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【読書会】宮本輝『流転の海』全巻読書会~第3部『血脈の火』第6章

こんにちは。

開催当日の公開となってしまいましたが、読書会レジュメとして作成いたしました。ご参照くださいませ。

主な登場人物

松坂熊吾 本シリーズの主人公。房江の夫、伸仁の父。50歳にして伸仁をもうける。出征して中国から生還、一時故郷の南宇和に戻るが、再び事業のために大阪に打って出る。杉野信哉と新事業を立ち上げるも、糖尿病と診断される。

杉野信哉 警察を退職後、熊吾とプロパンガスのボンベを設置する事業を興す。警察官だった頃の官僚的な態度が、業務に向いていないと熊吾は悩んでいる。

小谷光太郎 杉野を介して知り合った開業医。点数制である保健医療を批判しているために開業。保険制度に組み入れられない「良心的な」治療をするため、高額な治療となってしまう。熊吾や伸仁の病気を診断する。

辻堂忠 熊吾が生還した直後の大阪で、事業を支えていた人物。妻子を長崎の原爆で失ったことを、罪として背負っている。銀行の副頭取夫人となった岩井亜矢子との関係が続いている。

岩井(塩見)亜矢子 第1巻『流転の海』で登場。熊吾と共に訪れた辻堂と関係を持つようになる。その時、熊吾から激しく非難されたことを恨んでいる(らしい)。

松坂伸仁 熊吾が50歳の時に生まれた長子。昭和22年生まれ。この章の時点で小学1年生と思われる。聡明ながら、落ち着きがなく、教師に批判されている。小谷医師に肺結核の前兆を見抜かれる。

丸尾千代麿・ミヨ夫妻 熊吾が信頼を置く夫妻。運送会社を営む。二人の間に子はなかったが、千代麿は米村喜代に子を産ませてしまう。

宝田よし子 辻堂を介し、熊吾の事業資金を用立てる業者。

観音寺のケン 伸仁がなついてしまったヤクザ者。

あらすじ

  1. 糖尿病の診断を受けてから、11月になると熊吾は瘦せていった。杉野を介して知り合った小谷医師を訪れ、入院を迫られる。

  2. 治療の一環として歩いている途中、辻堂と亜矢子を見かけてしまう。事業が亜矢子の口利きによって妨害されているのではないかと疑う。

  3. 小谷医師から、伸仁に肺病の疑いがあると告げられる。そのことを学校に伝えた際、伸仁について批判される。

  4. 事業資金について、辻堂に相談を持ちかける。辻堂が来阪、亜矢子との件を聞く。

  5. 伸仁を見かけ、後を追う。観音寺のケンの知り合いたちと、麻雀を打っていることを知る。

主なポイント

  1. もともと、強い生命力があって、それが余病をおさえてきたんでしょう(p.341)。

  2. 健康保険は、医者に、使う必要のない薬を出させ、切らなくてもいい体にメスをいれさせるんです。保険制度は、じつにすばらしい。しかし制度の中味は、すべて病気は薬や手術でなおるという考え方でかたづけようとする役人仕事です(p.344)。

  3. 私は、病む人をなおすために医学を学び、医者になったんですからな(p.345)。

  4. 私は、患者をおどしたことはありませんよ。私は、長生きをさせるためにはげましているんです(p.357)。

  5. 中国の医術は、まず聞診ぶんしんから始まる(略)その人の生命力のようなものは、声の響きにあらわれますからね(p.358)。

  6. 人間、いい気になったときがおしまいじゃ(p.364)。

  7. 日本が戦争で失ったもののひとつに、無数の優秀な人材があると思った。/春秋に富む多くの若者が戦地で死んだ。そのツケ(本文では傍点。引用者注)は、十年後二十年後の日本という国に返ってくる。/自由や民主主義という名のもとに骨抜きんされた青年たちが、わけのわからない文化に染まって、頭のからっぽな国ができあがる。それこそが、白人たち連合軍の望むところなのであろう。その巧妙な植民地政策は、着々と進行している・・・(p.365-6)。

  8. 民衆をなめやがって(p.366)。

  9. しかし、船は出航した(p.376)。

  10. 辻堂は、日米安全保障条約締結のあと、アメリカは意図的に日本の官僚機構に力を与えだしたと言った(p.381)。

  11. いつまでも日本を哀れな敗戦国の猿にしておくわけにはいかなくなったんです(略)政界にも財界にも突出した人物の出現を許してはならない。いつまでもアメリカにしっぽを振る犬たちの国にしておくためには、役人どもに管理させるのが最良の手だというわけです(p.382)。

  12. 時がたてばたつほど、傷は深うなる。戦争とは、そういうもんかもしれんのお(p.387)。

追記

※3月7日(火)以降に追記された場合、その旨お知らせすることがあります。


今回の「レジュメ」は以上となります。最後までお読みくださり、ありがとうございました。それではまた!


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