている単独世帯をもっと問題にすべきで、謎に家族形態の話に持ち込むべきでないように思う。
あと、都市化にも関係あることだろうが、晩婚化が進んでいることも単独世帯の増加に繋がっているようだ。

以上のことから、「核家族化」はちょっとアヤシイ議論であると思う。
それよりも、日本で進行していることは都市化や高齢化(長寿化)、あるいは、都市化に伴う単独世帯化と晩婚化、みたいな言葉で表現する方が適切なように思う、知らんけど。


参考文献

・広井多鶴子(2010)「核家族化と親子関係」(広井多鶴子・小玉亮子『現代の親子問題──なぜ親と子が「問題」なのか』日本図書センター)
・ウェブ記事①「核家族化が進んでいる」は本当か? データから徹底検証(広井 多鶴子) | 現代ビジネス | 講談社(1/4) (gendai.media)
・ウェブ記事②人口移動と家族から社会の変化を読み解く-丸山洋平 – 研究 – 札幌市立大学 SAPPORO CITY UNIVERSITY (scu.ac.jp)


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