問答014

○:先生は、新聞の連載小説を読んでますか?
●:いや読んでいない。と言うより読めないと言った方がいいかな。
○:どうしてですか?
●:だいたい、毎日欠かさず読むなんてことできるはずがない。
○:じゃあ、1週間分をまとめておいて読んだらどうですか?
●:そんなの無理に決まっている! 新聞なんて1日過ぎたら、再生紙行きだよ。前の日の分がどこにあるかも分からん。
○:僕は番組欄と4コマ漫画は毎日見てますけどね。
●:とにかく、どんなに面白い物語であっても、あんなちょっとずつの量では、物語の世界に入り込めない。
○:そうですね。
●:まるでチビチビお酒を飲んでいるようなもので、ちっとも酔えないんだよ! 酒は酔うまでグビグビ飲むに限る。読書だって、物語に十分ひたれるぐらいの量ってものがあるってもんだ。新聞小説はあまりにケチくさい!
○:そんなに興奮しないでくださいよ!
●:それにだな、新聞小説が読めないもう一つの理由があるのだ! 聞きたいか?
○:ええ、はい。
●:それはだな、小説を焦って書いている作家の姿がちらつくからなんだよ。
○:どういうことですか?
●:新聞小説の締め切りに追われ苦しみながら小説を書いている作家の姿が目に浮かんでくるんだよ。
◯ : いいじゃないですか、それが作家の仕事ですから。
● : いや、そうじゃない!作家が締め切りに追われて書いた小説には、なんだかその場しのぎ的な感じがするのだよ!
○ : 、、、、
● : 私の中では、作家というものは、長い期間山の別荘にこもって、納得がいくまで寝食も忘れて小説を書きあげるというイメージが勝手にできあがっているのだよ。そうしてできあがった小説こそが、読むに値する本なのだ!
○:その場しのぎって言うのは言い過ぎじゃないですか?作家の人だって一生懸命に書いていると思いますよ。
●:じゃあ、新聞小説が後に単行本化される時、大幅な加筆訂正が行われることがあるのはどうしてだ? やはり作家は連載時の新聞小説に納得がいっていないのではないか?
どうだ?君もそう思わないか?
○:作家が加筆訂正するのには、もっと別の理由があるんじゃないですか?
●:どんな理由だ?
○:いや、わかりません! もういいですよ! 今日は先生に面白い新聞小説があるから、持ってきたんですけど帰ります! では。
●:おい! 待ってくれー!  

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