【読書会】宮本輝『流転の海』を読む⑤~第8章・9章
こんにちは。
宮本輝『流転の海』読書会も、あと2回で第一部が完結する予定です。8月1日(月)に第8章・9章を、8日(月)に第10章・11章・解説を読んで完結となる予定です。その後、すぐに第二部『地の星』へと進むつもりでおります。なお、この2回についてはTwitterスペースでの開催となります。場合によっては、それ以降についてもスペースでの開催を継続する場合があります。決定次第アナウンスいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
第8章概要
①房江の回想。町川ケイは房江と熊吾の仲について反対していた。
②姪の美津子から、「結婚を申し込まれている」との話を聞く。
③熊吾が加わり、辻堂と美津子とを結ばせたいと願っていることを語り合う。
④山下志乃(房江の前夫・則夫の妻)が、房江の実子を連れて来訪。養育費を要求する。
⑤辻堂を連れて熊吾が帰宅する。
第9章概要
①旭川の白川益男の元へと、美津子を見送る。
②北沢茂吉の遺した財を届ける相手について、辻堂と熊吾が語り合う。
③熊吾が、その岩井母子を訪ねる。
④熊吾が帰宅。伸仁が重篤になっていた。必死の看病。筒井医師が駆けつける。
第8章から
・やめとき、あんた、苦労するでェ/あの男は外面が良すぎる。結婚したら、内面の悪さに泣かされるでェ/大きい小さいが男の値打ちやあらへんで。大きい男っちゅうのは、気味悪いくらいに小さいもんも持ってるんや。(313-14)
・それは、生涯にわたって房江の心身をさいなむありとあらゆる魔の舌の、最初のひと舐めであった(319)。
・それが戦争というもんやないか。責めるなら、戦争なんて気狂いざたをおこしてしまう人間ちゅうもんをせめりゃええんじゃ。自分を責めて何になる。馬鹿めが!(325)。
・芝居がかった声を耳にして、房江は、またなんと釣合いのとれた後妻を山下則夫はめとったものかと思った(329)。
・はした金て言いはりましたけど、この世の中に、はした金なんてないと思います(331-32)。
・私は冷たい人間なのだ。決して我が子を思い出すようなことはすまい。私は忘れてみせる。私には出来るはずだ。私は冷たい人間なのだから(333)。
・星廻り。そう、確かに人間には、不思議な星廻りが、それぞれつきまとっている。突然、恐怖が房江を身震いさせた(340)。
・これから先、どんなふうになっても、お前は晩年は、ちゃんとしあわせになりそうな気がする(344)。
第9章から
・「昨日の夕刻に起こった福井県の大地震」(345)→ 昭和23年6月28日午後4時13分(当時サマータイムで午後5時13分)、福井平野を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。死者3769名。
・お前は何でも自分のせいにする。他人のせいにするよりは立派じゃが、それもほどほどにしとけ。生きていけんぞ(353)。
・熊吾は日本人でありながら、日本人が嫌いだった(略)姑息で貧弱で残虐だ。そして思想というものを持っていない。武士道だとか軍国主義などは思想ではない。哲学でもない。けれども、そうした低劣なものでさえ、人間の心を統率し、整然とした行進を作りだす。人間を戦争に向かわしめる根源の欲望とはいったい何であろう。民衆はなぜ無力なのであろう。なぜ戦争遂行者の言いなりにならざるを得ず、しかも銃を握った瞬間、平凡な心優しい男たちが残忍な殺人者と化すのであろう(356-57)。
・あんたはいっつも怒鳴るだけです。怒鳴って怒鳴って、人の気持なんかそのときは爪の先ほども考えへん(369)。
・しかし、他人の子の便を舐めて腸の状態を診断した筒井医師の、いかなる言葉をもってしても表現しょうのない誠意に対して、熊吾は日ごろの饒舌を喪ってしまっていた(375)。
・嫌いです。日本の敗戦がほぼ決まったというときに、ソ連が何をやったか。突然寝首をかくみたいに日本を攻めてきた。目的のためなら、裏切りなど平気でやる。おそらくそれが、共産主義の持っちょる見えざる悪魔性です。自分たちはいつも正しい。悪までが正しい。裏切りも、必然の裏切りであり、戦争も、自分たちが引き起こす場合だけ正義の戦争だとくる。そんな思想を根本とした指導者が、民衆をしあわせにするとは思えませんなァ(376)。
・主義は主義として持っとくだけにしておくことですな(377)。
・ふいに熊吾の心に、何もかも捨ててもいい、一本松村に四、五年引きこもって暮らそうかという思いがよぎった。野山で思い切り遊ばせたら、伸仁は丈夫な体になるに違いない。そんな気がしたのだった(378)。
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今回は以上といたします。最後までお読みくださり、ありがとうございました。それではまた!
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