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【読書会】宮本輝『流転の海』全巻読書会⑧~第2部『地の星』を読む②

こんにちは。

『流転の海』シリーズ全巻読破を目標としたオンライン読書会の8回目は、第2部『地の星』から第2章を読むこととしています。以下は、第1章について書いたレジュメnoteのURLです。適宜ご参照ください。


※末尾に録音の保管先URLと、9月5日の読書会実施後のメモを追記してあります。ご参照ください。

概要

①昭和26年、木炭バスが廃止されて城辺町にもディーゼルバスが通うようになり、活況を呈するようになる。
②町の発明家であった「鍛冶屋の音吉」の生還が伝えられる。
③正式な夫婦となるだろう政夫とタネについて、房江が熊吾に相談する。
④熊吾は二人の子・明彦に話を持ちかける。
⑤魚茂(和田茂十)の県議立候補について。
⑥美津子から益男の死が知らされる。

私的「ポイント」

①不思議な男が敗戦直後の日本にやって来たものだなとあらためて思った(略)しかし、間違いなくひとつの時代が終わった(略)次にいかなる時代が始まるのか、まったく見当がつかなくなってきた(p.51)

②わしは、何回死んだかわからん、熊のおじさん、わしは、ほんまに何回死んだかわからんのじゃ(p.57)

③年齢にはそぐわない思慮深さを、ただ単に気弱なせいだけとは思わなかった(p.61)

④真偽の定かならぬ噂よりも、熊吾は茂十の生きてきた現実のほうを評価していたのだった。そして、茂十の生いたちを考えるとき、熊吾は彼の並々ならぬ上昇志向の根が、どれほどの屈辱や忍耐や悲哀やらを吸い上げたうえでのことかと思うのであった(p.69)

⑤もし自分が人並に若いころ子宝に恵まれ、それが男子であったら、その子もまた戦争に駆り出されて死んだことだろう。無念さと悔しさをこらえ、国家の権力を憎みつつ、ただ黙している日本中の父親のひとりとなっていたことだろう(p.72)

⑥「日本は、いつ、どこで、間違いましたかなァし」「明治という国家が生まれたときやとわしは思うちょる」(p.72)

⑦「どこかの蔵の中に押し込められちょった天照大神までが踊りだしよった(略)日本は、いまだに文明開化なんかしちょらんのじゃ(略)ほんまの意味での文明開化なんかせん国じゃ」(p.73)

⑧熊吾は、自分の血が騒ぎだすのを感じた(p.77)

⑨「一粒の星でも姿をあらわしたら、何かが必ず見えるんじゃ(略)こっちの目次第で闇を晴らしよる」(p.95)

⑩「幸不幸の帳尻は、その人間が死ぬときに決まるもんじゃ。いまの不幸が、将来、どんな幸福へ変わるか、誰にもわかりゃせんけん」(p.95)

⑪「ほんまの闇っちゅうもんを知っとる人間には、たったひとつの星のすごさがわかる(略)雲が切れたら、どれだけぎょうさんの星が美津子の頭上にあるやしれん・・・。雲さえ流れて切れたらええんじゃ。そんなものは、必ずいつか切れてしまいよる」(p.96-97)

⑫「人は道によって尊しっちゅうが、わしはどんな道を生きちょるんじゃろうのお」(p.101)

開催後の追記

①Twitterスペースの録音保存先

こちら。Twitterで開いてください。

②読書会実施後のメモ

・熊吾の房江への気遣い(についての記述)が、相変わらず希薄なところが気にかかる。熊吾は茂十の県議出馬にあたっての参謀となることで「血が騒ぐ」と言っているようだが、姉妹のように育ち、その幸福を祈って北海道へと見送った美津子の二番目の夫までもが亡くなってしまったことを嘆いている。その変化を、熊吾には見えていない。

・四国南宇和の辺鄙さについて。

・明彦が進学する松山高校(現・松山東高校)は、『坊っちゃん』の主人公の赴任先。

・朝鮮戦争とマッカーサー更迭について。

・現代史についての推薦図書や著者:
 ・池上彰『そうだったのか!現代史』
 ・前田勇樹ほか『つながる沖縄近現代史』
 ・筒井清忠
 ・成田龍一
 ・家永三郎
 ・藤原彰
 ・吉田裕
 ・加藤陽子 など

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今回のレジュメと追記は、以上となります。お読みくださり、ありがとうございました。それではまた!


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