見出し画像

【レジュメ】宮本輝『流転の海』全巻読書会・第5部『花の回廊』第1章

こんにちは。

全9部構成の『流転の海』(宮本輝)の読書会は、今回(23/09/04実施)から第5部『花の回廊』に移ります。1回1章、月に2回程度のペースで進めて行く予定です。第5部は全7章なので、12月までかかりそうですね。この様子だと、年明けに第6部突入ということになりそうです。どうぞよろしくお願いいたします。

主な登場人物

松坂熊吾・房江・伸仁 この大部の物語の中心を成す一家。熊吾は、昭和22年、齢50にして初めての実子・伸仁を房江との間に授かった。戦前、関西では名の通った実業家であった熊吾だが、中国大陸に出征している間に、事業はほぼ壊滅していた。房江と出会い、伸仁を授かったことと、事業の再建に奔走する姿が綴られていく。

村井鶴松 房江の義兄で、不幸な結婚に囚われていた房江の身元を引き受けていたことがある。

松坂タネ・千佐子 タネの熊吾の実妹。南宇和の実家を売り払って、母のヒサと娘の千佐子を連れて大阪に出てきてしまう。タネにはもう一人、明彦という息子がある。

杉野信哉 熊吾とプロパンガスの事業を営んでいたが経営に失敗。タネの長男・明彦を住まわせていたが、脳溢血で倒れてしまう。

松坂明彦 大阪で杉野家から通学していたが、杉野が倒れ、タネたちと暮らすことになる。大学進学を断念して就職した傍らで、バンドでトランペットを吹いている。

寺田権次 タネの元に夫婦同然で住み込んでいる。タネらを住まわせる「蘭月ビル」を見つけてくる。

丸尾千代麿 敗戦直後の大阪で熊吾と出会った運送会社の社長。腫瘍を克服している。妻のミヨとの間に子はなかったが、愛人の米村喜代との間に娘が生まれる。

津久田咲子・香根 蘭月ビルに住む一家の美貌の中学生と、その盲目の妹。

磯辺富雄(稲葉修次) ビリヤード場「ラッキー」、麻雀荘「満貫」を営む。本名は李尚基。松坂ビル跡地で珈琲店を勝手に開いていたことが縁で、熊吾と知り合った。

海老原太一 松坂商会で働いていたことがあるが、後年熊吾に面罵されたことを恨み続けているが、熊吾に頭を下げられ、事業資金を工面している。

坂田康代 「ラッキー」の店員。工場での作業には慣れず終いだったが、「ラッキー」では気働きがしている。

上野栄吉 「ラッキー」専属のビリヤード・コーチ。シベリア抑留から生還している。

谷山麻衣子 城崎で、千代麿の娘・美恵を預かっている。

丸尾ミヨ 千代麿と愛人との間に娘があることに気づき、娘を引き取ろうかと熊吾に相談を持ちかけている。

浦辺ヨネ わうどうの伊佐夫の子を産んだ女性。タネとは旧知の仲で、美恵を養女として迎え入れている。

井草正之助 戦前戦中、さらに再興された松坂商会での「番頭」的存在だったが、熊語を裏切り資金を着服して出奔する。

久保敏松 良心的な中古車ブローカーとして、熊吾の事業に参画するも、資金を横領、逮捕される。

谷山節子 熊吾の旧知の中国人・周栄文の日本妻で、麻衣子の母。井草と親しい関係になっていた。

柳田元雄 熊吾に世話になっていたが、後に財を成す。熊吾が新事業を提案している相手。

あらすじ

  1. 昭和32年3月、松坂家の人びとは大阪に戻ってきた。昭和28年に勝手に上阪してきたタネの居る「蘭月ビル」に伸仁を預けることになるようだ。

  2. 熊吾は、中古車ブローカーとしての事務所代わりに、「ラッキー」を使っていた。

  3. 熊吾に丸尾ミヨから連絡が入る。城崎に住んでいる千代麿の娘を、正式に迎え入れたいという。

ポイント

  1. 自分の意志で来た連中もおるじゃろうが、たいていは無理矢理つれてこられたんじゃ。日本の野蛮な職業軍人どもに(p.15)

  2. 子供はお天道さまのあたるとこや風の吹くところで遊んだほうがええ(p.18)

  3. まあ要するに、わしという人間は大事なところで横着になるんじゃ(p.26)

  4. 首でも吊るしかないほどにお先真っ暗じゃが、それがどうも不思議なことに、わしにはお先真っ暗な気がせんのじゃ。わしっちゅう人間は、どうにもならんくらい能天気にできちょるらしい(p.29)

  5. もし戦争犯罪人ちゅうものがおるとしたら、戦勝国側であろうとも敗戦国側であろうとも、戦争をやろうと決めて、それを実行に移した連中すべてが戦争犯罪人ということになる(p.36)

  6. 熊吾は行きかけて、忙しく動き廻っている康代の脚を何気なく見た。穿いているナイロンストッキングに大きな穴があいていた。それは貧乏と不幸への入口のように見えた。その瞬間、熊吾は、伸仁をあの蘭月ビルという奇妙なアパートで暮らさせるのはやめようと思った(p.38)

  7. その場しのぎの先送りっちゅうやつが、あとになってどうにもならん厄介事になるっちゅうことくらい山ほど経験してきちょるのにのお(p.44)

  8. 一見、芯があるのかないのかわからない、どこといって特徴のない、善人ではあっても無個性過ぎるという印象だった丸尾ミヨが、じつは芯が強く思慮深く辛抱強くて賢い女だったのだと知り、熊吾は自分の人間を見る目の浅薄さをあらためて思い知らされている気がした(p.47)

  9. 俺という人間はどこかの栓が抜けている・・・(p.50)

  10. 教育じゃ。教育がすべてじゃ(p.62)

  11. 教育とは何かっちゅうことがわかっちょらんやつが教師になると国が滅びる(p.62)

  12. そんな程度の校則を守れんやつが、世の中の厳しいルールを守れるおとなに育つか?(略)規則を守るっちゅう勉強のためにあえて作った校則じゃからそれを守れ(p.63)

  13. わしの言うところの教育とは、数学や外国語や国語や歴史や物理を学ぶことによって、どういうわけか自然に人間としてどう生きるのか、人間の振る舞いとは何かっちゅうことも学んでいくっちゅう意味を含んじょる(p.65)

  14. それはそいつがもともとそういう資質を持った人間である、高い教育を受けたことにうぬぼれっしもうて、いつのまにかええ気になってしまうからじゃ(p.66)

  15. 人間、大きな夢を実現するには、一生だけでは足りんなと思った(p.71)

追記

※9月5日(火)以降、追記がされる場合があります。


今回の「レジュメ」の記述は以上となります。最後までお読みくださり、ありがとうございました。それでは!





最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。ときどき課金設定をしていることがあります。ご検討ください。もし気に入っていただけたら、コメントやサポートをしていただけると喜びます。今後ともよろしくお願い申し上げます。